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千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

総括!『仮面ライダー鎧武/ガイム』

総括シリーズ 15_鎧武

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 『仮面ライダー鎧武/ガイム』(以下、『鎧武』)の総括です。これから再視聴する予定の方、そして『鎧武』を美味しく召し上がれなかった方にこそ、読んで頂きたい。勿論、ファンの方々にもね。かなりネタバレを含んでいるのですが、未視聴者の方もよろしければどうぞ。本稿は導入(イントロダクション)と言いますか、『鎧武』を楽しむ「コツ」のようなものです。

■大前提~賛か否かについて~

 自分は『鎧武』信者でもファンでもないです。どちらかと言うとアンチ気味。平成仮面ライダーという枠(カテゴリー)内では、『鎧武』は中の下くらいの評価です。私は以前、「対決!」シリーズという『鎧武』と旧作を比較して徹底的に叩きのめす批判記事を書いたので、興味のある方は是非ご覧になってください。

【其〇】対決!『鎧武』VS『仮面ライダー』 - 千倍王鷹虎蝗合成獣
【其一】対決!『鎧武』VS『クウガ』 - 千倍王鷹虎蝗合成獣
【其二】対決!『鎧武』VS『アギト』 - 千倍王鷹虎蝗合成獣
【其三】対決!『鎧武』VS『龍騎』 - 千倍王鷹虎蝗合成獣
【其四】対決!『鎧武』VS『555』 - 千倍王鷹虎蝗合成獣

 なので、この総評では基本的に「称賛」しかしていません。丁寧口調はここまで。それではどうぞ。

■『鎧武』は多人数版『BLACK』

 虚淵玄が一番好きな仮面ライダーは、『クウガ』でも『アギト』でも『龍騎』でも『555』でもなく実は『BLACK』だ。

――では、仮面ライダーの本格的な入口は『BLACK』?
虚淵 ええ。『RX』は全部は見てないんですけど、もとの『BLACK』はかなりグッとくるものがありました。BLACKとシャドームーンのどっちが勝ってもゴルゴムの勝ちっていう、あの閉塞感というか、ノーフューチャーぶりにシビれましたね。悪の組織と戦っているつもりでも、そもそも自分が悪の組織の後継者らしいという南光太郎のジレンマ、あれは熱かったです!
 コミック版だと、仮面ライダーは生き残っているんだけど、勝ったのはBLACKなのかシャドームーンなのかわからなくて、「結局、勝ったのはどっちよ?」ってオチになってたじゃないですか。あれはテレビの最終回よりさらにシビれましたね(笑)。
虚淵玄『語ろう!クウガ・アギト・龍騎 【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

 中学生の頃、すなわち中二病発症時に『BLACK』に出逢ったそうで、それが自身の作風に影響を与えているという。

――虚淵さんの作品でも『ブラスレイター』はデモニアックという怪物になってしまう人間の恐怖や悲劇を描いた作品でしたし、『まどか☆マギカ』にしても魔女になってしまう怖さを描いた物語でした。人間が怪物になってしまう恐怖は、虚淵さんの作品でも非常に重要なテーマになっていますよね。
虚淵 まさにそれこそが、自分が子供の頃に感じた仮面ライダーという作品の醍醐味じゃないかなって気がするんですよ。「いやだ、いやだ」と言いながらもブラックサンになってしまった光太郎から、中学生の自分が感じ取ったものというか。ライダーになるのって嫌なことなんだな、怖いことなんだなっていうのは、自分にとっては『BLACK』の頃から刷り込まれた原点なんでしょうね。
 それを受け入れたうえで戦っていくっていうのが、まずはライダーの基本フォーマットなのかなって思いはありますね。そういう記憶が今も無意識に残っているのかもしれないですね。
虚淵玄『語ろう!クウガ・アギト・龍騎 【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

