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千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

『ゴースト』最終章感想

 『ゴースト』最終章(第47・48・49・50話)の感想です。以下、ネタバレ注意。

■なぜ『ゴースト』は大友受けが悪いのか?

 『ゴースト』の平均視聴率が「平成仮面ライダー」シリーズ歴代最低記録を更新しそうである。あの『鎧武』を大幅に下回る勢いである。平成の『仮面ライダー』は「スーパー戦隊」シリーズより視聴率が高いのが常で、その差は「大友が(より多く)見ているか否か」なのだが、例年に比べて『ゴースト』は大友の評判が目茶苦茶悪い!ように思われる。なぜ『ゴースト』は大友受けが悪いのか?その理由は三つある。

(一)販促猛々しい

――(中略)たとえば自身が書かれた9、10話では弦太朗が友子を信じることで新たなスイッチの特性が分かる、ということに感嘆です。
三条 そういうところが好きなとこなので(笑)。やっぱりバンダイさんのおもちゃって年々高度になっているしたくさん出るので、番組に上手く組み込んで華麗に使っていかないと、子供たちがまた新製品出るのかよ」、「これは前にもあったよとか思うわけじゃないですか。とくに今年はアストロスイッチが40個もあるし。だから全部ちがうことを物語で見せていかないと、ほしがらないだろうと思ったので、そこにいちばん力を入れているし、ご協力できればと考えています。
三条陸仮面ライダーフォーゼの教科書』より)

 兎に角、次から次へと引っ切り無しに新商品がお披露目される!特に、前半(第01~24話)はほぼほぼ毎週というペースである(以下にリストアップ)実は、眼魂はコレクションアイテム数的には歴代より少ないのだが(アストロスイッチは40個、ウィザードリングも約40個、シフトカーは約20個)、ゴーストアイコンは「フォームチェンジアイテム(※)」でもあるため、今までは「物語が主で玩具が従」だったのに対し「玩具が主で物語が従」になってしまったのが大友に「また新製品出るのかよ」「これは前にもあったよ」と思われる要因(敗因)なのだろう。ロックシードは多人数のアーマードライダーに分散できたけど、「タケルが10個、マコトが3個、アランが2個」という配分は流石におかしい…!「タケルが7個、マコトが5個、アランが3個」くらいでもよかったよね。そうすれば、ムゲン魂の7種類(虹色)の必殺技にも引っ掛けられるし。

(※)中間・最終フォームを除くと、ステイツは「ベース/エレキ/ファイヤー/マグネット」の4つ、スタイルも「フレイム/ウォーター/ハリケーン/ランド」の4つ、タイプは「スピード/ワイルド/テクニック」の3つなので、やはり15人の英雄・偉人の魂(パーカーゴースト)は多い、多過ぎる…!

・第01話「販促!ゴーストドライバー!」
・第02話「販促!ガンガンセイバー!」
・第03話「販促!ロビン眼魂&コンドルデンワー!」
・第04話「販促!サプライズフューチャーセット!」
・第05話「販促!ガンガンハンド!」
・第06話「販促!ベートーベン&ノブナガ眼魂!」
・第07話「販促!ビリー眼魂&バットクロック!」
・第08話「販促!アメン眼魂&コブラケータイ!」
・第09話「販促!ベンケイ眼魂&クモランタン!」
・第10・11話「販促!クリスマス&年末商戦!」
・第12話「販促!闘魂ブースト眼魂!」
・第13・14話「販促!サングラスラッシャー!」
・第15話「販促!フーディーニ眼魂!」
・第16話「販促!メガウルオウダー!」
・第17話「販促!ヒミコ眼魂!」
・第18話「販促!GCPB01!」(※)
・第19~22話「販促!ネクロム&グリム&サンゾウ眼魂!」
・第23・24話「販促!アイコンドライバーG!」
(※ニュートンゴースト&ヒミコゴースト&ユルセンセット)

