千倍王鷹虎蝗合成獣

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『仮面ライダーゴースト』序盤評

 『ゴースト』の年内(2015年分)放送が終わったので、序盤評をば。第01話「開眼!俺!」 から、第12話「壮絶!男の覚悟!」 までの所感です。…大晦日になってしまった!

■『ゴースト』=『ウィザード』×『鎧武』× γ(ガンマ)

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 序盤の今のところはという話に過ぎませんが。ゴーストは平成二期作品の良かったところ、悪かったところを分析してどうゴーストという作品、特に一話完結という所にどう落とし込むかについて考えているような印象を感じます。

 これは、『ゴースト』第05話「衝撃!謎の仮面ライダー!」の感想記事に書き込まれたコメントです。い、言われてしまった、先に!『ゴースト』は平成二期作品の、特に『鎧武&ウィザード』の長所を伸ばし短所を縮める、という方針で企画が練られている印象を受けたので、本稿では「どう落とし込んだか?」に着目していきます。丁寧口調はここまで。それではどうぞ。

■(その1)簡潔!1話完結!

 『ウィザード』の企画がスタートした時、真っ先に1話完結に戻しませんか?と提案しました。2話連続のスタイルによってドラマがしっかり描け、ストーリーが濃密になることで大人のファンを獲得できたというのは、「平成仮面ライダーシリーズ」最大の功績だと思うのですが、反面、キャラクターものとして、アクションドラマとしてのよいところが相殺されている気がしていて。僕にとっての「仮面ライダー」は、観たその日に事件が解決して、翌日その話題で盛り上がるという楽しさだったので、そういったコンパクトでスピーディなおもしろさを「スーパー戦隊」ではなく「仮面ライダー」で改めてやってみたかったんです。
きだつよし『ライダー 平成 vol.14 仮面ライダーウィザード』より)

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 結局、きだつよしの提案は採用されなかった。連続物(平成一期)にせよ前後編(平成二期)にせよ、複雑な人間ドラマを撮るためという側面もあるが、1エピソードに2話消化するのは怪人の衣装に金が掛かるからというのが真相である(※ハードディティールクリーチャーたる《ファントム》は、「平成ウルトラマンシリーズ」の怪獣デザイナー丸山浩が手掛けた)初代『仮面ライダー』のマフラーと同じだね。風に靡く姿が恰好良いというのは建前で、首の継ぎ目を隠したいというのが本音だったという。

 『ゴースト』は漫画家島本和彦が描くシンプルな出で立ちの《眼魔(ガンマ)》によって1話完結を可能にした。インセクト眼魔(第07・08話)と青竜刀眼魔(第09・10話)以外の、最初の数話(第01~06話)の怪人は全て新規造形であり、初回は槍・刀眼魔の2体、第10話からはジャベルが《眼魔スペリオル》に変身するため、既に10体以上登場していることになる。

 …というか、『ウィザード』こそ島本和彦を起用すれば良かったのにね(※丸山浩が悪いと言ってるわけではないです念のため)実際、『ウィザード』の1話完結エピソード、第01話「指輪の魔法使い」や第16話「クリスマスの奇跡」は人気が高いし、きだつよし島本和彦は昭和特撮ファンだし(笑)…けど、非オタクの宇都宮孝明&中澤祥次郎が困っちゃうか…!

■(その2)脇役!サブキャラクター!