 『BLACK』のストーリーを超ざっくり説明すると、「悪の秘密結社の後継者争い」だ。つまり、主人公南光太郎/ブラックサン」とその親友「秋月信彦/シャドームーン」の、どちらが「創世王(※暗黒結社ゴルゴムの支配者)」になるか、というのが物語の骨子。そのためか、『鎧武』の固有名詞は『BLACK』に因んだものが多い。

(一)紘汰&光実&晶  :光太郎(こうたろう)と日("Sun")が三つ。
(二)黒影トルーパー  :ブラックサン+シャドームーン
(三)ゲネシスドライバー:"Genesis"は“創世”という意味。
(四)ソニックアロー  :漢字表記は「創世弓」。
(五)知恵の実     :旧約聖書の『創世記』より。

 『鎧武』の本筋は、世界を己の色に染める力を持つ「知恵の実(黄金の果実)」争奪戦であり、
(壱)「呉島貴虎/斬月」VS「呉島光実/龍玄」
(弐)「葛葉紘汰/鎧武」VS「駆紋戒斗/バロン」
の対決は、平成(21世紀)版「南光太郎/ブラックサン」VS「秋月信彦/シャドームーン」なのだ。

■対決!竜虎相搏つ太陽と月

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【呉島】極東の島国
【貴】ノブレス・オブリージュ
【虎】弟、『龍』玄と対

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【呉島】極東の島国
【光】兄、斬『月』と対
【実】冥界黄泉のヨモツヘグリ

 白倉伸一郎は『仮面ライダー』の三大構成要素を<(1)同族同士の争い><(2)親殺し><(3)自己否定>と定義した。『BLACK』の南光太郎と秋月信彦は義兄弟であり、実弟より10歳年上の貴虎は、光実の親代わりという側面もある。呉島兄弟は『BLACK』の如き<兄弟対決>と、『仮面ライダー』の神髄<親殺し>が宿命付けられている。

■貴虎は「主人公の反面教師」

――光実の兄、貴虎はどうでしょう。正義のために犠牲はやむなし、という点はご自身の著書『Fate/Zero』主人公の衛宮切嗣のような思考回路です。
虚淵 貴虎は貴虎で、己が信じる正義に真っ直ぐです。ただ、それは困った「真っ直ぐ」でそのためにいろんなものを諦めている。でも、実はひとつでも諦めた瞬間に正義を語る資格はなくなってしまう。(中略)スーパー戦隊が基本中の基本だとしたら、ライダーは最初に触れる応用編だと思うので、貴虎というか切嗣のような人間が『鎧武/ガイム』の主人公であってはなりません。『Fate/Zero』の主人公は務めることができたとしても、です。
虚淵玄仮面ライダー鎧武ザ・ガイド』より)

――貴虎も序盤は弟がライダーになってるのに気づかなかったり、スイカ(ロックシード)を盗まれたりして、うっかりキャラという印象が強かったんですけど、実は人類を救うために大罪を背負おうとしている、ある意味最も仮面ライダーらしい男でグッときました。
虚淵 そうですね。貴虎は完璧に見えて隙があるキャラとして考えてて、光実絡みがことごとく盲点になるというのがコンセプトとしてありましたからね。足元が疎かな、理想主義者という。(中略)貴虎は、挫折した紘汰なんですよね。なので、ある意味反面教師になっていくという構想は当初からありました。
虚淵玄『語ろう!555・剣・響鬼【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

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 『鎧武』世界は「ヘルヘイムの森」という時空を超えた外来種に侵略されている。ヘルヘイムの果実は見た者の食欲を喚起させるが、喰らった動物(人間)は「インベス」という怪物に変貌してしまう。森が完全に地球を覆い尽くすのにかかる時間は十年。巨大複合企業ユグドラシル・コーポレーション」は、森の脅威に打ち勝つため「プロジェクト・アーク」を推進。それは森の果実から栄養源を摂取できる、戦極ドライバーを大量生産すること。ただし、量産可能台数は十億台。つまり、全人口の7分の1しか生き残れないのだ。その、人類救済計画の責任者が呉島貴虎であった。しかし中盤、彼の正義を覆す存在が現れる。オーバーロードの王、ロシュオだ。

