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千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

半身と亜種と超弦と具足と外套

11_W 12_OOO 13_フォーゼ 15_鎧武 17_ゴースト 91_スタッフ

 仮面俳優とアクション監督はツライよというハナシ。

■ダブルのボディ&ソウルはベリーハード

――完成したデザインは、仮面ライダー1号の現代風解釈ともとれますね。(中略)一方で、スーツ造形からフィードバックしたデザインも試みたとか。
小林 むしろ、当時は全く新しいスーツを作るということにウエイトが置かれていて、皆のテンションもそっちに向いていました。当初は高岩成二さんの全身型を作って、全身一体型のフルスーツを作れないか、という話をしていたんです。塚田さんからもスーツを着込んでいるように見えないものという要望が出ていて、ではどういうディティールにしたら、それらしく見えるかというのを長い間模索していました。
(小林大祐『仮面ライダーW特写写真集KIRIFUDA』より)

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 この、『W』の「全く新しいスーツを作る」「スーツを着込んでいるように見えないもの」というコンセプトは全うされたが、高岩成二が初回の撮影会で着込んだスーツは硬過ぎて全く動けなかったようで、スーツを裁断し、皺(シワ)が目立たないよう蛇腹を入れることにしたという。現在、仮面ライダーのスーツは演じる仮面俳優の全身を型取りしたものを基本に制作されているが、ダブルの場合はその寸法を更に追い込む、所謂「遊び」を極力無くしているため、高岩成二曰く従来のスーツに比べて非常にタイトだという。加えて、ダブルのスーツはメタリック塗装の特性上、経年劣化により硬化し、アップ用のFRP製のパーツを纏うと、ほとんど身動きが取れない。一番動き辛かったのは「サイクロンジョーカーエクストリーム」だったそうで(原因は勿論、真ん中の「クリスタルサーバー」)、次回作の『OOO』では従来通りのスーツが採用されることになる。

■オーズの亜種は119種類!

 仮面ライダーのデザインは簡単に言うと、横分割と縦分割です。それでいくとオーズは横、W(ダブル)は縦、そして1号は横分割ということになります。一見むずかしそうであっても、この単純な方法論が、ここまで受け入れられてきた原因なのかもしれませんね。
(早瀬マサト『POPEYE特別編集 仮面ライダー the40th コレクション』より)

 ダブルの基本形態は、右側がソウルサイド(サイクロン・ヒート・ルナ)、左側はボディサイド(ジョーカー・メタル・トリガー)と呼ばれ、初期段階でも3×3=9種類の姿に変身できる。『W』のハーフチェンジ(2分割)の成功を受け、『OOO』は頭(ヘッド)と腕(アーム)と脚(レッグ)の3分割式となったのだが…!

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 オーズはヘッドとアームとレッグがそれぞれ5種類ずつ存在するため、5×5×5=125から、コンボ数の6(タトバ・ガタキリバ・ラトラーター・サゴーゾ・タジャドル・シャウタ)を引いて、亜種は119種類存在する。ここで現場を悩ませたのは、オーズは「オーラングサークルからラインドライブが伸びている」という設定で、故にコンボチェンジに限らず、亜種形態に変身する際も、マスクやパーツを取り換えるだけでなく、アンダーウェアまでも着替えなければならないのだ(例えば、トラアームの下に着るウェアと、カマキリアームのそれは違う)もし、虎のウェアを運び忘れたら、タトバコンボには変身できないことに…!

――(中略)『オーズ/OOO』の1年間で今思い出しても本当に大変だったなぁと思うことは?
高岩 特に大変ということはなかったですけど、メダルが変わるたびに腕だけとか脚だけとか頭だけ変わるのが……(笑)。
――あぁー、特に今年は亜種の数がハンパなかったですしね(笑)。
高岩 そう、亜種の数がなぁ……(しみじみ)。終盤の舞原組(41・42話)で、それまで出てなかった亜種が5パターン出てきたときには、だいぶイラッときてました(一同笑)。
――もう勘弁してと(笑)
高岩 でも、舞原(賢三)さんも久しぶりのライダーの現場でホント楽しそうでしたね。とにかく撮影のペースが早い早い!僕も楽しかったです。
高岩成二仮面ライダーオーズ / OOO 公式読本 ~OOO INFINITY~』より)