(二)段取りっぽい

――『仮面ライダー』ゆえに苦労されているところもあるのでは?
 今まで『仮面ライダー』シリーズを書かれた方も同じ苦労をされたと思いますが、新キャラクターやアイテムの登場タイミングが決まっていることですね。それは普通のドラマにもあることですが、ヒーロー番組は特にハッキリしているんですよ。やるべきことが予想以上に多くて最初はちょっとビックリしました。そのスケジュールに添いながら自分らしい話を書かなくてはいけませんからね。
 (中略)
――『ゴースト』に関わったことで感じたことはありますか?
 展開が早いことですね。端折るべきところは端折って、話をどんどん進めなければならない。しかも毎回バトルシーンがあるので、その間をいかにドラマで埋めるかなんですよ。その中で自分のやりたいことを入れるのは難しいですね。
福田卓郎『宇宙船 vol.151』より)

 よく『ゴースト』は「シリーズ構成が雑」「行き当たりばったり」「テコ入れの連続」なんて批判されるけど、どちらかと言うとその逆で、「このタイミングでこれをやる」「このタイミングまでこれはやらない」というのをあまりにも事細かに決め過ぎてしまったがために、返って<ブツ切り>感を増してしまったように思われる(以下にリストアップ)「この謎はここまで明かさない!」と引っ張ると、視聴者は「説明(描写)不足!」と感じるし、いざ「あの伏線はここで回収する!」となった時、それは既に遅しで人は「後付け!ご都合主義!」と感じるものなのだ。

・第19・20話:DC社乗っ取り(+繋心!ベンケイ&ノブナガ!)
・第21・22話:眼魔帝国の真実(+繋心!エジソン!)
・第25・26話:DP(赤い空)(+販促!マシンフーディー!)
・第27・28話:眼魔帝国の内紛(+販促!ディープスペクター眼魂!)
・第29・30話:フミ婆の老衰死(+繋心!フーディーニ!)
・第31・32話:五十嵐博士の謎(+繋心!ツタンカーメン!)
・第34・35話:DP(人の夢)(+繋心!グリム!)
・第36・37話:DP(歌う鳥)(+繋心!サンゾウ!)
・第39・40話:夏映画との連動(+繋心!ビリー・ザ・キッド!)
・第41・42話:イーディスの謎(+繋心!ベートーベン!その1)
・第43・44話:デミアB版頒布(+繋心!ベートーベン!その2)
・第45・46話:デミア正式販売(+繋心!ムサシ!)
(※DC:ディープコネクト、DP:デミアプロジェクト)

(三)お説教くさい

井上:だいたい番組っていうのは答えを出しちゃいけないと思うんだよ。
――それは、見ている側に参加する余地を与える、ということですか?
井上:違う。答えはいつも平凡だから。もっと言えば、平凡な答えしか受け入れられない世の中だから。でも、なんでいまさら「友情は美しい」とか言わなきゃならないの?そんなのはみんな一般論として持ってるわけじゃない?なのに、わざわざテレビで言う必要はないわけで。
――それは、見ている人が安心したいからじゃないかと……。
白倉:そこがすでにおかしいでしょ。平凡な答えで安心するっていうのは、もともとそういう答えを期待しているってことで、それはすでに観ている側の中で答えが出てるのよ。じゃあ別に観なくたっていいじゃない?と、そういう話。
井上:わかりきったことを描いてもしょうがないって話なんだよな。
白倉:それは確認するためだけにテレビ番組を観てるってことで、そういう番組は他にもあるので、そっちを観てもよろしい、と。
井上敏樹白倉伸一郎仮面ライダー555 ファンタスティックコレクション 555補完ファイル』より)

 はっきし言って、命、親子、兄妹(姉弟)、家族、対話、友情、想い、願い、繋がり、喜怒哀楽、信念、勇気、愛が美しいなんていうのは、大友からすると当たり前なんよな。これは宇野常寛が『クウガ』をディスる時に使うフレーズだけど、『さわやか3組』(道徳番組)を見せつけられている気分になる。

sebaooo-tatoba-combo.hatenablog.jp

 しかし、『ゴースト』の<販促猛々しい><段取りっぽい><お説教くさい>という短所は長所にもなりえる。それは、メインターゲットである子供にとって<解り易い>内容になるという利点だ。

