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対決!『ドライブ』VS「平成仮面ライダー」(前編)

 「対決!」シリーズは、『仮面ライダードライブ』(以下、『ドライブ』)と旧作を比較して徹底的に叩きのめすというコーナーです。以前『仮面ライダー鎧武/ガイム』でやったのと同じ感じ。今回はナント、平成仮面ライダーシリーズ全作品と「対決!」させます(※ただし、『仮面ライダーディケイド』は除外。あれは、平成一期の集合体なので…!)

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※旧作の、物語の根幹に係わるネタバレは皆無です。基本的な情報(世界観と設定)は出さざるを得ないのでご容赦頂きたいのですが、ほとんどがパイロット版(第01・02話)で提示・説明されるものであり、各作品の中盤以降の展開には一切触れていません。未視聴の方もご安心ください。これを機に、旧作にも興味を抱いて頂けたら幸いです。

■大前提として ~『ドライブ』を批判するにあたって~

 『ドライブ』は例年より厳しめに見ていた。何故なら、パイロット監督たる田崎竜太が、特撮情報誌『宇宙船』にて、放送前にこんな発言をしていたからだ。

――『鎧武/ガイム』からの続投となりましたが、今回の『ドライブ』で意識されたことは何でしょう?
 自分たちが作った作品のコピーにはしないことです。初期の平成ライダーは昭和から続く『仮面ライダー』の持つ根強いイメージ=既成概念を壊しながらも、その時々の視聴者が求めるヒーロー作品として成立させてきたんですよ。ですが、今度は視聴者の中にも作り手の中にも「平成ライダーはこういうものだ」という「平成ライダーの伝統」のようなイメージが出来上がってしまう。特に作り手側は自分のお気に入りや自信作の焼き直しのような作品を作ってしまうという罠が口を開けます。それでは過去の作品の「縮小再生産」に過ぎません。『仮面ライダードライブ』は『ディケイド』までを1期とした平成ライダー2期の6作目です。先ほどお話しした「縮小再生産」にならないよう「平成ライダーの伝統」という既成概念の壁を壊すことを目指しました。
田崎竜太『宇宙船 vol.146』より)

 要するに、仮面ライダー鎧武/ガイム』のような作り手のお気に入りや自信作の焼き直しにはしませんよ田崎竜太は皮肉ってるのね。だからこそ、『ドライブ』を視聴する際は、「過去作品の縮小再生産になっていないか?」「平成ライダーの伝統という既成概念の壁を壊せているか?」という二点を常に念頭に置いていた。更に、「“筋”(コンセプト+志)は通っているか?」という自分の視聴スタンスもプラス。では、『ドライブ』の“筋”とは何なのか?こういう時は、制作発表会見でのプロデューサーのコメントを見るのが一番手っ取り早い。

大森敬仁プロデューサー(東映株式会社)
仮面ライダードライブ』は、一言で申し上げますと「三世代をアツくする仮面ライダー」です。おじいちゃん、お父さん、お子様と三世代揃ってお楽しみいただけます。また、史上初の“車にしか乗らない仮面ライダー”ということで、色々と葛藤もありましたが、シンプルに言えるのはここ数年の「仮面ライダーシリーズ」の中で最も“マシンと主人公が共闘する”場面が多くなるだろうということです。“ライダー”が“ドライバー”に変わる瞬間、「仮面ライダー」の歴史が変わる瞬間にご注目下さい。
 
佐々木基プロデューサー(株式会社テレビ朝日

今回の仮面ライダーは、初の刑事ドラマです。刑事ドラマならではの謎解きや事件ドラマもあり、1話完結で見やすく、爽快感のある仕上がりになっています。ご家族皆さんでお楽しみいただけると思います。車がモチーフということで、「仮面ライダーなのに車って…」というツッコミが聞こえてきそうですが、男の子心を掻き立てるスーパーマシンが大活躍しますので、ぜひお楽しみに。また、今回の変身ベルトは喋ります!主人公との掛け合いも面白いのでご注目下さい。王道のヒーローを目指して1年間走ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

仮面ライダー新シリーズ『仮面ライダードライブ』制作発表会見 レポート! | 東映[テレビ]

 東映のチーフプロデューサー大森敬仁、テレビ朝日のプロデューサー佐々木基、そしてパイロット監督田崎竜太の発言から、チェックポイントをまとめると以下のようになる。

(1)前作のような過去作品の「縮小再生産」になっていないか?
(2)平成ライダーの伝統という、既成概念の壁を壊せているか?
(3)「三世代(祖父親父息子)をアツくする仮面ライダー」か?
(4)「車にしか乗らない仮面ライダー」は歴史を変えられたか?
(5)「マシンと主人公が共闘する」場面は従来より多かったか?
(6)刑事ドラマならではの謎解きや、事件ドラマは楽しめるか?
(7)1話完結で見やすく、爽快感ある仕上がりになっているか?
(8)男の子心を掻き立てるスーパーマシンが大活躍しているか?
(9)喋る変身ベルトと主人公の掛け合いは注目する程面白いか?