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 流石の高岩成二も、ハンパない亜種の数にはイラッ☆

■宮崎剛の憂鬱~スイッチとステイツ~

長谷川 (中略)あと、ジャイアントフットの足跡がすごかったですね!最初に観たとき、てっきりCGかと思ったんですけど、なんでも実際に掘られたらしくてビックリしました。パッとすごい画が目に入ると、すぐに「CGなのかな?」って思っちゃうのはよくないね(笑)。スイッチ一つ表現するのに、現場はセッティングに3時間くらいかかるらしくて、これはもう大変なリスクだと思うんですけど、スイッチは『フォーゼ』の売りですからね。
長谷川圭一仮面ライダーフォーゼ公式読本 FOURZE GRADUATION』より)

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 これは山口恭平が撮った第23話「白・鳥・同・盟」の話で、思い返すと、第20話「超・絶・磁・力」(石田秀範)のフードロイド「ホルワンコフ」や、第25話「卒・業・後・髪」(諸田敏)の「スコップ」モジュールの時も、現場スタッフはせっせと穴を掘っていたんだろうなぁ…!スイッチだけでなく、ステイツチェンジも大変だったとか。

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 先ずは「エレキステイツ」。ビリーザロッドはコンセントに繋いだコードが抜けやすく、攻撃時に絶対合成が必要になってくる。そのキンキラキンなスーツも厄介で、カメラが反射して映ったり、クロマキーバックで合成する時も、背景の緑が反射してしまう。グリーンバックの反射に関しては、日本映像クリエイティブが色々な手法で抜いていたとか…。ちなみに、ベースステイツの白も緑が反射しやすかったらしい。

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 お次は「マグネットステイツ」。こいつもギンギラギンなスーツのためエレキと同様の問題(反射)が発生。フォルム的に飛んだり跳ねたりするのに向かず、顔だけ横に向いたりできないため、じっとしているか、身体ごと向きを変えるしかなく、微妙な芝居ができない。リミットブレイク(ライダー超電磁ボンバー)も、両肩の磁石が外れ、合体してビームを撃つという演出のため合成必須で、アクション監督の宮崎剛曰く、「『てれびくん』DVDでやった、磁石(のプロップ)で直接叩くというのが一番良かったかな(笑)」とのこと。

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 最後が「コズミックステイツ」。バリズンソードのプロップは、「開きはするけど閉まらない」という代物で(重過ぎる故にワイヤーで引っ張っていて、それを緩めると自重で開くものの、逆に引っ張って閉めようとするとワイヤーが切れてしまう)、閉じるシーンは編集で開いた映像をリバースしていたとか(笑)また、玩具でも再現できる「外装を展開し終えると剣先が伸びる」というギミックは、プロップには搭載されていないため、1カット分合成が増えてしまう。「何かするたびに合成が増えていく必殺フォームなんですよ」とは宮崎剛の談。

――ヒーローが強くなればなるほど合成が必要になる局面は増えていくわけじゃないですか。でも、合成カット数は一定なんですよね。
宮崎 それをどう処理するかが一番大変な作業だったりするんです(笑)あれもこれも合成ということもできないから、まず頭の中で整理したうえでアクションのペース配分を考えていかなきゃいけない。だから、コズミックとか出るともう……大変なんです(しみじみ)。しかも、いきなりそれが出てくるわけじゃないですよね。相手側がスイッチを押せば変身するし、弦太朗も変身するし、流星も変身するし、メテオなんか青い球になっちゃうし(笑)。
(宮崎剛『仮面ライダーフォーゼ公式読本 FOURZE GRADUATION』より)

■アーマーの鎧武とパーカーのゴースト

 だから、『鎧武』の「アームズチェンジ」や、『ゴースト』の「ゴーストチェンジ」は、『OOO』や『フォーゼ』の反省(現場からのフィードバック)から生み出されたものなのかもしれない。尤も、『鎧武』のアーマーはそれ自体が重く、『ゴースト』はパーカー自体は軽いものの、電飾が仕込まれているためスーツが重い、という問題があるのだが。「平成仮面ライダー」スタッフの試行錯誤はまだまだ続くのだ。

[了]

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