■「目線を下げる」ということ

 父の作劇法の第一の特徴はその省略の仕方にある。(中略)たとえば刑事が犯人の隠れ家を探す場合、刑事はいきなりその隠れ家に現れる。なぜそこを突き止めたのかの経緯は一切説明されない。そういった手順を描く事は父にとってつまらない事であり、そのつまらない事を面白くひねろうなどとは考えなかった。そんな暇があるならば、刑事と犯人の直接対決をもっと長く書いたのだ。ただし、どうしても説明が必要な場合はセリフで処理した。しかも恥ずかしげもない思い切りの説明ゼリフで。なぜならそれは説明であり、父は説明を説明と割り切っていたのだ。
 また、父にとっての面白いシーンとは主にアクション絡みだった。手を替え品を替え、往々にしてさしたる理由もなくアクションシーンを挿入した。父にとってのドラマのアイデアとはほとんどがアクションを面白くするためのアイデアだった。
井上敏樹伊上勝評伝 昭和ヒーロー像を作った男』より)

 『ゴースト』の、特にメインライターである福田卓郎の脚本の特徴として「台詞(文字数)の少なさ」が挙げられる。それを検証するために、先ずは『鎧武』で「異世界(ヘルヘイムの森)からの侵略」について説明するシーンを見てみよう。

戦極凌馬「それ(ヘルヘイムの謎)を解明するために結成されたのが、我々ユグドラシルだ。あまりにも組織が巨大になり過ぎて、今では多国籍企業という体裁を装っているがね。実態はあくまで、研究機関なんだ。( 中 略 )長い歳月をかけて、我々はヘルヘイムの謎を追ってきた。そしてヘルヘイムに繋がるクラックの出現頻度が統計上最も多かったのがここ、日本の沢芽市だ。例えばこのクラックも、十年前にこの沢芽市で発見された貴重なサンプルでね。( 中 略 )これは元々地球の植物ではない。遠い昔にクラックから入り込んだヘルヘイムの種が、なぜか繁殖せずに単体で樹齢を重ねたものだ。地元では信仰の対象になっていたようだが。( 中 略 )こいつを利用して、我々は人工クラックの形成に成功した。ヘルヘイムの研究は飛躍的に進んだ。( 中 略 )この世界(ヘルヘイム)の生態系は段階を追った進化をしていない。ある時期を境に、以前とは異なる動植物によって根こそぎ塗り替えられている。森はある日突然に現れ、世界を覆い尽くした。今の沢芽市と同じような出来事が、おそらくはこの世界でも起こったんだろう。突如開いたクラックから流れ込む異世界の種。圧倒的な繁殖力に加えて、この植物は土壌を汚染し、他の草木を全て枯らしてしまう。…外来種という言葉を知っているかね?( 中 略 )本来無かった地域に、異なる環境から持ち込まれた生物。土着の生物を全て駆逐して、自らの領土に変えてしまうことがある。例えば…セイヨウタンポポの繁殖力に圧倒されて、日本在来のタンポポは絶滅の危機に瀕している。( 中 略 )この果実はいわば、時空を超えた外来種だ。圧倒的な繁殖力に加え、実を食べた動物を支配し、種を運ばせる。そのせいであの世界の文明はひとつ破滅した。そして次はこの地球の番というわけさ。」
(『鎧武』第20話「世界のおわりはじまる侵略」より)

 長い、長過ぎるよブッチー…!

 ちなみに、上記『鎧武』第20話を撮ったのは『ゴースト』のパイロット監督である諸田敏である。『ゴースト』の「台詞(文字数)の少なさ」は諸田監督の意向もあったのかもしれない。

 『鎧武/ガイム』で困ったことは、圧倒的な台詞の多さです。2人の芝居だけで脚本の5ページに及ぶことは映像のテンションがもたないのであり得ないことなんですが、1年間がきっちり設計されている大河ドラマなので、虚淵(玄)さんは絶対に折れない。僕はホン打ち合わせが得意だと思っていて、おそらくいちばんきつく言う監督なので、ずいぶんやりあいました。そういった、ずっとしゃべっているような部分がダレないように演出していくことには、ずいぶん苦労しましたよ。
(諸田敏『ライダー 平成 vol.14 仮面ライダーウィザード』より)

 それでは、次に『ゴースト』で「異世界(眼魔の帝国)からの侵略」について説明するシーンを見てみよう。

イーディス「親愛なる大帝アドニス。さらなる力を手に入れる時が来ました。改めてお伺いしたい。あなたの決意を。」
アドニス 「人間は不完全な生き物。決して争いが絶えることはない。だから私は創った。怒りも憎しみも、誰も死ぬことのない世界を。その理想をさらに大きく、広げなくてはならない。それが私の決意だ。全ては…完璧なる世界のために。」
アリア・アデル・アラン「完璧なる世界のために。」
(『ゴースト』第21話「驚異!眼魔の世界!」より)

 短ッ!

