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千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

『エグゼイド』感想:第01話「I'm a 仮面ライダー!」

仮面ライダーエグゼイド』の感想です。以下、ネタバレ注意。

第01話「I'm a 仮面ライダー!」(脚本:高橋悠也、監督:中澤祥次郎)

■「車椅子のヒーローも出して」

 『龍騎』放送当時、視聴者から「十三人もヒーローが出るなら、車椅子のヒーローも出して」という要望が寄せられたという。そうした設定も一旦は検討されたものの、最終的に白倉伸一郎は取り止めている。それは、どう工夫を凝らしたとしても、必ず「誰かの足を踏む」ことは避けられないからだという。

 たとえば、ドラマに<車椅子の少女>という人物を登場させるとしよう。
 彼女が悪い子なら車椅子の人間を悪く描いていると傷つく人がいる。どうでもいい存在なら登場人物を無意味に車椅子に乗せていると傷つく人がいる。だれかの足を踏んでしまうのである。だから彼女はいい子でなければならず、かつ、重要な役回りでなければならない。
 物語のなかで、彼女の足が治ってはいけない。足が治らない人に、治らなければならないというプレッシャーを与えるからだ。逆に治らなくてもいけない。治りたがっている人に絶望を与えるからである。
 したがって、彼女が車椅子に乗って劇中にあらわれた瞬間に、彼女のキャラクターと、ドラマのストーリーが自動的に決定する。
 いい子足の状態と関係なく、明るく生きていく姿を、重要性をもって描く物語以外に選択肢がないのだ。
 (中略)
 とどのつまり<車椅子の少女>をドラマに登場させることは、実話にもとづいているといったような、よほどの理由がないかぎり許されないことになる。
白倉伸一郎『ヒーローと正義』より)

 上記の例の女の子は、人間というより「車椅子の少女」という記号になり、物語は「車椅子の少女をめぐる物語」という記号になる。これでは、彼女に登場人物としての存在意義(アイデンティティ)は無い。そして、言うまでもないことだが、記号的に「車椅子の少女」を描くことは、それ自体が最も誰かの足を踏むことである。ある意味、テレビドラマの劇中世界は「一切の差別が発生しない」場所よね。<被差別者>が全て抹消・排除されている空間なのだから。特撮番組の場合、<怪人(怪獣)>が差別されていることはあるけれど。

■<病気>は放送コードに引っ掛かる

 というわけで、「平成仮面ライダー」シリーズでもご多分に漏れず、(実在の)病気の人間というキャラクター設定はNGとなっている。三つほど例を挙げてみる。

(一)『龍騎』の場合

 北岡秀一は「不治の病を治すため」に仮面契約者となったが、<不治の病>と病名が暈かされているのは前述の理由からである。本来なら、小説版のように<若年性認知症という設定にする予定だったのかもしれない。

 吾郎が六枚めの写真を指さすと、秀一は突然、言葉に詰まった。
 花束を手にした秀一が両親に挟まれている写真である。両親の顔はわかるのだがいつ、どこで撮影され、なぜ、自分が花束を持っているのかが思い出せない。
 (これは先生が弁護士になって初めての勝利のお祝いの席の写真です)
 そうだった
 吾郎に教えられて思い出した。
 忘れちゃだめだよな、引きつった笑みを浮かべて秀一が言う。初めての勝利と言えばおれが弁護したのは吾郎ちゃんだったもんな
 (はい。今の私があるのはすべて先生のおかげです)
 (中略)
 「吾郎ちゃん、おれ、他の全部を忘れても、吾郎ちゃんのことは忘れないからさ」
 秀一はアルバムを閉じ、天井に顔を向けて息を吐いた。「吾郎ちゃんだけだよ、おれのことをわかってくれるのはさ(中略)そろそろ晩メシにしようよ、吾郎ちゃん」秀一が言う。「おれ、腹減っちゃったよ」
 もう食べたとは言えなかった。
 吾郎は二度目の夕食を始めた。
井上敏樹『小説 仮面ライダー龍騎』より)

(二)『電王』の場合

 当初、『電王』のフォームチェンジの小林靖子によるアイデアは、主人公が<多重人格者>で、例えば好戦的な人格なら剣で戦う、というものだったのだが、多重人格もまた<障害>の一つなのね。余談だけど、障害の“害”の字はネガティブなイメージが付きまとうため、最近では<障碍>とか<障がい>といった書き方をしよう、という動きが有ったり無かったりするらしい。“碍”とは<壁>という意味だそうで。

