千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

総括!『仮面ライダーウィザード』

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 『仮面ライダーウィザード』(以下、『ウィザード』)の総括です。

■大前提:『不屈夢走』について

 『ウィザード』のメインライターの一人、きだつよし(もう一人は香村純子)は『不屈夢走』というブログをやっている。で、今回の総括記事は「そこ」を拠り所にしているのだが、個人ブログの内容を何度も引用するのは忍びないので、大半は、「○○」と言っている、という風にとどめることにする。本稿を読んで「嘘だ!きだつよしはそんなことは言っていない!」と思う方は、ご本人のブログを読んで確かめてみてほしい。

きだつよし「おのれ高寺成紀!」

 『仮面ライダー響鬼』(以下、『響鬼』)のメインライターの一人はきだつよし(もう一人は大石真司)だが、実際はチーフP、高寺成紀<清書係>だった、というのはファン界隈では最早「常識」である。きだつよしは『響鬼』に関して、『仮面ライダー電王』の頃には「プロデューサー色が濃くて自分の色を全く出せずに終わってしまった」(2007/07/05)と、『仮面ライダーディケイド』(第18・19話:響鬼編)の頃には「プロデューサーの意向をただただ清書させられ自分のカラーをほとんど出せなかった」(2009/05/24)と、自身のブログに高寺成紀への怨み(恨み)辛みを書き殴っていた。…『ウィザード』の制作発表時ですら、響鬼の時にあまりいい思い出がなかった」(2012/06/28)と言い放っているからな…!他にも、

(1)「現実世界に居るヒーロー」と「現実に押し込められたヒーロー」は意味が違う。
(2)殺伐としたダークな印象=大人向けみたいな考え方には大いに疑問を持っている。

と述べており、要するに、身も蓋もない言い方をすると、きだつよし「平成一期」アンチの脚本家の一人なのである(もう一人は中島かずき)。典型的な「昭和懐古厨」とも言える(笑)。氏のブログの「劇作家と脚本家は似て異なるもの」という記事は面白いので興味のある方はご一読ください。

 で、『ウィザード』のチーフP、宇都宮孝明は脚本家の意向を尊重する(悪く言えば<丸投げ>する)タイプなので、ホンに脚本家の色(カラー)が出やすい。きだつよし「今関わっているウィザードの仕事は楽しくやっているので御安心を。もちろん『共同作業』としての苦労は当然あるけれど、今回のプロデューサーの仕事の進め方は好感が持てるし、ジャッジする方向性もナルホドと思うところがいっぱいあるので。」(2012/09/04)と、宇都宮孝明に(高寺成紀と違って)好印象を抱いていたかつ、「自分にまとわりつく響鬼のイメージは払拭したいと思っているので。」(2012/09/16)と意気込みを語っていたので、私は純粋に、きだつよしの真のカラーは何色なのか?」という点に興味を抱きつつ、『ウィザード』を視聴していたのだ。ところが、

■「史上最低」の『仮面ライダー』(by大友)

昨日、脚本家として参加した
仮面ライダーウィザード」が最終回を迎えました。
応援して下さった皆さん、
本当にありがとうございました m(__)m
 
絵本作家、演出家、脚本家、俳優…
様々な肩書きを持つ自分ですが、
脚本家としての未熟を改めて痛感した現場でもあり、
脚本家としての自分を色々考えるよい機会になりました。
(『きだつよしBlog 不屈夢走』2013 09/30 Mon「仮面ライダーウィザード 終了」より)

 『響鬼』(高寺成紀)の時と全然違う…!

