千倍王鷹虎蝗合成獣

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『仮面ライダーエグゼイド』三四半評

 『エグゼイド』の放送が約四分の三終わったので、三四半評をば。第25話「New game 起動!」 から、第36話「完全無敵のGAMER!」 までの所感です。

 三四半評を書くつもりは無かったのですが(序盤評と中間評を前半評に集約したように、終盤評と一緒に、後半評一つに纏める予定でした)、何故『エグゼイド』の視聴率は低いのか?について明確なアンサーが出来つつあるので、もう2つほど理由を挙げるために、作成することにしました(※『エグゼイド』はシリーズ急展開(第25話)以降、出来が宜しくないので、裏面は表面になります)。

※『エグゼイド』前半評(表面&裏面)です。理由その1~4は「裏面」をご覧ください。

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■理由その5:黒棺

 滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 湧き上がり・否定し 痺れ・瞬き 眠りを妨げる 爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち 己の無力を知れ!! 破道の九十「黒棺」!!!!

 …と、まぁ『鰤』ネタはさて置き、ここで言う「黒棺」とはシュレディンガーの猫(箱)>のことである。一時、物凄く流行ったアレですね。ザックリ説明すると、「箱の中は猫が『生きている』or『死んでいる』の2つの並行世界が存在するんだよ!!」「な…なんだってー!?」、ということです。…一つ、実例を出すか…!例えば、『エグゼイド』前半評(裏面)に以下の様なコメントが投稿されていたけれど、

 私が個人的にエグゼイドに感じているモヤモヤとして、問題をすぐに追及しないというのがあります。ポッピーがバグスターだと告白してもサラッと流し、誕生に人間を犠牲にしたかどうかすら問い質さなかったり、永夢の二重人格を問題にしたと思ったら根本的な解決をしないまうやむやにしたり。そしてポッピーが敵に回ったりパラドに永夢が利用されたりといった問題が発生してしまっていて、それぞれ最近になって説得や伏線回収として使われて展開としては盛り上がっているのですが、さっさと追及しておけばもっと早く解決していたのではと思えて今ひとつ乗り切れません。

ここでは前者の「ポッピーはバグスター」問題について取り上げたい。「問題」…と書いたけど、視聴者の大半はコレを問題には感じなかったと思われる。何故ならば、劇中のメインキャラクター達が全く問題にしてなかったからだ。

PP「今まで黙ってたんだけど、私、『ドレミファビート』から生まれたバグスターなの!」
永夢「そんなの知ってます。『ドレミファビート』のポッピーピポパポ。ゲーマーには常識でしょ?」
飛彩「“仮野明日那(かりのあすな)”という名前も、“仮のナース”のもじりだろ?」
PP「バレてた…。」
(『エグゼイド』第12話「狙われた白銀のXmas!」より)

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この件については、シリーズ急展開(第25話)以降になるまで追求されない。ポッピー「誕生」の謎は<黒棺>に収納されたわけである。そうなると、2つのパラレルワールドが存在することになる。

並行世界1「ポッピーピポパポは、人間の死と引き換えに生まれたバグスターである。」
並行世界2「ポッピーピポパポは、檀黎斗が開発したサポート用のバグスターである。」

並行世界1ならば問題である。ポッピーは人殺しということになってしまうからだ。並行世界2ならば無問題である。ポッピーは人殺しではないからだ。そして、どちらの並行世界なのか?は言及されていないため、大半の視聴者は問題にしないのである。こうやって、良く言えば「一旦保留」に、悪く言えば「有耶無耶」にしておいて、頃合いを見計らって「ポッピーの生=黎斗の母の死」という新設定を出せば、「すご~い!高橋悠也は伏線回収が上手いんだね!」と、(熱狂的な)ファンが勝手に持ち上げてくれるわけである。

 もし、前述のやり取りが下記の様な内容だったらどうだろうか?

永夢「そういえば、ポッピーピポパポって、『ドレミファビート』のキャラクターだよね?」
PP「え?」
飛彩「ということは、小姫とグラファイトの時のように、お前も誰かを消滅させたのか!?」
PP「そ、それは…!」
灰馬「まぁまぁまぁ!今日は楽しいクリスマスなんだし、帰ってケーキでも食べよう、な!」
PP「そ、そうだよ!皆で一緒に、クリスマスパーティしようよ!」
永夢「そうですね。飛彩さん、ケーキの切り分けはお願いします。」
飛彩「俺に切れないものはない。」
(『エグゼイド』第12話「狙われた白銀のXmas!」IF)

はい、もう最悪ですね。後半になって「あの時すぐに追求しておけば~!」と叩かれること請け合いですね。かつて、こういう叩かれ方をする脚本家がいましたね。そうです。井上敏樹御大です。「あかつき号事件の謎とは!?」(アギト)、「流星塾の謎とは!?」(555)、「そもそもキバとは!?」(キバ)、謎を引っ張りに引っ張って数多の視聴者をヤキモキさせたのでございます。なので、『エグゼイド』を評する時に「謎を明かすのが上手い!」というのはちょっと違うんだよな。何故ならば、劇中のモノゴトに対し「謎を(疑問に)感じる」人がいない(少ない)から。一番、謎を追求していた貴利矢は1クール目で退場しちゃうしな…!最近、復活したけど。

