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千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

Vシネマ『鎧武外伝 仮面ライダーデューク/ナックル』感想

■STORY 解説・ストーリー部分

『鎧武外伝2 仮面ライダーデューク』
ユグドラシルメンバーの出会い、そしてゲネシスドライバー開発秘話が明らかに!】

 凌馬は貴虎個人のためにドライバーの研究を続けていたが、人類を救う事を第一に考え生産数を上げるため性能よりもコストを優先しようとする貴虎に嫌気が差していた。
 そんなある日、ユグドラシルの内部で新種の錠前・ザクロロックシードを使った自爆テロが発生。耀子とシドが調査を開始する。すると、この事件の黒幕である“黒の菩提樹”というカルト集団の存在が明らかになる。
 さらに、かつて凌馬の前任者としてかつて凌馬の前任者としてユグドラシルの研究所の責任者を務めていた男・狗道供界が“黒の菩提樹”でザクロロックシードを利用し人々を洗脳していたことが発覚。しかし、納得できない凌馬…。それもそのはず、供界は以前ユグドラシルの研究施設で起きた“ロックシード暴走事件”で亡くなっていたのだ――。

『鎧武外伝2 仮面ライダーナックル』
【チームバロンの絆、そしてチーム結成秘話が明らかに!】

 戒斗がいなくなり1年が経過し、沢芽市は平穏な日々を取り戻していた。目標を失っていたザックはダンサーとしてどこまで出来るか挑戦したいと考え、“チームバロン”をペコに託しニューヨーク行きを決意する。
 しばらくしてニューヨークにいるザックにペコの姉・アザミから「ペコが戻ってこない」と相談の電話を受ける。さらに、かつて戒斗によって追放されたシュラがリーダーを務める“ネオ・バロン”が、地下格闘技のギャンブルで資金を集め勢力を拡大していることを城乃内から聞き、すぐに帰国を決意するザック。一人でシュラに立ち向かい消息を絶ったペコを救出しようとするザックだったが、戒斗と同じように強さを求めるシュラに共感したペコは自分の意思によって行動を共にしていたのだった――。

 上記は公式HPより引用。作品の感想は、他の特撮ファンサイトにも綴られると思うので、此処ではちょっと違う観点で『鎧武』について語ります。

■ザックはナックルに変身してもらいたくなかった

 「いきなりなんて酷いことを言うんだ!」という声が上がりそうだけど、何故こんなことを言うのかというと、『鎧武』の登場人物の氏名は「主役は漢字、脇役は片仮名」というルールがあるからだ。

――当初は単なる脇役かと思ってたキャラが、どんどん存在感を増していくのも『鎧武/ガイム』の魅力でした。特にザックなんて、いちばん正統派なライダーに思えるぐらい成長しましたしね。
虚淵 うん、彼は脇役だからこそ、きちんと成長が書けたっていうのありますね。プッシュしろって言われるわけでもなく。当初は本当に脇のポジションで収まるはずのキャラだったんですよ。ペコとかラットとかね、カタカナ名前のキャラたちはたいていそうですね。
 シドにしても、あそこまで立てる予定はなかったですし。大人ライダーを4人にしてほしいというオーダーがあって、主任と博士はいいとして、助手もひとりいてもいいやと。それで湊耀子をつけて、もうひとりどうしようと思って、あの錠前屋を変身させようかって路線変更したキャラだったんで。
 だから実は、シドも脇役で終わるはずのキャラだったんですよ。ただ、せっかく変身するんだったら、もうちょっとキャラを立てていこうってことになって、ああいうポジションになったんですよね。オーダーが大人ライダー3人だったら、シドは変身してなかったですね。
虚淵玄『語ろう!555・剣・響鬼【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

 このネーミングルールは鋼屋ジンや毛利亘宏も踏襲していて、それ故に『デューク』の狗道供界(くどうくがい)は漢字で、『ナックル』のアザミとシュラは片仮名なのだ。

◆『デューク』のメインキャラクター

戦極凌馬(デューク・レモンエナジー)
・シド  (シグルド・チェリーエナジー)
・湊耀子 (マリカ・ピーチエナジー)
・呉島貴虎(斬月・メロンエナジー)
・狗道供界(セイヴァー・ザクロ)