――ライダーに変身する「希望」はまだお持ちですか?
 持ってますよ!でも僕が「変身したい」としつこく言ってるせいか、宇都宮さんが最近僕を避けてる気がするんですよ(笑)。自分で考えたシナリオがあるので伝えたいんですけどね。
――シナリオとは?
 まず瞬平が車にひかれそうな猫を助けて死にます。その後彼のそっくりさんが現れるんですよ。でも別人なので「瞬平?」と話しかけられてもクールに「ふん。誰だお前は?」みたいな態度。そのニセ瞬平が2号ライダーになる、と。
――瞬平を死なせてしまうのはどうかと思いますが(笑)。
 そ、そうですよね(笑)。僕もそう思ったので、実はもう一つ考えたんですよ。晴人が寝ている間にベルトと指輪を使ってみたら変身しちゃうんです。そして変身後は人格も変わるんですよ。
――どちらの案も瞬平のキャラは変わるんですね(笑)。
 ダメですかね……。ただ、願いはきっと叶うと信じて瞬平を貫きます!
(戸塚純貴『宇宙船 vol.138』より)

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 チンプイ(奈良瞬平)要らなくね?何度その誹謗を目にしただろうか?
 凜子ちゃん(大門凜子)役立たず!幾度その中傷を耳にしただろうか?

 まぁ、大門凜子は高山侑子ちゃんが美人だし、警察官だし、サンタコス可愛いし、小説版ではヒロインしてたけど……チンプイ<何も無さ>っぷりったらないね!前作『フォーゼ』の仮面ライダー部の面々(宇宙狂、女王蜂、情報通、操縦士、霊能者、頭脳派)が個性的なだけあって、より奈良瞬平の無能さが引き立ってしまった感はある。

 『ゴースト』は脇役を、幽霊を「見えないけど信じている」精神論者(御成)と「見えないものは信じない」理系女子(月村アカリ)の二人に厳選。御成は《大天空寺》の住職代理かつ(シブヤ&ナリタによる)調査、アカリは主人公の幼馴染かつ研究開発(《不知火》発明は彼女)と、役割分担もバッチリだ。アカリは、サブライダー(深海マコト)とその妹とも幼馴染である。

 …というか、『ウィザード』第10・11話の《ゲート》の直己くん(※父親、片山義男をガーゴイルに殺されてしまった)、彼をチンプイの立ち位置に据えれば良かったのにね。つまり父親をファントムに殺された少年」をサブキャラクターにし、セカンドパイロット版(第02・03話)で掘り下げるのだ。《国家安全局0課》(&木崎さん)の説明も出来るし。

■(その3)御供!Aパートアイテム!

――今年のビークル系は、ロックシードから変形する設定なので一緒にうかがいたいんですが、ここ数年の定番になっていた小型のサポートメカが登場しなかったですよね。たとえば、1/1サイズのロックシードから変形するミニメカがあっても面白かった気がするんですが。
西澤 それは、もうやめようという話が当初からありました。武部さんや佛田さんもおっしゃってたんですが、『W(ダブル)』『オーズ/OOO』『フォーゼ』『ウィザード』と続けてきたこともあって、小型のサポートメカは何を出しても画(え)が変わらない。結局、物語が後半になるにつれて出しにくくなるし、同じようにCGでやるなら、もっと派手なことをやるべきだろうと。
(西澤清人『仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本』より)

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 《メモリガジェット》《カンドロイド》《フードロイド》……変身前のドラマパートで活躍するものを制作陣は「Aパートアイテム」と呼んでいるのだが、『鎧武』ではそれに類するものは登場しなかった。その理由は、スタッフも視聴者も「飽きてきた」からだ。『ウィザード』の《プラモンスター》は酷かったね。召喚目的は《ファントム》《ゲート》の探索がほとんど。魔法生成なので研究開発者(フィリップ、Dr.真木、歌星賢吾)の人間ドラマも描けず、戦闘シーンでも活躍しなかった(プラモンスター同士の「合体」も全然やらなかったし…!)バイオレットゴーレムくらいじゃない?見せ場があったの。『S.I.C.』の《ガルーダショータイム》とか、テレビ本編でやるべきものだよ、アレは。

 『ゴースト』の《ゴーストガジェット》は動物・道具に変形するだけでなく、《ガンガンセイバー》とも合体。さながら《デンガッシャー(電王)》×《メモリガジェット(W)》である。さらに、『ゴースト』のガジェットは脇役(アカリ&御成)も使用するため、彼ら彼女らを戦の場に引っ張り出せる。特に、クモランタンの活躍は目覚ましい。不可視の《眼魔(ガンマ)》を可視化するだけでなく、糸による捕縛(第08話)や追跡(第10話)までしてくれるとは…!