 何が良い悪いという話ではなく、『ゴースト』はそういう選択をした、ということなのだ。

 まぁ長谷川圭一の脚本回は説明(長)台詞が多いんだけど(笑)

sebaooo-tatoba-combo.hatenablog.jp

■さて、『ゴースト』最終章感想

2016年9月放送回リスト
・(諸田敏×福田卓郎)第47話「呼応!それぞれの覚悟!」
・(諸田敏×福田卓郎)第48話「終結!悲しみの連鎖!」
・(諸田敏×福田卓郎)第49話「無限!人の力!」
・(金田治×福田卓郎)第50話「未来!繋がる想い!」

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 終盤の「コピーマコト(ドッペルゲンガー)」について触れたい。第42話にて、ディープスペクター眼魂には「ガンマイザーの力を一部利用し、強大な力を得る」というメカニズムがあることが発覚する。第45・46話では「(DS眼魂が)ガンマイザーと繋がっているのであれば、逆に此方から働き掛けられるのでは?」ということで、ガンマイザーを倒すのではなく制御(支配)するというアプローチを試みる(これは英雄・偉人を召喚してガンマイザーに対抗するという、当初の作戦、グレイトフル魂のコンセプトとは真逆よね)というわけで、毎回のように「もう一人の俺」と戦う羽目になるマコト兄ちゃんだが、なぜ制作陣はこんな展開にしたのだろうか?

(一)やることがない

 序盤(2015年内放送)でカノンちゃんが生き返ったから、中盤以降のマコト兄ちゃんは「ケジメをつけること」ぐらいしかやることがなかったのよね。…や、メガウルオウダーの販促のためにネクロムスペクターになったり、ディープスペクター眼魂の販促のために一時退場→即座に復帰したりしてたけど…!

(二)金がかからない

 役者は山本涼介一人二役で済むし、仮面俳優は渡辺淳&JAEの若手で済むし、スーツは既にある(スペクターとディープスペクター。DSを二着作ったのかどうかは知らん)正にエコライダー!

(三)タケルとの対比

 これがこの感想記事の全てと言っても過言ではない。ここから先、超長いよ。マコトの行動原理(戦う動機)は「カノンとタケルのため」と究(極)めて利他的で、もう一人のマコトもマコト・真をコピーするにつれ(そういえば、Vシネマ『スペクター』の発売が決定したね。シンスペクターって何ぞ…?)、徐々に同じ感情(カノンとタケルを守りたい)が芽生えるようになる。だからこそ、第48話では「ダブルマコト兄ちゃん」として共闘することになるし、アデルに倒されたコピー元のマコト(本物)を救おうとするのだ。

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マコト「カノンとタケルを<想う>から<戦う>!」
コピー「ぐぅわかる。俺の代わりにお前が生きろ。」

 ここで、アドニス家の次男・三男のケースも見てみよう。アデルは非常にシンプルで、父親が憎ければ平気で消去するし、世界が憎ければ平然と自分が世界そのものになろうとする。アランはちょっと複雑で、兄との相討ち(自爆)は不発に終わっている。それは、昔は霊体故にデメリット無しで発動できたが、今は生身の肉体故に打てば自分も死んでしまう。フミ婆との一件があったアランは、それ故に躊躇ったのだ。

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アデル「父上も弟アランも<憎い>から<倒す>!」
ガンマイザー「ぐぅわかる。パーフェクトになれ。」

アラン「タケルを<想う>から兄上でも<倒す>!」
アラン「しかし兄上をも<想う><倒せない>!」
ガンマイザー「まぁわかる。命を粗末にできんね。」

 ところが、タケルの場合は話が違ってくるのである。

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タケルよくもアランを!よくも父さんを!お前だけは許さない!
(アデルを攻撃するタケル)
アラン「やめてくれー!私の心は、兄上を助けたいと叫んでいる!」
(アデルへの攻撃を止めるタケル)
アデル「どういうつもりだ?」
タケル「やっとわかった。俺は、アランと、アデルの心を繋ぎたい。家族の思いを繋げたい。
(『ゴースト』第48話「終結!悲しみの連鎖!」より)

