千倍王鷹虎蝗合成獣

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『小説 仮面ライダードライブ マッハサーガ』感想

 『小説 仮面ライダードライブ マッハサーガ』の感想です。以下、ネタバレ注意。

■この男、平成二期のサブライター!

 「平成ウルトラマン」シリーズの功労者、長谷川圭一。『ダイナ』でメインライター、『ネクサス』でシリーズ構成を務め、劇場版の脚本も多数手掛ける氏も、「平成仮面ライダー」シリーズ(の、平成二期)ではサブに徹している。『W』『フォーゼ』『ドライブ』と、三条陸とタッグを組むことの多い氏だが、どちらかと言うとの平成一期(特に、クウガ・アギト・龍騎・555)方が好みで、塚田英明の作風についてはこんな発言もしている。

(1)塚田P作品は現実味が薄く箱庭的な世界観である。

長谷川 (中略)自分が書くにあたって、この学園ものというのはちょっと難しいな、と。学校で怪人の事件が毎週起きてるのに警察の介入とか親の対応がない……たとえば、戦隊ならそういうリアリティの世界観でもいいんだけど、平成ライダーでそれはどうなんだろう、みたいな。
――『W(ダブル)』の風都以上に箱庭感が強調された世界観というか。
長谷川 そうそう、『漂流教室』じゃないけど、学校の外に出たら砂漠なんじゃないのかっていう(笑)。
長谷川圭一仮面ライダーフォーゼ公式読本 FOURZE GRADUATION』より)

(2)塚田P作品は戦闘シーンが緩く命懸けっぽくない。

――ラストワンに到達するとスイッチャーの精神と肉体は分離させられるから、いわゆる爆死はしないものの……。
長谷川 うん、『W』のときのメモリブレイクと一緒ですよね。死にはしない。ただ、それ以前のライダー怪人だったら、とりあえず爆発すれば死ぬってことになってたじゃないですか。だから、緩いといえば緩いんですよね。そこが塚田イズムなのかもしれないけど、命懸けの闘いっぽくないというか、生徒同士の殴り合いの延長になりかねない危険性もあったと思うんです。
長谷川圭一仮面ライダーフォーゼ公式読本 FOURZE GRADUATION』より)

(3)塚田P作品は少年漫画的ご都合主義に溢れている。

――これは中島さんの作風だと思うんですが、わりと気持ちでなんとかなっちゃう世界観じゃないですか。ロジックがないわけではないんだけど、下手するとご都合主義とも捉えられかねないので、そこのさじ加減は難しかったのでは。
長谷川 中島さんというよりも、むしろ塚田イズムなのかも。『W』もロジックで作られているように見えて、最後は翔太郎の気合いみたいなところがあったし、そういう真っ直ぐな感じは嫌いじゃないですよ。『少年ジャンプ』的な王道路線って言うんですかね。ヒーロー作品の場合、そっちのほうが観てて気持ちいいんじゃないかな。
長谷川圭一仮面ライダーフォーゼ公式読本 FOURZE GRADUATION』より)

 すっごい冷めてる(笑)…あと、上記の取材・構成を担当した「山崎優」氏、平成二期(or中島かずき)アンチなのかしら…?『ウルトラマン』は基本的に<(1)光の巨人><(2)怪獣><(3)科特隊>で構成され、「光の巨人や科特隊が怪獣を倒す」という世界観や設定に説得力を持たせる必要がある。長谷川圭一はそれが身に沁みているため、余計に気になるのかもしれない。「じゃあ『ギンガ』はどうなんだ?」って感じだけど…!

 『W』『フォーゼ』『ドライブ』における長谷川圭一脚本回は、やたらダークだったり奇を衒っていることが多い。三条陸<ポジ(王道)>とするならば長谷川圭一<ネガ(邪道)>だ。

◆『W』(全49話中20話担当)

第11・12話:バイラス・ドーパント
第13・14話:バイオレンス・ドーパント
第17・18話:バード・ドーパント
第21・22話:トライセラトップスドーパント
第25・26話:パペティアー・ドーパント
第29・30話:ナイトメア・ドーパント
第35・36話:ケツァルコアトルスドーパント
第37・38話:ホッパー・ドーパント
第41・42話:ジュエル・ドーパント
第43・44話:オールド・ドーパント

◆『フォーゼ』(全48話中8話担当)

第23・24話:キグナス・ゾディアーツ回
第29・30話:ムスカ・ゾディアーツ回
第35・36話:カプリコーン・ゾディアーツ回
第39・40話:タウラス・ゾディアーツ回

◆『ドライブ』(全48話中14話担当)

第07・08話:スクーパーロイミュード
第14・15話:ロイミュード069・096回
第18・19話:ジャッジロイミュード
第27・28話:シーカーロイミュード
第31・32話:フリーズロイミュード
第35・36話:ブレン・シーフロイミュード
第41・42話:メディック・ゴルドドライブ回