 『エグゼイド』のメインライター高橋悠也は、何だか知らんが<黒棺>を用意するのが上手いのである。<匣使い>と名付けようw

――何か他に苦労なさった部分はありますか?
高橋 一番難しかったのは設定面ですね。それぞれがなぜその変身アイテムを使うことになるのかとか。今後登場するであろう新キャラクターに対して、今いるメンバーだけで固めた設定が上手くハマらない部分は出てくると思うので、イメージとしては80%ぐらいまでは決めておいて、あとの20%はブラックボックスを作っておかないと適応できないかなと思って。これが仮面ライダーならではの大変さなのかなと思いつつ勉強させてもらっている日々です。
(高橋悠也『「仮面ライダー」超解析 平成ライダー新世紀!』より)

 ポイントは、<黒棺>の中身は「後付け」でも良い、ということである。例えば、貴利矢が追求していたのは「リプログラミング」のチカラだった、という設定は後付けだ。企画当初から決まっていたのは、第12話で貴利矢が退場するということと、第23話で『マキシマムマイティX』を販促するということのみで、『MMX』の能力自体は未確定だったのだろう(※本稿で、高橋悠也の脚本術に対し<黒箱>という表現を使用しないのは、ブラックボックスは(機密性を高めるべく内部を)隠蔽するために“BLACK”にするのであり、宙ぶらりんにしておくことと同義ではないためである)。

 12話で貴利矢が消滅した時、実は一番焦ったのは医療監修の林先生でした。貴利矢がいなくなったら、拡散したウイルスが根絶できなくなる……と。22話・23話で紡がれる4人のドクターたちの誇りをかけたストーリーはこうして生まれました。
(大森敬仁『エグゼイド』(第23話「極限のdead or alive!」HIGHLIGHT!より)

 だがしかし、これこそが、『エグゼイド』が視聴率を落とした最大の原因の一つなのではなかろうか?(もう一つは後述)<黒棺>を詠唱するということは、空白(BLANK)や灰色(白黒はっきりしない、グレー)な領域を生成するということであり、裏を返すとキャラクターの「心情描写不足」、世界観や設定の「説明不足」に繋がるからである。実際、前半(特に1クール目)の永夢(主人公)&ポッピー(ヒロイン)ってどんな奴なのか今一よくわからんしね…!「(後半に)盛り上がりを作ろうとして、不自然に疑問をスルーしている場面が目立つ」とは上述のコメント投稿者の談だが、これは的を射ているし、完全同意である。

 …とりあえず、これだけは声を大にして言いたいのだが、大森敬仁&高橋悠也よ…!

 わざと空白や灰色な領域を用意して、後に新設定を出すことを「伏線を回収した」とは言わ~ん!

■理由その6:約束

 ここで言う<約束>とは、「ベルトで仮面ライダーに変身する」とか「怪人が出現しそれと戦う」等、そういう等身大ヒーロー「あるある」ではなく、「視聴者と共有できるお約束」のことである。

 お約束はお約束として、視聴者と共有できるお約束。『W』におけるお約束はアリのような気がするんです。「平成仮面ライダー」だからではなく、「探偵ドラマ」というジャンルだから、あるいは「ジャンルのパロディ」だからこうなんですと示し、お客さんと一緒に楽しめるようなお約束。視聴者に対する、わかりやすさというかたちで働くお約束は大いにアリでしょう。『響鬼』のように、お客さんと共有できないお約束はしてはいけないんだけど。おそらく『仮面ライダードライブ』は『W』方向なんだろうなと思います。
白倉伸一郎『証言!仮面ライダー』より)

 まぁ、白倉伸一郎は高寺成紀アンチなので、ダメな例として『響鬼』を引き合いに出しているけど、『響鬼』の<約束>は共有し易い方だと思うけどなぁ…!二話前後編で、鬼が魔化魍を退治する、の繰り返しだし。問題は、明日夢(中学生)パートになると明確に視聴率が下がったことなのであって(笑)さて、『エグゼイド』は「医療ドラマ」ではあるのだが、「警察ドラマ」の『ドライブ』と比較すると、ちと<約束>が共有し難いフォーマットになっている。というより、番組側が<約束>を破ったり、コロコロ変えたりするのが問題なのだ。

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 例えば、第09話「Dragonをぶっとばせ!」を見てみよう。ゲーム病の患者からバグスターを分離(切除)できるのはレベル1のみ、というのが『エグゼイド』世界のルールであったが、この話では日向恭太郎から出現した『ドラゴナイトハンターZ』のドラゴンを、エグゼイドレベル2が倒しているのである。