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タケル「アデル、お前のやったことは許せない。でも、お前の今の思いは、アランやアリアさんが受け継いでくれる。だから、俺がお前の悲しみを断ち切る!
(『ゴースト』第48話「終結!悲しみの連鎖!」より)

タケル「アデルは<憎い>けどアランやアリアのために<救う>!」
タケル「アデルを<想う>けど人間・眼魔世界のために<倒す>!」
ガンマイザー「わからない。」

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 この「憎いけど救う」というのと「想うけど倒す」というのは相反する矛盾した感情で、人間を観察してきたガンマイザーには理解不能なのだ。だからこそ、彼らはグレートアイザーとなり、人間は、不確定な要素が多すぎる。コントロール不能で、なんと不合理な存在だ。消去だ。という結論に至る。この大切な存在、だが戦う矛盾。相反する2つの感情。というのは福田卓郎が第39・40話で書いたことだね。

sebaooo-tatoba-combo.hatenablog.jp

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 ただ、人間って基本的に<矛盾>した存在なのよね。顕著なのが英雄・偉人で、<義賊>ロビン・フッドビリー・ザ・キッド石川五右衛門)と言えども<賊><賊>だし、<剣豪>坂本龍馬)も<破戒僧>武蔵坊弁慶)も<侍>坂本龍馬)も<戦国武将>織田信長)も<人殺し>である。<王>卑弥呼ツタンカーメン)は民衆を虐げ、アメリカの死刑囚の処刑に電気椅子を導入させたのはエジソンだし、『グリム童話』は「本当は恐(怖)ろしい」三蔵法師さえ<妖怪>孫悟空猪八戒沙悟浄)を使役していたわけで、真にピースフルな英雄・偉人って、ベートーベンやフーディーニくらいなんじゃあないの?ニュートンについては書きたいことがあるので、それは「総括!『仮面ライダーゴースト』」にて触れます)

――今回、「氣志團」のみなさんが「英雄團」として劇場版に出演されることになったわけですが。(中略)翔さんはベートーベン役で。(中略)ジャンルは違っても、同じ「音楽」を追求しているという共通点がありますね。
綾小路 あの方々の素晴らしいところは、たぶん地球が終わる日まで語り継がれる偉人、英雄なんです。そういった存在を演じることができたのは光栄だと思っています。英雄って何なのか、と考えたときに、たとえば戦国の武将たちが思い浮かんだりしますけど、歴史的にそうなっただけで、実際は彼らは命のやりとりをして、天下を獲って、後世に名を残したわけです。生きた時代が違いますし、彼らを否定するつもりは毛頭なく、むしろ憧れも強いわけですが。ただ、音楽家たちは基本的にピースフルな存在でしょう。僕らが演じさせていただく対象としてはピッタリだったと思います。誤解されがちですけど、僕らはこう見えて好戦的なグループではないので……。
綾小路翔『劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間』パンフレットより)

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 アイザージャイアントを倒したのは、ムゲン魂の最後の(七番目の)必殺技ラブボンバー。タケルの母親の言葉、「生まれてきてくれてありがとう」はチーフP高橋一浩が企画当初から「言わせたる!」と温めていた言葉だったそうで。この、「母(妻)が死んだ後」というのは、タケルとアデル、天空寺龍とアドニスで対比させたかったんだろうけど、これに関してはあまり上手くいってなかったかな。断片的には書かれていたんだけど…!最後にグレートアイザーを倒したのがオレ魂のライダーキックだったのはチョーイイネ!サイコ~!『電王』で言うとプラットフォームでラスボスを倒す!みたいな感じですよ。それにしても、オレ魂というネーミングは凄いよな…!