 『W』のバードや『フォーゼ』のムスカの話のように、メモリやスイッチの<毒>(“麻薬”の暗喩)に侵される若者を描いたり、『フォーゼ』のキグナスや『ドライブ』のジャッジの話のように、<正義の暴走>という悪を描いたりと、毎回ど真ん中ストレートを放る三条陸に対し、変化球や魔球を好むのが長谷川圭一なのだ。それ故に、三条陸ファンからは嫌われてる気がする(笑)

 また、他の脚本家の話や、過去の設定を<拾う>のも特徴で(『W』のふうとくんをデザインしたのは尻彦さん、というアイデアを出したのは何を隠そう長谷川圭一なのだ)、直近だと『ゴースト』第25・26話でその手腕を感じられたのではなかろうか。そんな長谷川圭一が監修した『マッハサーガ』の出来は如何に!?

■これがホントの『マッハGoGoGo(555)』!

 2017年12月、5人の囚人が脱獄した。浅村誠(ジャッジ・タイムの経営者、宇津木壮)、坂木光一(ストーカー)、多賀始(警官殺し(コップキラー))、根岸逸郎(銀行強盗)、そして泊英介を射殺した男、仁良光秀。彼らを扇動するのは、犯罪心理学者かつネオシェードの模倣犯西堀光也。彼をコピーしたロイミュードは005で、娘の西堀令子と融合進化したロイミュードが050、そして小説版で西堀光也に割り振られた囚人番号が500、と桁が繰り上がっていくのが上手い。脱獄犯達に共通するのは、泊進ノ介/仮面ライダードライブに<怨み>を抱えていること。全員が<復讐鬼(リベンジャー)>なのだ。彼らは犯行予告をクイズ形式で出題し、緊急招集された特状課を煽る。内容は、全て機械生命体犯罪の模倣(コピー)だ。

(1)イブの夜。儀式の始まり。機械生命体。共感した五人の同士。それはだ~れだ?
(2)マザーグース。口笛。スクープ。落ち損ねたロンドン橋。それ、ど~こだ?
(3)幸せな家族。握手。露わになる本性。争い。弟。この事件ってな~んだ?
(4)第一問!金ぴか悪人。密室。どんよりー。頭ポコーン、この事件な~んだ?イエイ!第二問!どこかの信用金庫、用心しろYO!どんよりするぜ、だって俺たちどんより強盗団!イエーイ!
(5)目撃者の少女。四度目の恐怖。隠された聖なる炎。狙われてるのはだ~れだ?

 これらに所縁のある場所(舘北地区、リオン総合スタジアム、目台集合団地、塚信用金庫、泉高校)の頭文字をアルファベット(ヘボン式)で並べると“FONTR”(フォントアール)になるのが小説版の臍。…そうなんだよな…!やはり第5話こそが、『ドライブ』を一番象徴するエピソードなんだよな。小説版でも、沢神りんなにそれを代弁させている。

 「クリムと出会った時、彼がよく言ってた。科学は使う人間次第で神の道具にも悪魔の道具にもなる。だからこそ使う人間のモラル……心の形が試される。それが自分にとって永遠のテーマであり、永遠の十字架だって(中略)天才科学者なんて呼ばれる人間は大なり小なりマッドだからね。蛮野もクリムもそうだった。あの二人は科学の進歩という魅惑の海に投げ込まれたコインの裏と表。そして彼らが作り出したロイミュードもまた、人間とそういう関係だった。表と裏。光と影。愛と憎しみ。だから多くの人間たちが闇の部分で、負の感情でロイミュードと結びついてしまった」
(大森敬仁『小説 仮面ライダードライブ マッハサーガ』より)

 小説版でもう一つ象徴的なのが<Vサイン>で、これ一つで<平和><侮辱><勝利(ビクトリー)>を表現していて、…何が言いたいかというと『マッハサーガ』は5(V)に溢れているなぁということです。剛は“Go”だしね。GoGoGo~!(雑!)

仮面ライダーは人間とロイミュードを一体にさせることで完成する!