(1)コンドルデンワー
・アニマル :飛行能力で追跡。
・ガジェット:ダイヤル式電話。
・アロー  :《ロビン魂》専用。
(2)バットクロック
・アニマル :超怪音波で攻撃。
・ガジェット:目覚時計と小銃。
・ライフル :《ビリー・ザ・キッド魂》専用。
(3)クモランタン
・アニマル :蜘蛛の糸で攻撃。
・ガジェット:幽霊可視化照明。
・ハンマー :《ベンケイ魂》専用。
(4)コブラケータイ
・アニマル :探知能力で追跡。
・ガジェット:折畳式携帯電話。
・鎌    :《ツタンカーメン魂》専用。

■(その4)形態!フォームチェンジ!

高橋 キーアイテムが何であれモチーフが何であれ、仮面ライダーが戦う力ってエレメントになるケースが多いんですね。ただ、それだといくら違いを出してもやることが似通ってしまうじゃないですか。そこはやっぱり、フォームの変わり様と戦い様をわかりやすく連動させたかった。(中略)主役のキャラクターを活かしつつもフォームごとにアクション様が変わるといいなと思ったので、だったら別の人格というか別の力を使うほうがいいんじゃないか?という発想から英雄・偉人がパーカー・ゴーストのモチーフになったわけです。
(高橋一浩『東映ヒーローMAX Vol.52』より)

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 エレメントだと、どこまで行っても主役のキャラクターがエレメントの力を使うことにしかならないとは『ゴースト』のチーフP高橋一浩の談である。『ウィザード』の《スタイルチェンジ》も、ウォーターなら《リキッド》の魔法、ハリケーンなら《ウィザーソードガン》逆手持ち、ランドなら徒手空拳で「地功拳」など、Mr.平成ライダーこと高岩成二や石垣広文アクション監督が各フォームの差異化を図るべく奮闘していたけど、正直「どの属性でも同じじゃね?」感は否めない。《ドラゴタイマー》による各《ドラゴンスタイル》分身はそれが顕著だね。

 『ゴースト』は羽織る英雄・偉人のパーカー(魂)ごとに属性も武術も異名も外見も奥義も異なる。詳細は以下の記事を参照されたし。

sebaooo-tatoba-combo.hatenablog.jp

■間奏!インタールード!

 前半戦終了。というわけで、『ゴースト』はどのように『ウィザード』の短所を縮めたか?について書き連ねてきたけれど、実はこれ、『鎧武』で既にやっていることなのである。

▲『仮面ライダー鎧武/ガイム』
(壱)連続ドラマとは1話完結の繰り返し!
(弐)サブキャラ達の大半がサブライダー!
(参)Aパートアイテム廃止で他演出強化!
(肆)アームズチェンジでウェポンも変化!

 高橋一浩が何処まで意識(参考に)してるかは分からないけれど、『ゴースト』の序盤と『鎧武』の「ビートライダーズ編」はかなりの共通点がある。箇条書きマジックだ!」と言われたらそれまでだけど、これら全てを満たす「平成仮面ライダー」はそうそう無いはずだ(惜しいのが『555』)