タケル「母さん…。最後まで俺のことを…。父さん、俺、愛されていたんだね。俺…父さんと母さんの子供でよかった。これからもずっと…。俺がここにいることこそ…父さんと母さんの愛の証し。その愛は…俺の中で生きている。愛は、命を生み出す奇跡の力だ。俺は思いの力を信じる。愛の力こそ、人間の無限の可能性そのものだ。人間の思いの力を知らないお前に、本当の思いを、愛の力を教えてやる!」
(『ゴースト』第49話「無限!人の力!」より)

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 タケルのグレートアイへの願い(望み)は「ガンマイザーに消された人々を元に戻してほしい」というもの。眼魔の世界がヘルヘイムの森だとすると、グレートアイは知恵の実(サガラもちょっと入ってる?)相当ねやっぱし。ガンマイザーにしてやられたという負い目もあったのか、お礼としてタケルも生き返らせてもらうことに。正直、主題歌『我ら思う、故に我ら在り』にもあるように、「人は死ぬよ、必ず死ぬ。いつか君も、俺も死ぬんだ。」という通念があるのだから、タケル消滅エンドか、「ゴーストのままみんなを守り続ける」エンドの方が<美しい>と思うのだが、敢えてタケル復活エンドにしたのには、何か意味があるんだろうな。こればかりは、『公式完全読本』のスタッフインタビュー待ちかな。

 まぁ最終話で主人公を退場させると『ウルトラマンダイナ』の時みたいになっちゃうし…。あ!『ダイナ』の最終話の脚本を書いたのは長谷川圭一だったね!(笑)

■<異人>の凝り固まった心を<ほぐす>

アデル「あいつが、あの時私が倒した男の子供だったとは。父親の死に際に何もできずに、泣いてすがっていた、あの子供が…。」
アリア天空寺タケルがうらやましいのではないですか?
アデル「何!?」
アリア「彼は今でも父親を慕い、その心はともに戦っている。そして友や仲間がいる。アデル、今ならやり直せます。父上はあなたのことを…。」
アデル「黙れ!」
アリア「私は世界の一部…。」
アデル「それでいい。私が世界だ。」
(『ゴースト』第47話「呼応!それぞれの覚悟!」より)

 なぜ、深海兄妹は眼魔の世界へ行くことになったのか?西園寺主税は<交換条件>と言っていたが、もしかすると、アドニスは眼魔の帝国に人間の少年少女を呼び込み、自分の娘と息子と交流させ、彼ら彼女らを感化させることで、自身の「完璧な世界」が打ち砕かれることを期待していたのかもしれない。結果、アリアはマコトやカノンに愛情を注ぎ、アランはマコトを<好敵手>と認め友情を感じることになったけど、アデルはマコトを出来の良い<戦闘員>としか見做さなかった。というか、アデルは徹底的に「他人に興味が無い(何も感じていない)」キャラクターとして描かれていて、だからこそ簡単にジャベルに<最後通告>をくだせるし、デミアプロジェクトではイゴールをも自身に取り込もうとするのだ。意外だったのは、てっきりイゴール下剋上を狙っているのかと思いきや、自分を重用してくれたアデルに対し敬意を払っていたことだ。

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真山 アデルはジャベルの直属の上司だけど、使える部下とは思ってないんだろうね。というより、何とも思ってない。
聡太郎 (ボソっと)使い捨て?
真山 (笑)。ただの駒として見ている。山本浩司さん演じる)イゴールはそれなりの成果を挙げているから評価しているけど、ジャベルは失敗が続いたので、21話の最後で、眼魔ウルティマの眼魂を与えた。カプセルで眠っている状態から目覚めさせて生身のジャベルに渡したのは、もう後がないぞ、わかっているな、という意思表示だった。最後通告というか。
磯村 生身で倒されたら、もう復活できないのに、「これで最後だと思え」とか宣告せずに黙って眼魂を渡すところが冷酷。
真山 いや、そもそもアデルは、カプセル内で眠っている眼魔世界の住民に対しては何の感情も持っていないのかも。だとすると、冷酷ともちょっと違うのかな。
真山明大・磯村勇斗・聡太郎『仮面ライダーゴースト キャラクターブック壱 ~逢眼~』より)