 これに、十番目の観点を追加。

(10)パイロット版の世界観・設定が年間通して活かされてるか?

 グローバル・フリーズ、どんより(=重加速現象)、ロイミュード(≒職業怪人)、プロトドライブ(=000)、シフトカー、トライドロン、泊進ノ介(=ストップ&ゴー)、詩島霧子(=静寂(しじま)でミステリアス)、特状課(=特殊状況下事件捜査課)、警視庁捜査一課、ベルトさん(=クリム・スタインベルト)、ドライブドライバー、シフトブレス、タイヤコウカン、ハート(=002)、ブレン(=003)、バイラルコア、早瀬明(主人公の元相棒)、泊英介(主人公の亡き父親)、ネットワークに潜む怪人、タイヤフエール、チェイス(=魔進チェイサー)、ライドチェイサー etc…。初期設定が最後まで有効利用されるというのは、放送開始前の企画立案が優れているという何よりの証左である。つまり、初期設定がフェードアウトするイコール、企画に不備・破綻があるということなのだ。

 さて、「過去作品の縮小再生産になっていないか?」「平成ライダーの伝統という既成概念の壁を壊せているか?」を確認するにはどうすればよいか?平成仮面ライダーシリーズ全作品を振り返るしかないですね。というわけで、いざ尋常に勝負!

■VS『仮面ライダークウガ』(以下、『クウガ』)

 『クウガ』の怪人《グロンギ》は、殺人ゲーム《ゲゲル》によって人間を殺戮していく。グロンギは《未確認生命体》と呼称され、警視庁に合同捜査本部が設立される。つまり、仮面ライダーだけでなく、警察官も怪人に立ち向かうのだ。あの虚淵玄も、その点を大絶賛していた。

――『クウガ』は現実感を徹底的に重視しているのが最初の驚きでしたね。
虚淵 しかも、ライダーはライダーで、ライダー自身の能力でも戦うんですけど、ほかの大人たちも自分らの力が及ぶ範囲で頑張ってグロンギたちと戦っていく。警察官はもちろん、医者や研究者、技術者……、大人たちがみんなで力を合わせて困難に立ち向かっていく。あの大人たちの大人なりの頑張りっていうのは、子供たちから見るとさぞ頼もしかろうなぁって思ったんですよ。
虚淵玄『語ろう!クウガ・アギト・龍騎 【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

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 ところが、『ドライブ』の警察って《特状課(特殊状況下事件捜査課)》以外は無能に描かれてるのよね。まぁ、真影壮一(=001、フリーズ・ロイミュード)が国家防衛局長官参議院議員として暗躍していた、という理由付けもあるにはあるんだけど…!子供たちから見るとちと頼りない存在なのだ。仁良光秀なんて警察官なのに殺人犯という極悪人だしな…!

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 また、高寺成紀(チーフP)は「ご都合主義の排除、リアリティの追求」というコンセプトを掲げ、荒川稔久(メインライター)はさいたま県警の広報課に電話し、「怪人が出現した場合、殺人課が出るのでしょうか?」と質問したという。すると、
(1)巨大怪獣のように国の安全を脅かさない限り自衛隊はすぐに出動しない。
(2)怪人は人間はなく化物なので、熊や猛獣を担当する課が対応するだろう。
という回答が返ってきたのだ。だからこそ、クウガに変身する五代雄介の相棒、一条薫は「警備部」の刑事なのである。このように、『クウガ』の設定はかなり緻密に組まれているのだ。

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 ところが、『ドライブ』はシリーズ新展開以降、敵の秘策と味方の打開策のほとんどが<(1)記憶改竄><(2)特異体質><(3)プログラミング>なのよね。前述した真影壮一は、「氷の針で記憶を消す」というTLTのメモリーポリスを彷彿とさせる能力で隠蔽工作してたけど、泊一族だけでなく、詩島剛も特異体質だったというオチは酷過ぎる…!これをご都合主義と言わずして何と言うのか。

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 クリム・スタインベルト蛮野天十郎「こんなこともあろうかと!」な設定が多く、まるで「幻覚だ!」「残像だ!」「幻術だ!」といった後出しジャンケンを見てる気分になるんよな…!