(2007/07/05)「プロデューサー色が濃くて自分の色を全く出せずに終わってしまった」
(2009/05/24)「プロデューサーの意向をただただ清書させられ自分のカラーをほとんど出せなかった」
(2012/09/16)「自分にまとわりつく響鬼のイメージは払拭したいと思っているので。」

 と言っていた時の強気は何処へ行った!?おそらく、宇都宮孝明は本当に<自由>に脚本を書かせてくれた(当然、販促や規制はあっただろうけど、高寺成紀の赤ペンはそういう次元じゃあない)のだろう。にもかかわらず満足のいくホンが書けなかった。チーフPの色の濃さ(意向の強さ)とは別に、きだつよしは自身の未熟さを痛感させられたのだ。

 怒ったのは大友である。高寺成紀(クウガ響鬼)は熱狂的なファンが多い。きだつよしはそんな男を批判していたのだから、『ウィザード』を「ツマラナイ」と感じた大友は「あのビッグマウス野郎!」「『響鬼』は清書してもらったから見られるものになったんじゃあないの?」(=清書しなければ見られたもんじゃあない)ときだつよしを叩いた。

「史上最低」の『仮面ライダー

 それが、放送終了時点(2013/09/29)の『ウィザード』の大半の大友の評価であった。

■何故『ウィザード』は「ツマラナイ」のか?

(1)MWが三条陸でなくきだつよしだから。
(2)MWが小林靖子でなく香村純子だから。
※MW=メインライター

 の二言で片付けられることが多いけど、それだとあまりに「思考停止」過ぎやしませんかね?…と言いつつ、私も今まで説明できなかったんだけど、白倉伸一郎が、こんな『ウィザード』批判をしていたのだ。

白倉 (中略)私は魔法と指輪は、そんなに食い合わせが悪いとは思わない。ただ、「魔法ドラマ」を打ち出されたときに、魔法を使うんだってところまではいいけれども、視聴者がそれに何を期待するのかっていう発想が欠落しているように思えるんです。「魔法戦隊」の場合は「スーパー戦隊」という概念をお客さんに共有していただいているので、お色直しでいいんです。
 『W』のときは探偵という行為そのものがドラマの構築と密接に結びつく性質のものですから、ジャンルをシリーズ全体で掘り込めた。『フォーゼ』だと学園が舞台なので、善し悪しはともかく、部活動としての仮面ライダーというのもできる。そこをウリにできちゃう。「今度のライダーは、学園で活躍しているよ」っていう、特徴を付加することができるんです。で、魔法っていうファクターはどうでしょう。「魔法ジャンル」と言われても、魔法そのものはドラマの題材を作らないんですね。(中略)うまくアイテムを使ってストーリーが展開するんですが、魔法がストーリーを産んでいるわけではない。
白倉伸一郎『証言!仮面ライダー平成』より)

 う~む!なんてロジカルな『ウィザード』批判だ…!『W』(三条陸)と『OOO』(小林靖子)の熱狂的なファンは白倉伸一郎のヘソのゴマを煎じて飲むといいよ(笑)。さて、前述の「それ」はどういうことかと言うと、例えば『フォーゼ』の場合、

 転校生(01, 02)、クイーンフェス(03, 04)、スラッカーパーティ(05, 06)、補習(07, 08)、オカルト部(09, 10)、牧・瀬・弘・樹(11, 12)、入院(13, 14)、合唱部(15, 16)、交換留学生(17, 18)、陸上部(19, 20)、進路指導(21, 22)、キック・アス(23, 24)、プロム(25, 26)、落研(27, 28)、先輩・後輩(29, 30)、演劇部(31, 32)、修学旅行(33, 34)、バンド(35, 36)、宇宙飛行士選抜模擬試験(37, 38)、生徒会(39, 40)、仮面ライダー部(41~47)、卒業式(48)

というように、学園は大友なら誰もが知っている(というか、体験している)イベントを毎週のように発生させられる(ある意味)究極な舞台装置なのである。まぁ、アメリカンハイスクール要素(クイーンフェス、プロムなど)や、宇宙要素(宇宙飛行士選抜模擬試験)は日本人には縁の無いものだけど…!これに対し、『ウィザード』のフォーマットは

(1)ファントムに襲われているゲートを魔法で探す。
(2)操真晴人/ウィザードが魔法でファントム退治。
(3)予算が有ったらアンダーワールド魔法で入る。
(4)ウィザードラゴンと魔法で巨大ファントム退治。

と、基本的に「これだけでっせ!」かつ、予算が無いとアンダーワールド(CG)戦はやらないので、マンネリズムに陥るのである。しかも、白倉伸一郎が指摘するように、「うまくアイテムを使ってストーリーが展開する」けれど、魔法は魔法でなくてもいい(魔法以外でも成立する)のがなぁ…!

