千倍王鷹虎蝗合成獣

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『キバ』第09・10話感想

仮面ライダーキバ』の感想です。以下、ネタバレ注意。

[2008年03月23日]第09話「交響・イクサ・フィストオン」
[2008年03月30日]第10話「剣の舞・硝子のメロディ」
(脚本:井上敏樹、監督:石田秀範)

【前回】『キバ』第07・08話感想 - 千倍王鷹虎蝗合成獣
【次回】『キバ』第11・12話感想 - 千倍王鷹虎蝗合成獣

■名護さん「その命、神に返しなさい。」

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イクサナックル「レ・ディ・ー」

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イクサナックル「フィ・ス・ト・オ・ン」

 仮面ライダーイクサお披露目回。即ち、DXイクサベルト販促回。イクサ(IXA)とは“Intercept X Attacker”の略であり、エックス(未確認生命体)に代入されるのはファンガイアである。初代『仮面ライダー』の初期案、クロスファイヤーをイメージコンセプトにしているが、宗教色を押し出すのはNGとのことで、あまり十字(架)は推さないようにデザインされているという。キバット杉田智和の声で饒舌なのに対し、イクサナックルの電子音声は無機質なのが対比になっててええやね。セーブ→バーストモードへ変形できるのは現在篇のみ。あと、イクサカリバーを武装しているのも現在篇だけで、意外とイクサの戦闘シーンでも過去と現在の違いを表現しているのでありました。過去篇だとイクサに活動限界があったりとか。当時はあまり意識していなかったけど…!

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 さて、第09・10話のゲストはスマートブレインの社長、村上峡児。…ではなく、フロッグファンガイアこと大村武男。フロッグのデザインはディ・モールト・ベネ!裏モチーフはグンカンドリ。大村は漆黒のバイオリン、ブラックスターを多数作ったが、持ち主が演奏力の無い人間ばかりだったため、殺害→回収を繰り返していた。素晴らしき青空の会はそれに気付き、次郎と(麻生)ゆりが囮捜査をする中で音也と大村が邂逅。演奏力の有る音也のバイオリンを聞いた大村は改心し、二度と人間を襲わないことを誓う…というのが第09・10話の過去篇のエピソード。現在篇だが、美術評論家である樋口ヒロユキ氏の『ユリイカ』への寄稿(『キバ』評)があるので、それを引用したい。

 主人公は自らもバイオリニストであり、美を通じてファンガイアへの共感を抱くようになる。このことはフロッグファンガイアこと大村武男のエピソードに雄弁に示される。大村はバイオリンの修復技師として人間同様の暮らしを営んでおり、紅渡とはバイオリンの修復を通じて知り合った仲だ。渡は大村がファンガイアだと知るが、大村は二十年以上人を襲っていない。もはや人間同様の暮らしを送る大村を、渡は単純には断罪できず、交友関係を続けていく。
 ところが大村には一つだけ、人間社会で馴染めないものがあった。人間の生み出す騒音だ。バイオリンの修復技師として第一人者となるほど繊細な耳を持った大村は、こうした人間世界の騒音を聞くと、理性を失うほどの不快感を覚えてしまう。やがて大村は建築現場の騒音に耐えかね、我を忘れて作業員を襲う。だが音楽に価値を見いださない名護は、情状をいっさい酌量せず大村を殺害してしまう。狭量な善は悪に同じという世の習いを雄弁に物語るエピソードだ。
樋口ヒロユキユリイカ2012年9月臨時増刊号 総特集=平成仮面ライダー』より)

 …何故、『キバ』第09・10話の感想記事が書き難かったのかと言うと、樋口ヒロユキの評論が素晴らし過ぎて、「これ以上、何を書けば良いんだッ!?」状態になってしまったからだチクショ~ッ!

■『キバ』は(ゴシックの)「王道」!?

 善悪二元論原理主義者代表のような名護=イクサと、自分の行動に自信を持てない怪物的ライダー、渡=キバの葛藤を中心に、この物語は進んでいく。渡キバは名護イクサの自信に満ちた行動に憧れながらも、その冷酷なまでの闘いぶりに違和感を持ち、いかに生きるべきか煩悶する。自分こそ善であると信じて疑わぬ者たちと怪物の対決を描き、悪にも宿る一寸の魂を描くことで、善とは何かを問い直すのがゴシック文学の骨法だ。その意味でイクサとキバの対立は、ゴシックの王道に忠実な構図となっている。
樋口ヒロユキユリイカ2012年9月臨時増刊号 総特集=平成仮面ライダー』より)

 ごめん、敏鬼はそんなこと全く考えてないと思う…!

 井上敏樹のロジックは以下の2つであり、

(1)生真面目な奴はギャグになる。
(2)悲劇は喜劇(ギャグ)になる。

『アギト』の氷川誠(G3)と『555』の草加雅人(カイザ)を足して2で割ったような2号ライダーが、『キバ』の名護啓介(イクサ)のコンセプトだったのだろう。嫌味キャラ(北條透)成分も少し入っているねw序盤は善悪二元論原理主義者代表」を体現する753だが、中盤に「遊び心」を覚え、913と違って「死なない」人になるのだが、それはまた別の話。

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 『キバ』第09・10話は巨匠の演出も良かった~!石田秀範監督作品集が出るとしたら、間違いなく選出されるだろうね!

■オマケ:カットシーンについて

 よく「『キバ』はカットシーンが多いから、それも込み込みで見て評価して!」という人がいるけれど、テレビ番組とは「放送されたもの」が完成品なのであり、カットシーンを見ないと評価できない(全容を把握できない)という時点で、その作品は問題有りなのである。だがしかし、それにつけても『キバ』はカットシーンが多いので、『キバ』感想記事ではその回のカットシーンをピックアップしていこうと思う。

(その1)渡&音也と大村(フロッグファンガイア)

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大村「随分、暖かくなってきましたね。」
渡 「はい。気持ち良い天気ですよね。」
大村「この時期は、気温が不安定です。工房の温度と湿度には、気を付けてください。」
渡 「はい!」
キバット「渡!どういうつもりなんだ!こいつは(フロッグファンガイアなんだぞ)!」
(第10話「剣の舞・硝子のメロディ」未使用映像)

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(音也の家を見張る(麻生)ゆりと次狼。)
ゆり「紅音也…。いったいどこまで邪魔すれば気が済むんだ。とにかくブラックスターを取り戻さないと。」
(音也の家から大村武男(フロッグファンガイア)が出て来る。)
音也「忘れんなよ、約束。」
大村「…ああ。」
ゆり「何!?何がどうなってんのいったい!?」
(第10話「剣の舞・硝子のメロディ」未使用映像)

 怪人の中にも、人間と共存できる者もいる。怪人を全員悪と決めつけ、倒したりはしないという、紅親子が交互に描かれている。それでも、大村武男(フロッグファンガイア)が人間を殺したという事実に変わりはなく、最終的には名護さん(仮面ライダーイクサ)に倒される。井上敏樹脚本は「悪い奴がのさばっている」=「子供向け番組らしくない」と批判されることが多いが、何だかんだで<因果応報>はきちんと描いていると思う。

[了]

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