(1)主人公が普通の青年である。
『鎧武』  :葛葉紘汰
『ゴースト』:天空寺タケル
(2)男女の脇役が主役を支える。
『鎧武』  :葛葉晶・阪東清治郎
『ゴースト』:月村アカリ・御成
(3)初回で主要登場人物が死ぬ。
『鎧武』  :角居裕也
『ゴースト』:天空寺タケル
(4)主役の対立観念が存在する。
『鎧武』  :駆紋戒斗
『ゴースト』:深海マコト
(5)身分の高い兄弟が存在する。
『鎧武』  :呉島光実・呉島貴虎
『ゴースト』:アラン・アランの兄
(6)人知れず大組織が暗躍する。
『鎧武』  :ユグドラシル
『ゴースト』:眼魔の帝国
(7)人知れず異世界が忍び寄る。
『鎧武』  :ヘルヘイムの森
『ゴースト』:眼魔の世界
(8)敵サイドに裏切り者がいる。
『鎧武』  :シド
『ゴースト』:西園寺主税
(9)「ゲーム」の仕掛人がいる。
『鎧武』  :DJサガラ
『ゴースト』:仙人

 しかし、『鎧武』は賛否両論真っ二つに分かれる作品となってしまった。逆に、『ゴースト』に嫌悪感を抱くファンは前々作より少ないはず。いったいそれは何故なのか?それでは、後半戦突入。

■(その5)副題!サブタイトル!

――ちょうど同じ時期に虚淵さんがシナリオを執筆されたゲーム『吸血殲鬼ヴェドゴニア』では、『クウガ』のオマージュをされていたんですよね。
虚淵 そうですね、時期的にもほぼ直撃でしたからね(笑)やっぱり『クウガ』は面白いと思いましたし、あのゲームでは仮面ライダーもののフォーマットでのパロディをつくろうとしていたので、その当時がっつりあったのは、もろ『クウガ』でしたから。『変容』『悪夢』『浸食』とか、感じ2文字のサブタイトルの出し方も、まんま『クウガ』でした(笑)。
虚淵玄『語ろう!クウガ・アギト・龍騎【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

 先ずは、『鎧武』の「ビートライダーズ編」のお浚いがてらサブタイトルについて言及させて頂く。平成二期作品は、一文目/二文目(W)、一つ目と二つ目と三つ目(OOO)、四字熟語(フォーゼ)、疑問形(ドライブ)など、副題に法則性があることが多い(※『ウィザード』は「なし」)

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 『鎧武』も最初のうちは「二字熟語と一文」という規則性が見られたのだが、途中から命名規約の遵守は放棄されてしまう。ヴェドゴニア』でやり切ったのなら、同じく『クウガ』リスペクトの『鎧武』でもやろうぜ…!『ゴースト』は、「二字熟語!一文!」で統一されててグッド!

▼『仮面ライダー鎧武/ガイム』
第01話「変身!空からオレンジ!?」
第02話「必殺!パインキック!」
第03話「衝撃!ライバルがバナナ変身!?」
第04話「誕生!3人目のぶどうライダー!」
第05話「復活!友情のイチゴアームズ!」
第06話「ドリアンライダー、参戦!」
第07話「大玉スイカ、ビッグバン!」
第08話「バロンの新しき力、マンゴー!」
第09話「怪物インベス捕獲大作戦!」
第10話「ライダー大集結!森の謎を暴け!」
第11話「クリスマスゲームの真実」

▲『仮面ライダーゴースト』
第01話「開眼!俺!」
第02話「電撃!発明王!」
第03話「必中!正義の弓矢!」
第04話「驚愕!空の城!」
第05話「衝撃!謎の仮面ライダー!」
第06話「運命!再起のメロディ!」
第07話「早撃!伝説のガンマン!」
第08話「発動!もう一つのモノリス!」
第09話「堂堂!忠義の男!」
第10話「集結!15の眼魂!」
第11話「荘厳!神秘の目!」

■(その6)主役!メインライダー!