■VS『仮面ライダーアギト』(以下、『アギト』)

 元々『クウガ』の続編として企画されていた『アギト』の怪人は、不可能犯罪(人知を超えた猟奇殺害)を繰り返し、《アンノウン》と命名されている。未確認生命体対策班《SAUL》の実働部隊(運用チーム)《G3ユニット》配属された若き警察官、氷川誠はパワードスーツを装着し、《仮面ライダーG3》に変身する。すなわち、氷川誠こそ「この男、刑事で仮面ライダー!」の元祖なのだ。

 氷川誠は私生活(プライベート)では不器用さが欠点な男で、例えば豆腐を箸で掴めなかったり、日曜大工にて鋸を折ったり、栗の皮を剥けず殻ごと食べたりする。しかし、その愚直さは真面目さの裏返しであり、公職(パブリック)では勇猛果敢にアンノウンに立ち向かう。G3ユニットの班長、小沢澄子も「彼は決して逃げたことのない男よ!」と氷川誠を高く評価している。

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 ところが、泊進ノ介の短所は「サボり癖がある」ことと「やる気が失せる」ことで、これらは業務に支障をきたすものである。三条陸曰く、泊進ノ介のコンセプトは "STOP&GO"(トラウマを抱えながらも前に進む男)とのことだが、「考えるのや~めた!」と思考停止する姿は職務怠慢に見えかねない。情熱(パッション)が足りなくて《タイプワイルド》に変身できなかったりするからな…!

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 また、氷川誠と泊進ノ介は「事の発端に遭遇している」という共通点があるのだが、
▲氷川誠は海難事故《あかつき号事件》にて船客を救助した英雄である。
▼泊進ノ介は世界静止《グローバル・フリーズ》の一被害者に過ぎない。
と、「ただ一人」「大勢の中の一人」という、特殊性に差があるのだ。

■VS『仮面ライダー龍騎』(以下、『龍騎』)

 「戦わなければ生き残れない!」というキャッチコピーが示す通り、13人の仮面ライダーによる、願いをかけたバトル・ロワイアルが繰り広げられたのが『龍騎』である。殺し合いは《ミラーワールド》という反転世界の中で行われ、決闘者は《ミラーモンスター》と契約して武装を得る。主人公、城戸真司の契約モンスターは《無双龍ドラグレッダー》で、仮面ライダーと巨大怪獣の共闘は非常にエポックメーキングであった。キャッスルドラン(キバ)やウィザードラゴン(ウィザード)の先駆けであり、デンライナー(電王)やトライドロン(ドライブ)もこれの延長線上にある。城戸真司と紅竜の最終奥義《ドラゴンライダーキック》の怪人撃破率はほぼ100%を誇り、視聴者の脳裏に焼き付いた。

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 ところが、泊進ノ介と愛車の必殺技《スピードロップ》は僅か数回しか「ヒッサーツ!フルスロットル!」されなかった。理由は明白で、『ドライブ』は強化フォーム・連動アイテム・追加ウェポンが多く、それら全てを販促せねばならなかったからだ。

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 また、ミラーワールドは仮面ライダーが人知れず怪人と戦う」ことに説得力を持たせるための設定で、城戸真司の勤務先《OREジャーナル》の面々も、終盤までライダーバトルの存在を知ることはなかった。一方、『ドライブ』の《重加速現象》はパイロット版での特状課のやり取りが象徴するように、

西城究  「重加速は怪物たちの破壊活動の前兆。もはやネットの世界では常識さ。」
追田現八郎「くだらん!俺は見てない。見てないものは真実じゃない。」
(『ドライブ』第01話「俺の時間はなぜ止まったのか」より)

追田現八郎「誘拐された人間を助け出したけど、こんなのどう調書に書いたらいいんだよ!?」
沢神りんな「そんなことより、怪物を追っ払ったっていう謎の戦士の話のほうが気になるわよね~。」
西城究  「ですよね~りんなさん。画像ほしいな~!」
沢神りんな「ほし~。」
(『ドライブ』第02話「仮面ライダーとはなにか」より)