――いままでも特撮というジャンルのなかにも五人の戦隊なら五人のカラーがあるし、ライダーにも何人か性格の違うライダーがいたりするわけですが、『電王』ほどキャラクターというものを意識的に描き出して、ある種本人がキャラクターに乗っ取られてしまう、その逆転の発想がおもしろいですよね。
小林 実は、最初の元ネタは多重人格だったんですけど、そういう病的な描写はマズイということでイマジンになったんです。それと佐藤健さんという若手の役者さんがひとりで何役もこなさなきゃいけないというときに、非常に強調したキャラにしないと変化がわかりにくいという事情もありました。
小林靖子ユリイカ2012年9月臨時増刊号 総特集=平成仮面ライダー』より)

(三)『キバ』の場合

 『電王』の多重人格の件は「イマジン」というアイデアに昇華された(好転した)けれど、『キバ』の「この世アレルギー」<免疫過剰反応(Allergie)>が放送コードに引っ掛かり、初回で紅渡が麻生恵の荒療治で克服という超展開に。というか、下記インタビューを見ると、吸血鬼も「血を吸う」描写も駄目とか、それだと<ヴァンパイア>モノの意味がないじゃん…!

宇野 子ども番組だから描けないっていう話が先ほどありましたけど、『キバ』は要するに「寝取り」の物語ですし、音也と渡、真夜、(登)太牙との血縁関係ってたぶんもっとドロドロした複雑なものになるような気配を匂わせてましたよね。放送コード的な限界があったということなんですか?
井上 あった。吸血鬼っていう言葉もダメだし、血も吸っちゃいけない。あと「アレルギー」って言葉もダメ。もともと(紅)渡は「この世アレルギー」っていう設定で、この世にいられない、例によってお化けってことだったんだけど、それもダメだと。
井上敏樹ユリイカ2012年9月臨時増刊号 総特集=平成仮面ライダー』より)

 何が言いたいかというと、病気の仮面ライダーが自分が治るために戦うとか、病気のゲストを治すために戦うといった内容は、絶対的にNGだったのだ。

■この男、ドクターでゲーマー!

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 だから、患者が感染するのが<コンピューターウイルス>で、それを退治するのが<ゲーマー>というコンセプトは一周回ってアリな気がしてきた。絶対に現実では罹らない病気だし。ゲームをモチーフに選んだのはチーフP大森敬仁だけど、「医療ドラマ」になったのは誰のアイデアなんだろう?パイロット監督の中澤祥次郎は非オタクで、特撮監督の佛田洋は年代的にゲーム世代でない(『龍騎』の時も「デッキ」という用語を知らなかったとかw)ので、「難しい!難しい!」と苦心惨憺しながら撮っているそうだけど、その題材を知らない方が却って良いこともあるし、「何だかよくわならかい」=「何でもアリ」ということなので、自由に好き勝手に思うがままにゲームの世界を表現していただきたい。今作の怪人は「バグスター」で、初回のそれの元ネタは<塩(ソルティ)>か。<医者×遊戯>という掛け合わせも異色なのに、<病原菌×調味料>とかもっと異端な組み合わせだ…!

■なぜ平成仮面ライダーは武器を使うのか?

 ライダーキックにも問題がある。
 強化された脚力によって敵を蹴り倒すのを、必殺技として誇ることは、脚力の重要性を必要以上に強調し、足の不自由な子どもの心を傷つける恐れがあるからだ。
 現在の仮面ライダーたちもキックをするけれども、それはふしぎなパワーやメカなどの助けを借りているのであり、身体能力としての脚力の強さがヒーローの強さなのではないと設定した上で、なおかつ、キック以外にも技を持たせて相対的に脚力への注目度を下げることによって、かろうじてお目こぼしをもらっているのが現状だといえる。
白倉伸一郎『ヒーローと正義』より)

 これは流石に冗談だろwww …冗談だよね?何にせよ、<規制>って面倒臭いよね。

■追記(2016/12/11)