◆『ナックル』のメインキャラクター

・ザック (ナックル・クルミ)
・ペコ  (黒影・マツボックリエナジー)
アザミ (ペコの姉)
・シュラ (ブラックバロン・バナナ)
・駆紋戒斗(バロン・バナナ)

 しかし、こうしてキャラ名を羅列してみると、『デューク』では片仮名のシドが、『ナックル』では漢字の駆紋戒斗が「浮く」ことになる。これはあまり「美しく」はない。

(もっと「美しく」ないのが夏映画『サッカー大決戦!黄金の果実争奪杯』でペコが変身した 黒影・マツボックリエナジーアームズ で、あれによって初瀬亮二の死や、城乃内秀保の最終話マツボックリ変身に冷や水をぶっかけられた気分になるんよな…!だって、黒影のイメージが「初瀬ちゃん!城乃内!ペコォ!」になってしまうのよ?(苦笑)まぁ、「ペコ役の百瀬朔にも変身する機会をあげよう!」という、スタッフの親心なんだろうけど…。)

 クルミのアーマードライダーは「黒影トルーパーの隊長」という案もあったそうで(要するに、ショッカーの赤戦闘員だ)、そっちの方が収まりが良いのだ。逆に、ザックをナックルに変身させるなら「ペコ『も』ナックルに変身」させるべき。幸い(幸い?)、松田岳くんと百瀬朔くんは身長差があるし、『カブト』の地獄兄弟みたいにすると。もっとも、そうならなかったのは「予算の都合」だったんだろうけど。夏の劇場版の新エナジーアームズにマツボックリが採用されたのも、ひとえに「金がかからないから」だろうし。

 何が言いたいかというと、「ザックやシドは変身させる予定が無かった」という虚淵玄の発言には、当初は「俺のロードマップ通りにしろ!」という傲岸不遜さがあったということなのだ。

■初期構想は絶対遵守

 虚淵玄が『鎧武』でロードマップを用意したのは、氏がアニメ畑出身の脚本家だから、というだけではなく『アギト』に対して「やるせない」気持ちがあったからである。

虚淵 『アギト』の第一印象は「デラックス・クウガ」ってかんじでしたね。そこにはかなりシビれたんですよ。今度はライダーが3人で、お巡さんもライダーになって、警察は警察で組織内にしがらみがあって……というので、燃えて見ていたんです。
 主人公の正体も謎だったり、序盤から中盤にかけて期待感がものすごく膨らんでいただけに、終盤の何かあったのかなっていう方向転換ですかね、物語をたたむところで難しくなっちゃったのが凄い残念ではあるんですよね。
――アナザーアギトの木野(薫)さんが亡くなった後ですか?
虚淵 そうですね。後期のオープニングだと、G3が小沢澄子に銃を向けて警察バッジを突き返すようなシーンがあったじゃないですか。あの展開が来るのかなって思っていたので「あれっ?」って。ああいう風につくった以上は、きっとそういう展開も想定していたんじゃないかと。
 そういうことを考えると、特撮というのは、いろいろな都合でシナリオを変えていかなくちゃいけない事情があるんだろうなって。自分はあの展開にかなり期待していたので、ぜひ見てみたかったですね。
虚淵玄『語ろう!クウガ・アギト・龍騎 【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

 ただ、『アギト』の第47~51話は寧ろ白倉伸一郎井上敏樹「計画通り」だし、後期OP映像は撮影した田崎竜太「こんな展開になったらいいな♪」という希望的観測に過ぎないので、引用部の突っ込みはお門違いなんだけどね。何にせよ、虚淵玄の脳内には「作家の思い通りに物語が進行する=『美しい』」という方程式があったのだ。

 ところが、(過去記事で散々言及してきたけど)それによって齎されたのが
(壱)監督の演出や役者の演技がフィードバックされない。
(弐)作劇の都合で登場人物の思想言動が捻じ曲げられる。
という弊害だったというね。こういった「歪み(矛盾・破綻)」は大半の視聴者からすると「美しくない」ものである。美を追求したことによって「醜く(見にくく)」なってしまっては本末転倒だ。

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 ↑例えば、第38話「プロフェッサーの帰還」にてペコがシンムグルンにボコられるシーン。「変身できないペコじゃなくてザックを舞さんの護衛にしろよ…!」と突っ込み必須である。これは、「ミッチをクズにする」という展開を優先させた結果生じた歪みだ(この回は鋼屋ジン脚本だけど…!)