 前半は、仮面ライダーと怪人が世間に認知されているか否かが曖昧であった。もっとも、後半はシリーズ新展開という名のテコ入れによって、両者の存在が公になるのだが。そもそも、龍騎』のミラーワールドは『クウガ』や『アギト』みたく警察を出さずに済むよう考案されたもの。刑事モノである『ドライブ』で魔空空間的サムシングを出すこと自体が誤りだったのだ。

■VS『仮面ライダー555』(以下、『555』)

 『555』への想い入れは此処に綴ってある。

【関連】『555』騎馬と網と戌亥 - 千倍王鷹虎蝗合成獣

 『555』の企画は<変身><正義>への懐疑からスタートしており、仮面ライダーが怪人を倒すことは果たして正義なのか?」という視聴者への問いかけがある。主人公、乾巧は《仮面ライダー555(ファイズ)》に変身して怪人《オルフェノク》と戦うが、オルフェノクの正体は死者蘇生した人間であり、終始「護ることと戦うこと」「信じること疑うこと」のジレンマに悩まされることとなる。

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 ところが、泊進ノ介のスタンスは「《ロイミュードを正々堂々と撲滅する」というもの。名前付きの敵幹部(002・003・009)や、仲間内(000・072)のロイミュードには興味や温情を示すものの、罪を犯したロイミュード「裁くのは俺だ!」と成就酌量の余地無しである。フランス料理店『シュプレム』のシェフ奥村は機械生命体幇助罪で逮捕するのに、橘さん(現さんの先輩)はお咎め無しと、身内贔屓なところもあるしな進兄さんは…!下記やり取りも、ちょっと恐(怖)いぞ…!

ベルトさん「刑事たちの証言どおりなら恐るべき敵だ。言わば融合進化体だ。」
沢神りんな「人間が自分の意思で暴れてるっていうのが一番やっかいよね。」
詩島剛  「でも中身は凶悪犯なんだろ?やっつけちゃえばいいじゃん。」
詩島霧子 「何言ってるの!たとえ悪人でも殺すわけにはいかないでしょ。」
ベルトさん「確かに今までドライブがロイミュードを裁いてきたのは相手が機械生命体だったからだ。」
泊進ノ介 「相手が人間なら。俺は刑事だ。捕まえるまでが仕事。で裁くのは法。」
(『ドライブ』第25話「新たなる闘いはなぜ始まったのか」より)

 第20話「西城究はいつからロイミュードだったのか」の東映公式HPのエピソードガイドにて、大森Pはこんな発言をしていたが、

 西城がロイミュードだったことはタイトルからも明白なので、その件については“百聞は一見に如かず”なのですが、実は作品のテーマが隠されている回でもあります。今ではベルトさんとなってしまった科学者クリム・スタインベルトが共同開発者とともに生み出したロイミュードのテクノロジーは、実は仮面ライダードライブと発生元が同じというわけです。「ロイミュード」と「仮面ライダー」、2つはどう違うのでしょうか? さらに西城究がロイミュードだったとして、もう一人その間で揺れた人物がいます。かつて仮面ライダープロトドライブとして活躍し、今は魔進チェイサーとなったチェイス。第20話はハチャメチャでいて、実は真面目な仮面ライダードライブ』のテーマを描く話です。

仮面ライダードライブ 第20話 西城究はいつからロイミュードだったのか | 東映[テレビ]

 もし「人間と怪人の違いは?」「人間と怪人(機械)の共存は可能か?」がテーマだとすると、『ドライブ』はお世辞にも上手く描けてるとは言い難いのだ。

■VS『仮面ライダー剣』(以下、『剣』)

 「人間が怪人の体になってしまった悲哀」を描いたのが『555』とするならば、
 「怪人が人間の心を持ってしまった悲哀」を描いたのが『剣』である。

 主人公、剣崎一真が所属する《BOARD(人類基盤史研究所)》は、《アンデッド》という不死の怪人を研究し、地球で人間が繁栄した理由を究明しようとしていた。アンデッドは全部で53体(トランプの総数と同じ)おり、《ラウズカード》に封印されていたが、何者かによってそれが解かれてしまう。剣崎一真は《仮面ライダー剣ブレイド)》に変身し、アンデッド封印に奔走する、というのがメインストーリーだ。