紘汰「そっか、ママとはぐれちゃったか。うん、誰だって泣きたいほど辛い時ってのはある。でもな、そんな時こそ負けちゃいけない。そういう勝負、ゲームだと思ってみなよ。泣いちゃったら負けのゲーム。泣かない方法を見つけたら勝ちだ。誰だってどんな時だって、戦うことはできるんだ。今君ができること、何だと思う?」
健一「…ママを見つけること。」
紘汰「よーし!(健一の手を引いて)お母さーん!」
健一「ママー!」
紘汰「ねえ、お母さーん!迷子ですよー!」
ママ「健一!よかった…。」
紘汰「よかったなぁ!君の勝ちだぜ~!」
健一「お兄ちゃん、ありがとう!」
ママ「あの…配達の途中で?」
紘汰「ああ、大丈夫です。カレーはまだまだ暖かいんで!」
(『鎧武』第01話「変身!空からオレンジ!?」より)

 言わされてる感が半端ねぇ…!

 『鎧武』第01話の「主人公が子供に語りかける」シーンは『クウガ』のオマージュで、あまりに『クウガ』過ぎるがために急遽、田崎竜太がイメージ映像(鎧武軍 VS バロン軍 VS 斬月&龍玄軍)をぶち込んだというのは有名な話だが、この、「第01話で主人公が子供に語りかけたら『クウガ』でしょ!」と、パロネタをぶち込んで「『鎧武』は『クウガ』の精神(マインド)に立ち返ってるんだ~!」という気になっている所が『鎧武』の悪しき部分である。閑話休題。沢芽市で「インベスゲーム」が流行ってるという設定になったのは、「あまりにも戦極ドライバーの外見がオモチャ過ぎるから」とのこと(虚淵玄曰く)だが、インベスゲームまわりは突っ込み所満載だったね…!(一々書かないが)対し、『エグゼイド』の世界では、幻夢コーポレーションの『マイティアクション』が人気ゲームであることが、永夢とゲスト(颯太くん)の会話から伺える。

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颯太「『マイティアクションX』だ。なんでここに!?今日発売の、新作だよ!そのゲームやらせて!お願い!少しだけ!」
(『エグゼイド』第01話「I'm a 仮面ライダー!」より)

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永夢「颯太くん?具合は、どう?」
(颯太がキーホルダーを取り出して見せる。)
永夢「それって、マイティ?ゲーム、大好きなんだね。」
颯太「今日の発売イベント、ずっと楽しみにしてたのに…。僕、悪い病気なんでしょ?」
永夢違うよ。君はマイティなんだ。
颯太「えっ?」
永夢マイティは、君の体の中で悪さをしているボスキャラを、やっつけるんだ。大丈夫。先生と一緒にボスキャラを倒そう。
(『エグゼイド』第01話「I'm a 仮面ライダー!」より)

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黎斗 「皆さん、大変長らくお待たせいたしました。制作発表から5年以上の開発期間を経て、ついに、あの伝説のゲーム、『マイティアクションX』が、完成しました!」
( 中 略 )
明日那「颯太くん、病院に帰るよ。」
颯太 離して!あと少しで僕の番なの!
明日那「これは颯太くんのためなの。」
颯太 少しでいいからゲームやらせてよ!
(『エグゼイド』第01話「I'm a 仮面ライダー!」より)

 初回で「世界観を提示する」という点で『エグゼイド』は『鎧武』の先を行っている。

 そういえば、「永夢の天才ゲーマーっぷりが描かれていない!」というコメント欄での批判に対し、「第01話で初プレイのゲームを難無くクリアした」という点を挙げたところ、「『マイティアクション』は前々からイベントなどで仕様は知らされているゲームであり完全に情報ゼロであるとは描かれていませんでした。完全に新しいゲーム、要するに『なんだそのゲームは』となるお話は第04話までではなかったと思います。」と反論されたけど、例えばCAPCOMの『ロックマン』シリーズでは操作キャラの動き(攻撃以外)がジャンプやスライディングぐらいだったのに対し、『ロックマンX』では後者がダッシュに変更され、壁蹴りも追加されたし、『スーパーマリオ』シリーズも『ブラザーズ』(FC)、『ワールド』(SFC)、『64』(64)、『サンシャイン』(GC)、『ギャラクシー』(Wii)、『3Dワールド』(WiiU)等、一口に「マリオ」と言えどもハードやソフトによって仕様は異なるのだから、十分<新作>と言ってよいのでは?と一応言っておく。

[了]

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