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 だから、戦極凌馬/デュークやザック/ナックルのキャラが膨らんだのは(こと『鎧武』においては)稀有な事例(レアケース)だったのだ。『デューク/ナックル』の企画・発売は、彼らが脇役(本筋に絡まない者達)だったからこその幸運だね。

■『クウガ』のように美しく、『アギト』のように面白

 以前もどこかで言ったかもしれないんですが、僕は井上(敏樹)さんがおっしゃった、クウガ』は美しく、『アギト』は面白いという言葉を「くそう、悔しいけど言い得て妙かも!」と思ってまして、そのリベンジではないですけど痛快な作品を高寺さんと作りたいなあと夢想しているんです。高寺さんなら、予想もつかない凄いものが作れると思うんですよね。もちろん、『クウガ』が面白くないということではないですよ。でも『アギト』には、いい意味で無責任な東映的ダイナミズムに溢れる面白さが詰まっているでしょう?それこそ紙芝居的な。クウガ』の後にはああいう作品をやるべきだと思っていましたし、ついちまちまと考えてしまう自分にとっては、ひとつの憧れでもあるんですよ。
荒川稔久仮面ライダー 平成 vol.1 仮面ライダークウガ』より)

 『クウガ』は美しいけれど、ぶっちゃけ面白くはないよね。延々とドキュメンタリー映像を眺めている気分になるし、正直途中で飽きる。一方、『アギト』は美しくはないけれど、面白い。明かされない謎、回収されない伏線も多いけど、続きが気になる毎週の引きは美事の一言。

 だから、『鎧武』は「『クウガ』のように美しく、『アギト』のように面白い」作品になり得たはずなのだ。美しさの拠り所は<ロードマップ>で、面白さのかなめは虚淵玄自身だね。これは、従来ではあり得なかったことだ。高寺成紀は白倉Pを、白倉伸一郎は高寺Pを否定するし、塚田英明は両方を否定したからね。高寺・白倉P両者の作風を肯定(リスペクト)した制作者は、虚淵玄以外いなかったんじゃない?(武部直美は白倉P寄りだし)

 でも、結果的に『鎧武』は「美しく面白い」ものではなく、「醜く面倒臭い」作品になってしまったね。自分の『鎧武』の批判点は、突き詰めるとその一点に尽きる。

 いっそのこと、「紘汰と戒斗、光実と貴虎は対決させる!」という運命だけ確定事項にして、あとは行き当たりばったりにしても良かったかもしれない。だって、ロードマップ通りにしたところで粗が出るくらいなら、キャラクターが掘り下げられて、関係性が深まっていく方が良いじゃない?

 ……結局、『鎧武』で得られた結論は、東映特撮はロードマップよりフィードバックの方が良い」ってこと!?いや、これはきっと、制作陣もずっと模索し続けているんだろうな。

 今回の感想記事、矛盾に満ち満ちている気がするけど、この辺で筆を止めることにしよう……。

■蛇足:脇役の本名は?

 シドは「志戸毘沙寿(しどびしゃす)」なんてどうでっしゃろ?ペコは……「藤井林右衛門」「星野裕」「辺古山ペコ」の中から好きなのを選んでください。

[了]

※このブログはコメント大歓迎です。『鎧武』は批判と称賛、両方の記事(対決と総括)をUPしてますので、忌憚なきご意見をお待ちしております。

sebaooo-tatoba-combo.hatenablog.jp

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※前作、『鎧武外伝 仮面ライダー斬月/バロン』の感想記事です。

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