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 『鎧武』の葛葉紘汰も『ゴースト』の天空寺タケルも「普通の青年(一般人)」ポジションである。しかし、紘汰は言動が取沙汰されることが多かった。それでは、両者の振る舞いを見てみよう。

▼『仮面ライダー鎧武/ガイム』
第01話:主人公、変身能力を得る(▲)
第02話:主人公、利他戦闘を誓う(▲)
第03話:主人公、利己戦闘に走る(▼)
第04話:主人公、戦意喪失に陥る(▼)
第05話:主人公、再起復活を果す(▲)
第06話:サブライダーエピソード(―)
第07話:サブライダーエピソード(―)
第08話:サブライダーエピソード(―)
第09話:主人公、利他戦闘に励む(▲)
第10話:主人公、脇役を囮にする(▼)
第11話:主人公、企業の闇を知る(▲)

▲『仮面ライダーゴースト』
第01話:主人公、変身能力を得る(▲)
第02話:主人公、利他戦闘を誓う(▲)
第03話:主人公、人命救助に励む(▲)
第04話:主人公、人命救助に励む(▲)
第05話:主人公、戦意喪失に陥る(▼)
第06話:主人公、再起復活を果す(▲)
第07話:主人公、人命救助に励む(▲)
第08話:主人公、人命救助に励む(▲)
第09話:主人公、人命救助に励む(▲)
第10話:主人公、利他戦闘を誓う(▲)
第11話:主人公、友の妹を甦らす(▲)

 ポイントはセカンドパイロット版。パイロット版の大筋は(ほぼ)同じだが、『ゴースト』第03・04話(監督:山口恭平)はタケルがゲスト(白瀬マリ・羽柴信良)を助けるのに対し、『鎧武』第03話(監督:柴崎貴行)での紘汰は私利私欲に走ってしまうのである。あと、『鎧武』第10話「ライダー大集結!森の謎を暴け!」の囮作戦も槍玉に挙げられたね(呉島光実に唆されたとはいえ)話の都合で「age/sage」の振れ幅が大き過ぎたのが、紘汰が「ダブルスタンダード」と叩かれる最大の要因だ。

■(その7)強敵!サブライダー!

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駆紋戒斗「貴様はかつての沢芽市を知っているか?かつて、沢芽市はどこにでもある小さな地方都市だった。あのユグドラシルが来るまでは…。ユグドラシルは全てを奪っていった。当然だ、奴らは強く、そしてあの頃の俺は弱かった。だが、今は違う。俺は二度と誰にも屈服しない!
(『鎧武』第08話「バロンの新しき力、マンゴー!」より)

 これは『鎧武』七篠トリコ脚本回の駆紋戒斗の台詞である。戒斗(※紘汰のライバル)は巨大複合企業《ユグドラシル・コーポレーション》によって父親の工場を買収され、「打倒!ユグドラシル!」を誓った。彼の動機(行動原理)は「復讐心」であり、それ自体は問題無いのだが……。

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 なぜ駆紋戒斗はダンスチームでインベスゲームに勤しむのか?(『ドライブ』風)

 カイトさん、俺、強者のKAKUGOが解からないよ…!半沢直樹みたいにしろとは言わないけどさ…!アンタのやってること「弱い者イジメ」じゃんスか…!

 一方、『ゴースト』の深海マコト(※タケルのライバル)は、
(壱)十年前に《眼魔(ガンマ)》の世界に飛ばされた。
(弐)妹の「深海カノン」はそこで命を落としてしまう。
(参)《眼魂(アイコン)》を15個集めれば望みが叶う。
(肆)妹を生き返らす為に「スペクター」に変身し戦う。
と、「繋がった!脳細胞が、トップギアだぜ!」とネクタイが締まる気持ちになれるのだ。

※上記は人間ドラマの比較まで。戦闘シーンについては『ゴースト』第05話の感想記事で語っているので宜しければご覧になってください。

sebaooo-tatoba-combo.hatenablog.jp

■(その8)動機!行動原理!

