千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

『100の眼魂とゴースト運命の瞬間』感想

 『100の眼魂とゴースト運命の瞬間』(以下、『百目鬼』)の感想です。以下、ネタバレ注意。

 『in Magic Land』が宇都宮孝明版『パラダイスロスト』だとすると、百目鬼』は高橋一浩版『AtoZ』と表現するのが一番相応しいかもしれない(26個のT2メモリで風都民をNEVER化≒究極の眼魂で全人類をゴースト化)『百目鬼』は他の平成二期の夏映画との共通点も多い。偉人と協力し合って戦ったり(『将軍』の徳川吉宗≒100人の英雄)、宇宙から厄災が訪れようとしたり(『みんキタ』の衛星兵器XVⅡ≒巨大な眼魂)、作品のコンセプトをフィーチャーした異世界に飛ばされたり(『in Magic Land』の魔法の国≒英雄の村)、対になる存在と戦ったり(『サッカー』のブラックジンバー≒ダークゴースト)…!個人的に、劇場版のホンはメインライターが書き、それをパイロット監督が撮るべきと思っているので(というか、そうあってほしい)『百目鬼』の「脚本:福田卓郎、監督:諸田敏」という組み合わせは地味に嬉しい(笑)

■「だからみんな、死んでしまえばいいのに…」

 諸田敏曰く『百目鬼』は「諸悪の根源は仙人なのでは?」という点にもスポットを当てたそうで、よくよく考えると、仙人の目的はグレートアイの力で眼魔の世界を元に戻すこと(誤算は第01話のタケルの死)で、タケルの生死は二の次だったのよね。ゴーストドライバーと15個の英雄眼魂はグレートアイにアクセスするためのツールで、仙人は「集めれば生き返れる」という名目でタケルに集めさせたと。そして…。

仙人 「すまん。わしが悪かった。」
アカリ「謝らなくていいから教えて!どうすればタケルは消えずに済むの?」
仙人 「あのね…最初の、99日の、タイムリミットが切れた時、もうわしの力では、どうにもできない領域に、至ってしまったんじゃ。」
アカリ「わしの力では…。ねえ、もしかして、最初の99日の時は、おっちゃんが生き返らせることができたってこと?」
仙人 「うん…そうじゃ。」
アカリ「そんな…。」
仙人 「今のタケルが、どんな状態なのか、果たして、生き返ることができるのかどうか。全くわからんのじゃ。本当に…本当にすまん!」
(『ゴースト』第42話「仰天!仙人の真実!」より)

 この、「おっちゃん(仙人)が生き返らせることができた」というのが、グレートアイの力によるものなのか、眼魔の世界の冥術学の力によるものなのかは定かではないが、いくら天空寺龍が「10年後のタケルに」と過去にブランク眼魂を未来に送っていたとはいえ、騙していた事実は変わりないわけで、うん、これはアカリは怒ってもええわ…!ここでちょっと拍子抜けしたのは、タケルが意外と死(消滅)に対して無頓着というか、生への執着が無かったということだ。

タケル「前に、五十嵐さんの過去の記憶を見た時、その時のおっちゃんは、父さん達と同じ顔をしていた。この世界を守りたい。その顔に嘘はなかった。(中略)おっちゃんのおかげで、俺はいろいろな人の思いを知り、繋がることができた。俺はあなたに、感謝しています。」
(『ゴースト』第42話「仰天!仙人の真実!」より)

 『百目鬼』の臍は、敵たるアルゴス(アドニス家の長男で、アランの兄)がタケルと同じ境遇(仙人にベルトを渡され、生き返るために、英雄の眼魂を集める)でありながら、仙人の思惑(自分が利用されている、騙されている)ことに気付いてしまい、ダークサイドに堕ちてしまったという点だ。マコトの父親、深海大悟はアルゴスにとってのユルセン的ポジションだったわけね。大悟トーサン、マコトと同じく口数少ない(大事なことを伝えない)からな~!(流石は親子)そりゃあアルゴスも闇堕ちしますわ。ところで、アドニス一家はかれこれ百年以上生きている(即ち、アルゴスは百年以上前には死んでいる?)わけで、アルゴス&深海大悟が英雄眼魂収集にいそしんでいたのは何時頃だったんだろうね?(大悟トーサンは十年前には死んでいたっぽいし)あと、アルゴスには「99日のリミット」は無いのかしら?この辺、地味にボカされてるのよな。

■歌舞伎ウキウキ!早変わり!

 平成仮面ライダーの監督の中では、石田秀範に並んで戦闘シーンと玩具販促に興味が無い諸田敏だが、『百目鬼』では「どうしちゃったの!?」というくらい「これでもか!これでもか!」とパーカーチェンジを見(魅)せつける。カノンちゃんの誕生日の夜に襲撃するダークネクロムレッド・ブルー・イエロー(しかもイグアナ付き!)、応戦するスペクターフーディーニ魂とネクロムグリム魂、ゴーストオレ魂の前にはダークゴーストが。英雄の村でも、ダクロム赤・青・黄はそれぞれベンケイ魂、ビリー・ザ・キッド魂、ノブナガ魂に変身。ダークゴーストもナポレオン魂へ。村の外の海岸ではゼロスペクターとディープスペクターが激突。宮本武蔵卑弥呼石川五右衛門ロビン・フッドも助太刀。タケルとアルゴスは一騎討ち。ぶつかり合う闘魂ムサシ&ヒミコ魂と、ピタゴラス&一休魂。イアン・ムーア演じるダーウィンもパーカーに。終盤、第01話で消えたタケルの肉体は「仙人の塔」に保管されていたことが発覚(仙人はこれも隠してたのか!酷い!)「特別な力を持つ」タケルの肉体は100の眼魂と合体し「究極の眼魂」に変化、アルゴス仮面ライダーエクストリーマー」に変身。タケルも「ムゲン魂」に変身。<極限>VS<無限>、そして最終決戦へ…。うん、濃いw