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 『ゴースト』の敵キャラクターというのは、みんな主人公やその味方と交流することで感化されていくのよね。だからこそ、第48話でイゴールはアカリとオナリを庇うし、第49話でジャベルはアランを庇うのだ。自分の好きなこと(絵を描くこと)しかしなかったキュビちゃんですら、「カノンちゃんが危ないんだな!」と最終決戦に駆けつけてくれる。個人的に感心したのは、画材眼魔の人間態を出してくれたこと。島本和彦が描く眼魔はみんな同じ顔をしていて、眼魔の帝国では「元の姿のアバターを作れるのは上流階級のみ」という設定があるので、ようやく<個性(自由)>を取り戻せたんだな、と思うと感慨深いものがある。そうか、『ゴースト』は主人公達が<異人>の凝り固まった心を<ほぐす>物語だったんだな。グレートアイが去り、眼魂システムが停止した以上、彼らは苦難の道を歩むのだろうけど、第50話ではちゃんと眼魔の帝国の<未来(課題)>が描かれて一安心。アランは自分たちの世界を<宝物>で満たすべく奮闘するだろうし、それをマコトとカノンが手助けする、という帰結はお美事。…深海兄妹は人間の世界で生きていくのは至難の業だろうし…!

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■「全国の子供たちが喜んでくれればいいんです」

 以下、『ゴースト』のメインライターの御言葉。

――一度登場させたフォームもそれっきりではなく、戦い方に合わせて登場させるのも大変そうですね。
 そうですね。これほど多くの種類を満遍なく活躍させるには、これらに応じた敵やシチュエーションを考えなければなりません。(中略)ただ、僕はこういうことを「苦労」とは思っていません。やはり『仮面ライダー』の仕事は楽しいです。子供の頃に好きだった作品に関わらせてもらえるなんて幸せですよ。また親戚や友達の子供は『ゴースト』を観て喜んでくれているらしくて、子供たちに受け入れてもらえたのは何よりも嬉しいですね。
福田卓郎『宇宙船 vol.151』より)

 以下、『ゴースト』のサブライターの御言葉。

――では、改めて現在参加されている『仮面ライダーゴースト』についてお話をお聞きします。
 (中略)僕はヒーロー番組は「教育番組」だと思っているんですよ。「道徳的であるべき」とまでは言いませんが、親子で安心して観られる作品であってほしいと思っています。たとえばハリウッドのヒーロー物は大人向けの作品が多いですが、東映さんの作品は子供に夢を見せるラインを守っているんですよ。それが色濃く出ているのが今回の『ゴースト』だと思います。命の大切さを一方的に教えるのではなく、「皆で考えましょう」というスタンスが凄く好きで、自分でも書いていて楽しいですよ。
(毛利亘宏『宇宙船 vol.152』より)

 以下、『ゴースト』のアクション監督の御言葉。

 子供的にはあれ(注:変身アイテムや武器)を見たくて番組を観てる部分があるわけじゃないですか。だったらアイテムをカチャカチャってやってるとこだけ撮るより、それをライダーになるためにカッコ良く使いこなして戦う映像を撮れば、子供たちも喜ぶだろうし、気持ち的にライダーに成りきりやすいんじゃないかという思いが常にあるんで。プロデューサーに毎回そこまで見せなくてもいいですよ」みたいに言われても、見せるところは見せてあげたほうが話的に盛り上がるかなって。だから、そこはあまり苦労せずにやってますね。
(宮崎剛『東映ヒーロー仮面俳優列伝』より)

 以下、『ゴースト』の仮面俳優の御言葉。

永徳 俺は俺のパーカーしか着てない……。ビリー・ザ・キッドのパーカーを着てみたい。
渡辺 俺が新しく着るとしたらゴエモンがいいかな。自由に動いていいという勝手なイメージが(笑)。
高岩 自由じゃないけど(笑)。動きをデフォルメしてもOKな感じはある。
渡辺 剣の逆手持ちがいいですよね、スペクターのガンガンハンドじゃできないので。ヒミコもいい。高岩さんの舞が好きで。
高岩 ゴーストのチェンジはおもしろいよ。リョウマの豪快な性格とか、一般的に知られたイメージがある偉人は演じやすい。演じにくいのも特にないね。パーカーの色が違うし、ニュートンの丸い手みたいにわかりやすい特徴もあるから、番組を見てくれている子供たちは、それぞれ違うものだと感じてくれていると思う。
高岩成二渡辺淳・永徳『仮面ライダーゴースト キャラクターブック壱 ~逢眼~』より)