 もう一人の主人公、相川始の正体は《ジョーカー》というアンデッドで、
(1)《マンティスアンデッド》のラウズカードで《仮面ライダーカリス》に変身する。
(2)人類の始祖である《ヒューマンアンデッド》のラウズカードで相川始に変身する。
という設定である。すなわち、怪人が仮面ライダー及び人間に変身するのだ。剣崎一真や、居候先の喫茶店《ハカランダ》を営む栗原遥香と、その娘である栗原天音と親睦を深めることで、相川始(ジョーカー)は人間の心を得ると同時に、体は怪人であり、いつかは封印されねばならないという運命に悩まされることとなる。

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 ところが、機械人形チェイスは《プロトドライブ》としての行動(人間を守る!)も、《死神(魔進チェイサー)》としての思想(人間は悪!)も、結局そうプログラミングされただけでそこにチェイスの意思は入っていない。チェイスが「人間を守る」のは、泊進ノ介や詩島霧子が働きかけたからではなく、「ベルトさんがそうプログラムした」からである。主人公やヒロインとの交流によって芽生えた感情ではない。だから、下記掛け合いにも関係性が感じられないのだ。

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チェイス「お前か…。何の用だ。」
詩島霧子「あなたも見たでしょ?あの新しい敵を。人間を救うには強化ロイミュードの組織サンプルが必要なの。」
チェイス「それをなぜ俺に言う?」
詩島霧子「だって、あなたは人間の味方だから。そうプログラミングされてるし。)
チェイス「俺は…ロイミュードだ!」
西城究 「うわあっ!」
詩島霧子「西城さん!どうして…?」
西城究 「し…進ノ介くんから、君の様子が変だからって頼まれて…。」
詩島霧子「そうですか…。」
詩島霧子「大丈夫ですよ。そうプログラミングされてるし。)
詩島霧子「彼は味方です。そうプログラミングされてるし。)
詩島霧子「私はそう信じてます。そうプログラミングされてるし。)
西城究 「わかるよ。時折憎めないロイミュードがいるのは僕も知ってる!(072…!)
(『ドライブ』第25話「新たなる闘いはなぜ始まったのか」より)

 …挙句の果てに、大森Pからこんな発言が飛び出す始末…!

大森 (中略)それにしてもチェイスというキャラクターは上手く活きました。正直に言ってしまえば、彼の物語は仮面ライダーチェイスになった時点で終わってるんですよ。なので、当初はそのあとどうするか何も決まってなかったんですけど、ちょうどいい具合にロイミュードのことも知っていて、でも肝心なことは都合よく知らないという(笑)、そんなポジションでものすごく便利に動かしていましたね。
(大森敬仁『東映ヒーローMAX Vol.52』より)

■VS『仮面ライダー響鬼』(以下、『響鬼』)

 仮面ライダーは怪人と戦い、ウルトラマンは巨大怪獣と戦うのが常だ。
 仮面ライダーは巨大怪獣と戦わず、ウルトラマンも怪人とは戦わない。
 それは、仮面ライダーは等身大で、ウルトラマンは光の巨人だからだ。
 響鬼』は等身大ヒーローと巨大な敵を戦わせることで常識を覆した。
 『響鬼』の仮面ライダーは《鬼》と表現され、《魔化魍》を退治する。
 鬼は《音撃》で魔化魍に《清めの音》を流し込み浄化して土塊に戻す。
 主人公ヒビキ(日高仁志)は太鼓と鉢を武器にして魔化魍と戦うのだ。
 その斬新な戦闘シーンは正に震天動地(アメイジング)なものだった。

 さて『ドライブ』である。『響鬼』のような巨大戦(CG戦)は、予算が潤沢なパイロット版や、まだ懐に余裕がある序盤にしばしばインサートされるようになったが、些かマンネリ感が否めなかった。それを打破すべく、田崎竜太は第02話「仮面ライダーとは何か?」にて巨大戦を廃止し、CG戦をカーチェイスにすることで従来とは違う画を見(魅)せてくれた。これは、セカンドパイロット版(第03・04話)を撮った柴崎貴行も同様である。

――それでは監督が担当された第1、2話の見どころをお教えください。
 「宇宙船」のコアな読者なら「仮面ライダーの第2話といえばCG戦でしょ?」と予想されている方もいると思います。でも今年はCGで戦うような巨大な敵が出てこないんです。その代わりにどう盛り上げるかは放送を楽しみにしていてください。
田崎竜太『宇宙船 vol.146』より)

 ところが、話が進むにつれ、いつもと似たり寄ったりな巨大戦に成り下がるのである。例えば、《トライドロン・タイプワイルド》VS《巨大化コブラロイミュード》戦。

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 例えば、《トライドロン・タイプテクニック》VS《巨大化スパイダー型ロイミュード》戦。

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 例えば、《ライドクロッサー(ライドマッハー×ライドチェイサー)》VS《巨大化バット型ロイミュード》戦。

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 歴代とやってることあんまし変わんねぇじゃん…!