 これを実現可能にしたのは「フォームチェンジ=パーカー着脱」にしたスタッフのアイデアよな。

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■「ご飯が食べたいんだ!」

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アラン「貴様に、そして兄上にも裏切られた私を笑いに来たのか?」
マコト「お前が俺達を助けてくれた。今度は、俺がお前を助ける番だ。そろそろ、これが必要なんじゃないか?(サンドイッチと牛乳を渡す)」
アラン「誰が施しなど…!」
マコト「無理するな。生身の体だ。」
アラン「はあ…。こんな不便なものが、お前達が望むものなのか?」
マコト「今に、お前にもわかる。」
(『ゴースト』第23話「入魂!デッカい眼魂!」より)

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カノン「アラン様。」
アラン「いたのか。」
カノン「アラン様が、ここに来るんじゃないかと思って。」
フミ婆「なんだ、やっぱりデートだったのかい。」
アラン「デートとは何だ?」
カノン「フミ婆、そんなんじゃなくて…。」
フミ婆「ハハハ…照れるな照れるな。一緒にいて楽しいんだろ?ん?ホッとするんだろ?」
アラン「私を愚弄する気か?」
フミ婆「ホホホ…相変わらず面白いねえ。自分の心に正直になりなよ。フフフ…。」
アラン「心…。心など不要のはず…。」
フミ婆「ほら、たこ焼き食べなよ。」
アラン「たこ焼き…!」
(『ゴースト』第23話「入魂!デッカい眼魂!」より)

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ジャベル「ああっ、そのままそのまま。ささ、これ(アカリの発明品)を貼れば体調も良くなるはず。…よいしょ!」
ジャベル「なぜ…助ける?」
オナリ 「慈悲こそ仏の教え。ほら、腹が空いているのでしょう?(おにぎりを)お食べなさいな。美味しいですぞ。」
ジャベル「…美味い。…こんなことをして、後悔するぞ。」
オナリ 「ハハハ…!まあ、そう突っ張らずに。拙僧も昔は色々ありましたが、人の優しさに触れ、変わったりするものですよ。」
(『ゴースト』第27話「決死!覚悟の潜入!」より)

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オナリ 「やっと目覚めましたな。心配しましたぞ。」
ジャベル「情けない…。」
オナリ 「ジャベル殿?」
ジャベル「私は…弱くなった。強さだけが私を私たらしめていたはずなのだ。それなのに…!私は、生きている意味すらもうわからなくなってしまった。」
(腹が鳴るジャベル。)
オナリ 「体は正直なもの。お腹が鳴るのは、体が生きたいと言っている証拠でございますぞ。」
(『ゴースト』第38話「復活!英雄の魂!」より)

 アルゴスはタケルに「ゴーストになれば睡眠も食事も不要、英雄の村の偉人達のように永遠の時を過ごせる」と説き、「みんながゴーストになる、お前と同じ存在になるのは嬉しくはないのか?」と問う。「眼魔の世界を人間の世界と同じにしたい」と願うアランに対しては、「その理想を実現するのにどれだけの時間がかかる?」と問う(それは即ち、「ゴーストになれば時間を気にせずに済む」と説いているのと同じ)最初に言い返せなかったタケルが、最後に導出した反論が「俺はみんなと、ご飯が食べたいんだ!」というのはベタだけど唸った。平成一期で井上敏樹が再三再四描いてきたことだし(笑)エクストリーマーを倒す(究極の眼魂を破壊する)ということは、タケルの肉体の消滅、完全なる死を意味するが、「みんながご飯を食べられなくなるのなら」と、躊躇わずゴッドオメガドライブムゲンを放てるのがタケルという男なのだ。…正直、テレビ本編との繋がりもあるし、「どうせまた復活すんべや?」と思ってたし、観たら案の定だったけど、第12話で龍さんがタケルの命を繋ぎとめた時と同じように、今度は100人の英雄・偉人が力を貸してくれたと考えると意外としっくり来た。というか、俺は諸田敏が撮った仮面ライダーの映画が見たかったので、全てを許した(笑)そうか、諸田さんは時間と金を与えられると、<ロケーション>(選定と移動)にそれらを注ぎ込むんだな。

 これ、『ゴースト』好きな人が観たら、ますます好きになるんじゃあないかしら?良かったですよとっても。

■追記(2016/12/23)

高橋●実は第1話でタケルは死んでいなかったんですよ。眼魔世界の技術は科学の延長線上にあるので、本当に死んでしまった人間は生き返らすことができないんです。仙人は瀕死のタケルの魂を眼魂に入れて、肉体は別の場所に保管していたんですよ。第34話に最初から眼魂にタケルの魂を入れるはずだったという台詞がありましたよね。だから本当は第12話でタケルが一度消える前に、仙人がタケルの魂を眼魂から肉体に戻していればマコトやアランのように復活できたんですよ。
(高橋一浩『宇宙船 vol.154』より)

 タケルを「おっちゃん(仙人)が生き返らせることができた」と言うけどどうやって?のアンサーがこれである。いや、劇中で説明しないと解からんよ…!第34話の仙人の台詞は下記感想記事参照。

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[了]

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