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しかし、日向恭太郎に別状は無かった。『DKHZ』のドラゴンについては、「いつものウイルスと違う?」で済まされて、何故、前段(レベル1の活躍)無くレベル2で倒せたのか?の説明は無かったはずである(これもまた、<黒棺>の中に…!)。これに関しては、感想記事のコメント欄でこんなやり取りがあった。

読者1「今回の話で気になったのは患者から出たバグスターをエグゼイドがレベル2で倒した事ですかね。最初に出たバグスターってレベル1じゃなければ分離出来なかったはずですよね?そこら辺があれ?ってなりました。
 
セバオーズ「しまった、これ突っ込み忘れた!(コラ)「1.患者のゲーム病とは無関係な奴だった(今回はグラファイトを倒せばオールOKなノリ)」「2.成長した際に患者から勝手に分離した。幸運にも消滅しなかった(ご都合主義)」「3.大森敬仁も高橋悠也も諸田敏もレベル1の設定を忘れてた」お好きなのを選んでください(笑)」
 
読者2「レベル1の役割は「バグスターと患者を分離する事」でありレベル2でも倒すことは出来るのでは?なんて思ったりしました。今回は最初から日向先生から分離した状態であったため、その辺りは別にどちらでもいいのではないのかと。

 ここで、「どちらでもいい」で済ませられるのは(熱狂的な)ファンのみで、そうでない人からすると、『エグゼイド』は<約束を破る>番組、ということになる。

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 更に、第12話「狙われた白銀のXmas!」からは、ゲーム病の患者からバグスターを分離(切除)できるのはレベル1のみ、というルールそのものが変わってしまう。

永夢「あっ。そう言えば今回のバグスターウイルス、変だったんです。」
灰馬「変だったとは?」
永夢「はい。分離手術する前に、バグスターが患者の体からいきなり分離して…。
飛彩ウイルスが変異したか…。
永夢「ウイルスが変異したって?」
灰馬「どういう意味だ、飛彩!?」
飛彩「ドクターのくせに、そんなこともわからないのか。インフルエンザが毎年流行するのは、人が作ったワクチンに対応するために、ウイルスが抗原性を変化させるからだ。
PP「うんうん…どういうこと?」
永夢「つまり、一度倒されたバグスターは進化する!
(『エグゼイド』第12話「狙われた白銀のXmas!」より)

 勿論、これは大人の事情(予算の都合)から編み出された設定で、(熱狂的な)ファンからすると「すご~い!高橋悠也は理由付けが上手いんだね!」と、感心するポイントなのだろうが、そうでない人からすると、『エグゼイド』は<約束をコロコロ変える>番組、ということになる。

 共有できない約束を強要する、あるいは自ら約束を反故にする番組は視聴率が下がる。

 これは一つの指標になるな…!『証言!仮面ライダー』は最近(2017/03/01)発売された本だけど、白倉伸一郎は流石だなと改めて思い知らされました(ナンジャソリャ!)。

■『エグゼイド』3クール目を見て思うこと

マッハ「動くな!」
ブレン「撃たないで!あっ撃たないで!」
マッハ「この時をずーっと待ってたぜ。」
ブレン「バカな…お前には、他のライダーを恨む記憶を書き込んだはず…!」
マッハ「そうだっけ?俺も進兄さんと同じ、特異体質ってやつみたいだぜ。
(『ドライブ』第33話「だれが泊進ノ介の命を奪ったのか」より)

バンノ「あのシグマサーキュラーは制御装置ではない。4人の超進化態の力を吸収・再現するための装置だ。ここに全ての力が宿り、これからは私だけで自由に真のグローバルフリーズを起こせる!問題は1つだけ、吸収した力の余剰エネルギーの処理だ。それがメディックに逆流するよう、彼女をプログラミングさせてもらった。洗脳手術のついでにね!(中略)彼女がいなければ、誰も君らを回復できまい。たとえ私に牙を向いたところで、倒すのは容易い!(中略)クリムの頭脳を持つ004だからこそ、この装置を造れた!私は幸運だ!今、全ての流れが私に味方している!」(中略)
ブレン、第43話でメディックに注入した毒を自分に戻し、エネルギーの向き先を自身に変える。
バンノ「何!?何をした、ブレン!?」
ブレン「ううっ…。お忘れですか、蛮野?私の名はブレン…頭脳!あなたの仕組みに逆らう、それなりの知恵があったということですよ!」
ハート&メディック「ブレン!」
バンノ「バカな…!」
ブレン「よかった…。正気に戻りましたね、メディック…。プログラムごとあなたの負担を私に移せば、意識も戻ると読んでいました…。
(『ドライブ』第44話「だれがハートを一番愛していたか」より)

 『エグゼイド』後半、特異体質を抗体に、プログラミングを永夢の「リ」プログラミングや黎斗&正宗の新技術に置き換えてるだけで、やってることは『ドライブ』後半と変わらんな…!

[了]

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