 『鎧武』の「ビートライダーズ編」で一番問題なのは、
(1)《ビートライダーズ》のダンスが楽しそうに見えない。
(2)果物錠前の《インベスゲーム》が面白そうに見えない。
ということである。百歩譲って、ダンスについては企業城下町の閉塞感に鬱屈してたから若者が熱狂した、としよう(※カラーギャング案がNGになったからという裏事情もあるけれど)それにつけても《インベスゲーム》の難解さよ…!粗探しせずとも突っ込み所満載だからな…!

(1)ルールが不明確(一対多でもOK?だったら皆複数体出せば…?)
(2)戦略性が皆無(強い錠前を持ってる方が勝つとか糞ゲー過ぎ…!)
(3)錠前を手放すとインベスが制御不能になるが、誰も対策をしない。
(チェーンやストラップを付けたりして、落ちないように努めれば…?)
(4)ダンスチームのランキング上位者が得られる旨みや特典が不明瞭。
(5)インベス暴走は何度もネット中継されているが誰も危険視しない。
(6)一般市民だけでなく、警察ですらインベスゲームを問題視しない。
(7)そもそもステージを使用する時間帯を取り決めれば良いのでは…?

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 登場人物の動機(行動原理)に共感(感情移入)できない。これは『鎧武』全編通しての大問題だ。

※↓関連記事です。

sebaooo-tatoba-combo.hatenablog.jp

 一方、『ゴースト』の仮面ライダーの動機(行動原理)は極めて<プリミティヴ>である。
(壱)天空寺タケル:自分が生き返りたい。他人にも生きてほしい。
(弐)深海マコト :妹を生き返らせたい。他人を蹴落としてでも。
<死への恐怖><生への渇望>は表裏一体かつ、老若男女誰もが共感(感情移入)できるものである。最初から99日以内に15個の《眼魂(アイコン)》を集めれば望み(願い)が叶うとルールを明示しているのも大きい。『鎧武』は、《知恵の実(黄金の果実)》の秘密を、ずっと引っ張ってしまったからね。

■(その9)啓蒙!テーマ&メッセージ!

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 『鎧武』の「ビートライダーズ編」が支離滅裂なのは、虚淵玄子供に啓蒙してやろう!という想いが強すぎたからだ。各話に何らかのテーマ&メッセージが盛り込まれているからね。「嘘だ!」という方は『語ろう!クウガ・アギト・龍騎』『鎧武ガイド』『語ろう!555・剣・響鬼』『公式完全読本』『ヒーロー、ヒロインはこうして生まれる』を読んでください。全部書いてあるので。勿論、メインターゲットは子供なわけで、そういう心意気は大事だし、その姿勢には好感が持てるけど、それによって登場人物の言動が捻じ曲げられては本末転倒である。「復讐は、果たさなければ、意味がない」ように「啓蒙は、伝わらなければ、意味がない」のだ。

▼『仮面ライダー鎧武/ガイム』
第01話:運命には抗えぬが世界は君に託される!
第02話:得た力は自分ではなく他人の為に使え!
第03話:仕事とは知らない誰かの役に立つこと!
第04話:「理由のない悪意」は突然やって来る!
第05話:誰かを励まし勇気を与える力こそ強さ!
第06話:子供の喧嘩に介入する大人は無視しろ!(前編)
第07話:子供の喧嘩に介入する大人は無視しろ!(後編)
第08話:復讐は、果たさなければ、意味がない!
第09話:大企業は不都合な情報を隠蔽している!
第10話:上っ面だけ取り繕うと痛い目を見るぞ!
第11話:大企業は大衆を実験動物扱いしている!