 大体、巨大ビークルVS巨大化怪人というのはスーパー戦隊シリーズでも頻出しているわけで、既視感があるし、新鮮味が無いのだ。

■VS『仮面ライダーカブト』(以下、『カブト』)

 子供の頃、かけっこ(徒競走)で一番になった者が持て囃されるように、「速さ」は「強さ・優秀さ・凄さ」とイコールである。学問の世界でも、数式の証明、新種生物の発見、前人未踏の地に到達、古代遺跡の発掘、発明と特許などは早い者勝ちである。だからこそ、クロックアップ》によって超高速で動く『カブト』の《ワーム》と《マスクドライダーは「史上最強」なのだ。

 『カブト』のクロックアップは、
(1)タキオン粒子が体を駆け巡って、時間流を自在に行動できるようになる。
(2)タキオン粒子が流れる目でしか、クロックアップした者を視認できない。
と、最強にシンプルである。「高速のヴィジョン見逃すな」「最強のレジェンド見逃すな」と言われても、ワームとマスクドライダーでなければ、「ついて来れなければ」怪人と仮面ライダーの戦いを視ることも聴くこともできないのがクロックアップなのだ。

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 ところが、《どんより》はかなりのバズワードだ。以下は、初回の泊進ノ介のモノローグだが、

世界の破滅ってやつは、突然起きるみたいだ。
例えば、ディナーを楽しんだりしている、その時に…。
いわゆる、グローバル・フリーズの勃発だった。
あの日、俺の時間も止まった。
あの日は俺の、心の破滅の日でもあった。
この時、俺はまだ知らなかった。
凍りつく時間の中でただ一人、
世界を救うために立ち上がった戦士がいたことを。
(第01話「俺の時間はなぜ止まったのか」より)

グローバル・フリーズから半年後。
街のみんなは今でも、あの止まる感じを恐れている。
「どんより」とか呼んでな。
そりゃさ…恐れもするって。
俺の頭の中も、泥が詰まったみたいに
「どんより」したままだ。
(第01話「俺の時間はなぜ止まったのか」より)

一口に「重加速粒子を浴びる」と言っても、
(1)遅くなるの?鈍くなるの?止る感じなの?
(2)物体がゆっくりとしか、動かなくなるの?
(3)グローバル・フリーズなのに凍らないの?
(4)重加速現象と言うからには、重くなるの?
(5)重加速現象なのに、加速せず減速するの?
(6)泥が詰まったような感覚・気分に陥るの?
と疑問が尽きず、我々視聴者の方が「どんより」してしまうのだ。

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 あと、これは感想記事で何度も言及してきたけど、
▲『カブト』のクロックアップ
⇒「普段通りの時の中、超高速で動けるカブト、凄い!」
▼『ドライブ』の「どんより」
⇒「超低速の時の中、普段通り動けるドライブ…凄い?」
となって、最終的に視聴者の目には「超高速で動くカブト/普段通り動けるドライブ」という風に映り、「ドライブ、別に凄くねぇじゃん!」という帰結になってしまうのだ。

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 また、『カブト』の主人公、天道総司と泊進ノ介は「事の発端に遭遇している」という共通点があるのだが、
天道総司は幼少期《渋谷隕石》落下災害時にライダーベルトを授かる。
▼泊進ノ介は世界静止《グローバル・フリーズ》の一被害者に過ぎない。
と、「ただ一人」「大勢の中の一人」という、特殊性に差があるのだ(あれ、デジャヴ?)

※文字数制限があるため、『仮面ライダー電王』~『〃鎧武/ガイム』との対決は後編に回します。

【後編】対決!『ドライブ』VS「平成仮面ライダー」(後編) - 千倍王鷹虎蝗合成獣

[了]

※よろしければこちらもどうぞ。

【批判】対決!『鎧武』VS『仮面ライダー』 - 千倍王鷹虎蝗合成獣

【称賛】総括!『仮面ライダー鎧武/ガイム』 - 千倍王鷹虎蝗合成獣