 しかし、私が『ウィザード』を評価しているのは、終始<不可逆>を描いているという所である。

■<不可逆>を描いた『仮面ライダー

 『ウィザード』の世界では、絶望したゲート(魔力の高い人間)のアンダーワールド(精神世界)から新たなファントム(怪人)が生まれ、その者を突き破り現世に出ずる。故に、ファントムがいる=生み出した人間は既に死んでいる、ウィザード(仮面ライダー)がファントムに敗北する=ゲートは消滅(死亡)する、ということなので、意外にシビアな設定だ(「魔法使いになる」という例外もあるけど)。というか、よく『ウィザード』批判で「人が死なない」=「手緩い、緊張感が無い」というものがあるけど、「人が死なない」=「仮面ライダーが怪人から人間を守り切った」という証なのに、何故それが咎められる理由になるのか…?そう言う大友は、今日も虚淵玄は平成一期の作風に立ち戻っている…!」と言って人がいっぱい死ぬ『鎧武』を持ち上げ、『ウィザード』を扱き下ろすのであった(チャンチャン♪)

 さて、ゲートから生まれるファントムだが、人間であった頃と怪人になった後では「別人格」ということがしばしば強調される。第22・23話(フェニックス/ユウゴ回)や第26・27話(稲森姉妹、メデューサ/ミサ回)等がそれだ。ファントムを生んだゲート(死んだ人間)が生き返らないのは勿論だが、怪人の人間態に元々の人格が残っていない、というのも臍だ。『ウィザード』世界は基本的に<不可逆>なのである(例外は第16話「クリスマスの奇跡」と第31話「涙」ぐらいだ)。

 よく『ウィザード』批判で「魔法に万能(ナンデモアリ)感が無い」というものがあるけど、それは意図的なものだと思っている。例えば、回復(治癒)系の魔法が「古(ビースト)の魔法」(ドルフィマント)にしかない、というのが理由の一つだ。おそらく、古代は文字通り「何でも」出来たのだろうが、時が経つにつれて禁呪となったものも多いのだろう。…というか、科学の力で変身する『仮面ライダー』の方が「ナンデモアリ」になることが多いんだよなぁ…!「プログラミング」とか「特異体質」とか…。けれども大友は、今日も三条陸は王道だ~!」と言ってご都合主義な『ドライブ』を持ち上げ、『ウィザード』を扱き下ろすのであった(チャンチャン♪)

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 さて、『ウィザード』では<不可逆>を覆そうとする(覆した)者が<悪>として描かれる。その一人が「笛木奏/白い魔法使い・ワイズマン」だ。死んだ娘、暦(コヨミ)を甦らすためにサバトを開き(一回目は失敗)、大量のファントムを生み出した張本人。そんな中、絶望しなかった(ウィザードラゴンを封じ込めた)操真晴人に着目し、四人の魔法使いを人柱にした再びサバトを開くことを思いつく。その後はウィザードには白い魔法使いとして、ファントムにはワイズマンとして近付き、統率し、事を進めた。愛娘のためなら他人がどうなっても構わないというエゴイスティックかつ動機がドメスティックなラスボス(の一人)だ。

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 もう一人の<悪>(かつラスボス)が「滝川空/グレムリンである。「怪人の人間態に元々の人格が残っていない」という『ウィザード』世界のルールの唯一の例外。「ソラが人間(の心を持ったままでいる)というのは元々は僕が出したアイデアだった」(2013/05/12)とはきだつよしの談。ソラはきだつよしオリジナルのキャラクター(他の主要登場人物は、宇都宮孝明や香村純子のアイデアも入っている)なので、それ故の「例外」なのだろう。元々は美容師かつ、「白い服と長い黒髪」の女性のみを狙う(襲う)連続殺人鬼。その猟奇的な性格故にファントムの人格を抑え込んだ(押さえ込めた)という、中々にイレギュラーな存在だ。終盤、「人間に戻る」(真に<不可逆>を覆す)ために笛木奏とコヨミを殺害し、ハーメルケインと賢者の石を奪い、人々から魔力を奪うべく、無差別殺人を繰り広げた。個人的には、もう少し操真晴人との対比を描けたら、もっと深みが出ただろうなとは思う。