 一方、『ゴースト』の主題は<命の尊さ>ただ一つである(※英雄の心を学び、心の目を開けもあるにはあるけれど)一つに絞っているからこそ、テーマ&メッセージがストレートに伝わるのだ。

――「死」の扱いがデリケートな子供向け番組にしては「第1話で主人公が死ぬ」というのは衝撃的ですね。
 実はそれほど新しい発想じゃないんですよ。これまでの仮面ライダーシリーズを思い出していただくと、主人公が作中で一度命を落とすということは珍しくはないんです。(中略)第1話で主人公の死があって、ヒーローに転生するという部分が、今までとは違うパターンですね。単に「生き返って強くなる」ということが描きたいわけではないんですよ。主人公の天空寺タケルは少年と青年の中間という成長途中の年齢で、第1話でまさに生きているのか死んでいるのかわからない状況に陥ります。そういう主人公だからこそ伝えられるメッセージがあると思うんですよ。ヒーローが命の大切さを説くのは普通ですが、死を経験している主人公が「命は大切だ」と言うからこそ胸に刺さる台詞もあるはずですから。そういう意味でも生きているって素晴らしいと思える作品を一年間やっていこうと考えました。
(高橋一浩『宇宙船 vol.150』より)

■では『鎧武&ウィザード』は『ゴースト』に劣るのか?

 と聞かれたら、「そういうわけではない」と答えます。例えば『ウィザード』。確かにチンプイと凛子ちゃんは目立たなかったけど、それによって主人公(操真晴人)を立たせることには成功している。どの属性でも殺陣が変わり映えしないと批判されつつも、《ウィザーソードガン》は「仮面ライダーなりきり武器」販売数歴代一位で、変身ベルトの総売上も『555』に肉薄している。

――今回は各フォームの武器をウィザーソードガンだけに絞ったのはなぜでしょう?
西澤 『ウィザード』では一つの武器を売り続けるコンセプトで行きたかったんですよ。(中略)宇都宮さんと中澤祥次郎監督は『侍戦隊シンケンジャー』のシンケンマルをカッコ良く演出してくださったので、これを平成ライダーで最も売れた武器にしたいと思ったんです。実際、ライダーのなりきり武器史上で販売数が1位の商品になりました。(中略)僕の中で『ウィザード』は『555』以来のベルト売り上げ100万本を目指していたんですよ。ウィザードライバーだけでは厳しかったので、ビーストドライバーと白い魔法使いドライバーで補完したかったのですが、最終的に少しだけ届かなくて。惜しいんですけど、うまくいって良かったかな、と。
(西澤清人『DETAIL OF HEROES 仮面ライダーウィザード特写写真集 STYLE』より)

 例えば『鎧武』。物議を醸した『鎧武』だけど、虚淵玄のホンには<話題性><中毒性>がある。『ゴースト』のパイロット監督「諸田敏」も、虚淵玄<毒>に侵された一人だ。

虚淵 『鎧武』は東映の武部直美プロデューサーの方で相当、吸収してくれてるなって思います。ある人と色々あって、ああ、次に会ったときはケンカだなって覚悟してたら、1週間ですべて沈静化していたり。さすが武部さんです。
虚淵玄『ヒーロー、ヒロインはこうして生まれる アニメ・特撮脚本術』より))

武部「虚淵さんの脚本は物語が続いているので、最初は自分の世界観が出せないのが物足りないと言っていた監督もいたんですよ。でも最後には虚淵さんの書いた台詞と濃いキャラクターがいないと物足りないと言っていましたからね(笑)。」
(武部直美『宇宙船 vol.146』より)

 初めの頃は長いシーンと長いセリフに仮面ライダーを当てはめるのに頭を悩ませましたが、途中から虚淵中毒にかかったのか、大変楽しい日々でした。ありがとうございました。
(諸田敏『仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本』より)

 すなわち、『ウィザード』を<単純明快の究み>とし、『鎧武』を<複雑怪奇の極み>とするならば、『ゴースト』は「突き抜けた何か」が無い。要するに<地味>なのよね。現状「可もなく不可もなく」みたいなファンの感想がほとんどなので、それを払拭できるか否かが今後の課題なのかなと。

 以上、『仮面ライダーゴースト』序盤評でした。賛同・反対意見、お待ちしております。

[了]

※はじめましての方はこちらをご一読ください。

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