 以下、『ゴースト』のチーフPの御言葉。

――高橋さんから出されたアイデアはありますか?
 まずは変身ベルトですね。(中略)今回のキーアイテムは「なんだかわからないものにしましょう」と提案したんです。いくつかの案が出てきた中で「目玉」というコンセプトになりました。「原点回帰」という意味で、仮面ライダー1号の変身ベルトも目のデザインですからね。ただ、完成したベルトは見た目はシンプルですが、歌や音声、発光のギミックがかなり賑やかなので、ビックリされると思います。上司の白倉(伸一郎)も「高橋、これマジか?」と(笑)。もう、あとは全国の子供たちが喜んでくれればいいんです。喜んでくれるかどうか、今一番心配していますけどね(笑)。
(高橋一浩『宇宙船 vol.150』より)

 よく『ゴースト』は「制作陣が不満を抱えているに違いない!」と言われるけど、決してそんなことはなく、寧ろ率先してやる面子をチーフP高橋一浩は揃えたのだ。俺は、明確な意志(意図)を持ってスタッフが「今回の番組は100%子供向けに制作する!」と決めたのならば、それで良いと思っている。

sebaooo-tatoba-combo.hatenablog.jp

 まぁ長谷川圭一は不満だらけだっただろうけど(笑)

■『ゴースト』は平成二期の『電王』に、

 なれなかったね!(キッパリ)

 「なんかセバオーズ『ゴースト』に対して甘々じゃね!?」と思われたかもしれないけど、今回は「批判めいたことは書かない」というスタンスで書いたんよ…!『エグゼイド』はどうなるかはわからない。チーフPが大森敬仁だしなぁ~!(←ゲス顔)

 以上、『仮面ライダーゴースト』最終話感想でした。賛同・反対意見、お待ちしております。

■追記(2016/12/23)

高橋 確かに今回は子供に向けて作ろうという意識がこれまでより強くて、実際にファイナルステージの客層を見ても家族連れがほとんどでした。だから正しく子供にウケてたということなんですが、逆に言えば大人のお客さんが少なかったんですよね。女性ファンも、磯村(勇斗)と山本(涼介)に少しいるのかなという印象で。眼魂の玩具はすごく売れたものの、大人の層が薄いのでイベントとかプレミアム商品は思ったようにはいきませんでした。だから、そこは良し悪しなんでしょうね。
(高橋一浩『仮面ライダーゴースト公式完全読本』より)

諸田 (中略)最初はもっと暗い、というかもっと本質に迫る、人が死ぬとか生きるとかいうことを絡めて、最初の『仮面ライダー』や『仮面ライダークウガ』のような、本来的なライダー像に則ったタッチにちょっと戻したいなと考えていたんですが、紆余曲折あって明るい作品になりました。メインの視聴者は未就学児童なんで当たり前といえば当たり前だけど……ただ、仮面ライダー』で視聴率を取りたいという意味では、子供ばかりを対象にしてると難しいんですよ。玩具を売るならターゲットが明確に子供だけど、視聴率を取りたいのなら大人にも観てもらわなきゃいけないので。そういう意味では葛藤もありつつ、今の形になった、と。
(諸田敏『仮面ライダーゴースト公式完全読本』より)

佛田 (中略)今年も眼魂というベルト周りの変身アイテムを集めることで登場する各パーカーゴーストをCGでやらせてもらって。子供たちにしてみればパーカーをチェンジすることで姿を変えるライダーに思い入れて、それでグッズを買ってくれるわけでしょ。『鎧武/ガイム』のときも、それでフィギュアがすごく売れてたっていうし、今回かなり売れたという眼魂にしても、あれをカチャカチャやることで出てくるのがパーカーなわけで。これもいつも言うことだけど、グッズが売れるということは、そのキャラクターの魅力がちゃんと子供に届いてるということですから、そこはやり甲斐がありましたね。
佛田洋仮面ライダーゴースト公式完全読本』より)

 なるほど、ざっくり言うと、「玩具売上が高い=子供に人気がある」「視聴率が高い=大人にも人気がある」、そして「大人の人気が高ければ、イベントやプレミアム商品の売上がプラスされる」ということだな。もう一つ、人気を計(測)る指標に白倉伸一郎「映画(劇場版)の興行収入」を挙げていたけれど。理想は、「子供にも大人にも人気がある『仮面ライダー』」なんだろうけど、あちらが立てばこちらが立たず、子供向けに振り切れば大人が離れるし、逆もまた然り。そこは本当に、<良し悪し>なんだろうと思う。

[了]

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