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 きだつよし曰く、『ウィザード』の実質の最終話(第51話「最後の希望」)は「晴人のラストが寂しい(悲しい)」という声もあったのだという。だがしかし、私は「それ」(コヨミが甦らないエンド)は<誠実>だと思ったのだ。何故ならば、『ウィザード』は終始<不可逆>を描いてきたからだ。それが核心に変わったのは、小説版『ウィザード』(著:きだつよし)を読んでから。なんと、冬映画『アルティメイタム』に登場した「タイムウィザードリング」を使用しない理由付けがなされていたのだ。

 魔法陣を抜けた俺の目の前に、懐かしい光景が広がっていた。
 俺は、自分をこの場所にいざなった指輪を改めて見た。
 "時間移動"の指輪。時の門を開き、過去や未来へ行き来する事ができる――まさに禁断の力を持つ魔法だ。
 この指輪は前に一度使ったことがある。そのときは、未来からの来訪者を元の時代に送り届けただけだったが、のちに、この指輪の持つ力を恐ろしいと思った。これがあれば過去に戻り、歴史を変える事も可能だからだ。
 変えたい過去、忘れたい過去、人には色々な過去がある。俺にだって、もちろんそんな過去はある。が、だからといって、この力を使って俺が好き勝手に過去を変えてしまったら、もしこの力が誰かの手に渡り悪用されてしまったら……そんな事になったら今の世界は滅茶苦茶になってしまう。それを避けるため、俺はこの指輪を二度と使わないよう、封印していたのだ。
きだつよし『小説 仮面ライダーウィザード』より)

 『ウィザード』は大友にやいのやいの言われているけど、とりあえずきだつよし「自分にまとわりつく響鬼のイメージは払拭したい」という思いは達成できているとは思う。

■「後悔するより前に進もうぜ」

ウィザードに込めた今を受け入れ前に進むというテーマは、
震災後の日本に向けてのエールのつもりでもありました。
自分の書いた物語がもしも誰かの力になれる事があったのなら、
これほど嬉しいことはありません。
(『きだつよしBlog 不屈夢走』2013 09/30 Mon「仮面ライダーウィザード 終了」より)

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 終始<不可逆>を描いた作品、それが『ウィザード』である。

 『ウィザード』は大友は「ツマラナイ」と思ったかもしれないが、転校生も、クイーンフェスも、スラッカーパーティも、補習も、オカルト部も、牧・瀬・弘・樹も、入院も、合唱部も、交換留学生も、陸上部も、進路指導も、キック・アスも、プロムも、落研も、先輩・後輩も、演劇部も、修学旅行も、バンドも、宇宙飛行士選抜模擬試験も、生徒会も、仮面ライダー部も、卒業式も、子供には解らない。だがしかし、

 仮面ライダーが人間(<不可逆>な命)を守るべく怪人と戦う。

その一点だけは、どんな子供にも解ったはずである。子供が「ツマラナイ」と感じるだろう要素(例えば複雑な設定)を削ぎ落とし、只管「孤高のロンリーヒーロー」を描き切った(それだけで一年間やり切った)『ウィザード』は、一周回って凄いと私は思うのだ。

■蛇足:「最後の希望」

『ガイム』  「前作より玩具売上は上げたけど、視聴率は下げたンゴ…!」
『ドライブ』 「前作より視聴率は上げたけど、玩具売上は下げたンゴ…!」
『ゴースト』 「前作より子供人気は上げたけど、大友人気は下げたンゴ…!」
『エグゼイド』「前作より大友人気は上げたけど、短縮&枠移動したンゴ…!」
『ウィザード』「本当に俺が文字通り“最後の希望”だったんじゃあねぇか!」

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 『ウィザード』は後続の作品が出れば出るほど、その存在が光り輝くだろうとは思っていたけれど、まさかこんな未来になるとは放送終了時点では夢にも思っていなかった…!

[了]

※はじめましての方はこちらをご一読ください。

sebaooo-tatoba-combo.hatenablog.jp