 長谷川圭一は自身がメインライターを務める時は主人公に試練を与えることが多い。しかしその一方で、まるで艱難辛苦を乗り越えたことを称えるかのように、最後の最後で主人公に超常的なチカラを与えることもあるのだ。

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 正直、『ドライブ』第46話のチェイサーマッハは今一ピンと来なかったんだけど、ドライブシステム(泊進ノ介×クリム・スタインベルト)や融合進化態、ゴルドドライブ(蛮野天十郎×006)などと対になっている、と考えるとしっくり来た。超デッドヒートマッハによって。

 『マッハサーガ』、悪くないんじゃあないでしょうか。全然期待してなかったけど(笑)

■蛇足:愛と復讐のマッハ

 「この写真のこの場所はアメリカのサウス・ダコタにあるウンデッド・ニーの丘だ」
 「ウンデッド・ニー……?」
 「ああ。昔、ネイティブ・アメリカンの虐殺が行われた場所。なんだか異様なパワー、感じるよな……」
(中略)
 「大量虐殺の場所の写真?そんな写真持ち歩いてるなんて、私なんかよりあなたの方がよっぽど異常じゃない?それにこっちの別の写真、虐殺の場所であなたがピースサイン作ってる!どうかしてる!」
(中略)
 「ちなみに、このサインはピースじゃない」
 「え……?」
 「よく見てくれ。掌が俺の方を向いているだろ。これは相手を侮辱するサインなんだ」
 「イーサンは親友でしょ?なのに、侮辱してるって――?」
 「イーサンに頼まれたんだよ。この場所で、モンゴロイドのお前が白人の俺に対して怒っている写真を撮りたい。だからこの写真は意味があるんだって。ワケわかんねぇだろ?」
 白人たちに虐殺されたネイティブ・アメリカンの怒りを、あなたに表現させた写真ってこと?
 「そう。変わった奴だろ?」
(大森敬仁『小説 仮面ライダードライブ マッハサーガ』より)

 これは、詩島剛と西堀令子の掛け合いの抜粋である。まさか、彼女がヒロインになるとは思わなんだ…!小説版『フォーゼ』のヒロイン(園ちゃん先生)くらいビックリした(笑)イーサンとはアメリカでの剛の親友で、彼にはブライアンというネイティブ・アメリカンの幼馴染みがいた。米国の先住民は、その迫害の歴史のせいで恵まれない環境で生まれ育つケースが多く、ブライアンも例外ではなかった。そしてアルコール中毒の両親に端を発する犯罪に巻き込まれ、ブライアンは命を落としてしまう。ネイティブ・アメリカンは自然とのつながりが深い。彼らの自然を移民である白人が見下し、そして奪い取った。でも、自然と一緒にいる時、彼らほど強い人間を俺は知らないそう語るイーサンは、ブライアンの代わりに自然を見て回る旅に出て、その際に剛と出会ったのだ。

 ところが、そんなイーサンが殺される事件が起こる。命を奪ったのは、かのガンマンロイミュードロイミュード018。なんだけど…。そこで剛が取った行動が、イーサンが忌み嫌う異種族の<撲滅>ってどうなのよ?そこが、唯一引っ掛かった所かな。けど、そう剛に突っ込んだら、こう返されそうだな…!

 「いいか…セバオーズ…これはヤツらと俺ひとりの問題だ。『復讐』なんかをして失った友が戻るわけではないと知ったフウな事を言う者もいるだろう。許すことが大切なんだという者もいる。だが、自分の親友を射殺されてその事を無理矢理忘れて生活するなんて人生は俺はまっぴらごめんだし…俺はその覚悟をして来た!!『復讐』とは自分の運命への決着をつけるためにあるッ!」

 …俺が捻くれてるだけなのかな?異論・反論ありましたら是非コメントしてください。

■追記(2016/04/28)

 彼の復讐心に関してですが、今回の小説はそれが物語の肝だったのかもしれませんね。p267あたりで、自らのこれまでの行いを振り返った上で憎しみを乗り越えた先に、戦う本当の意味を見つけなければならない。と独白していますし。次のVシネマ第二弾で、人間的に成長した彼がどんな活躍を見せてくれるのか楽しみではあります。

 ほ、本当だ!!p267に書いてあるッ!俺の読み込みが浅かっただけじゃんか…〇| ̄|_

 俺にはもうわかっている。
 イーサンを殺された憎しみをロイミュードにぶつけていた。
 ロイミュードへの憎しみをダチであるチェイスに向け、そして奴を失った。
 そしてチェイスを殺された憎しみで自分の父親の命を絶った。
 だがそのままではクリムとの約束は永遠に果たせない。
 人間は成長しなければならない。
 憎しみを乗り越えた先に、戦う本当の意味を見つけなければならない。
 俺がここに持ってきたのは、仮面ライダーとして戦う理由、それは――人は変われるという、可能性だ。
(大森敬仁『小説 仮面ライダードライブ マッハサーガ』より)

 そうだ剛。お前自身を信じろ。今のお前の姿を、心をよく見ろ!そしてチェイスの声が剛の心に谺(こだま)して、前述の超デッドヒートマッハに変身するのである。そうか、『マッハサーガ』は<怪物の子供>かつ<復讐鬼(リベンジャー)>だった剛が、前に進む、走り出すまでの物語だったんだな。

[了]

※このブログはコメント大歓迎です。『ドライブ』は批判と称賛、両方の記事(対決と総括)をUPしてますので、忌憚なきご意見をお待ちしております。

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