ロシュオ「この森は挑みかかる者を試し、世界を支配するに相応しいただ一人の王を選定する。だが、全ては過ちでしかなかった。新しい世界の到来に向け、私は弱き者達を見捨て、強き者達だけが生き残るのを良しとした。だが、そうして選ばれた者達はそれが当然の権利だと誤解した。弱き者を踏み躙り、餌食とするのが正しいと。そう思い込んだ彼らは森の支配者となった後も互いに憎みあい、殺しあった。」
(第29話「オーバーロードの王」より)

 オーバーロードとはユグドラシルが名付けた仮称で、正式名称は「フェムシンム」(日本語訳すると“人間”)ロシュオは天下無双の勝者の証、「知恵の実(黄金の果実)」の力で強者のみを肉体的に進化させることで種を存続させたが、それ故に同族同士の争いが勃発したというのだ。これは暗に、プロジェクト・アークの末路を示している(現に、第28話「裏切りの斬月」にて、呉島貴虎はチームメンバーからの裏切りに遭っている。)誰かが犠牲になる、となった瞬間、正義を語る資格はなくなってしまう。呉島貴虎は、主人公(葛葉紘汰)の反面教師だ。

■光実は「子供達の反面教師」

虚淵 光実の挫折はひとつのテーマにしたいんです。たぶん、今の子どもの感覚からしたら、彼のあり方は超カッコイイと思うんですよ。ともすれば紘汰よりヒーローかもしれない。でもね、僕は大人の立場から異を唱えたい。ああいうスタイルで立ち回っていると、必ずどこかでツケを払わなくてはならないよ、と。賢く上っ面だけ繕うことでその場はうまくいったとしても、立ち回ることにとらわれて信じる正義や倫理観が欠落していってしまう。そのことを子どものうちに知っていてほしいんです。
――なぜ、そういった姿を描こうと思ったのでしょう。
虚淵 なんとなくですが、若い人の間に「上手に立ち回ればいいんでしょう?」といった空気があると感じているから。なので巧みに立ち回ることだけが正解じゃないと言いたいし、ひとつ間違えたら最悪の結果を招くことにもなりかねないことを見せたいんです。
虚淵玄仮面ライダー鎧武ザ・ガイド』より)

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 呉島光実は、兄に敷かれたレールの上を走りたくない、居場所(チーム鎧武、高司舞)を守りたい、「運命を自分で選びたい」という願望を抱えている。しかし、兄より呉島の血が色濃く流れており、他人を自分の敷いたレールに乗せたがったり、海法紀光脚本回(第33話「ビートライダーズ大集結!」)では「仲間ってのはね、僕の思い通りになる人のことさ。」という台詞を吐いたりと、他人の運命を自分の思うがままにしたいという欲望も見え隠れする。そして中盤、呉島光実はオーバーロード、レデュエと結託。「人類の半分は生き残らせる」という約束を取り付けた。

呉島光実「人類は滅びる訳じゃない。一部の人間は、今まで通り平和な暮らしを続けられる。ノアの箱舟って知ってるかい?滅びゆく世界から、正しい人間達だけを救うために神様が用意した救済。その一握りの人間に、君たちは選ばれたんだ。
(第35話「ミッチの箱舟」より)

 だがしかし、レデュエにとって、呉島光実は暇潰しの玩具に過ぎなかった。

レデュエあいつはただ見てるだけで面白い。私が弄るまでもなく、勝手に踊って壊れていく。最高に良くできた玩具だ。
(第36話「兄弟の決着!斬月VS斬月・真!」より)

 レデュエに運命を狂わされた呉島光実を、作中最悪の大人(人間)、戦極凌馬はこう嘲笑う。

戦極凌馬なあ呉島の坊っちゃん、貴虎に教わらなかったのか?何故悪い子に育っちゃいけないか、その理由を。嘘つき、卑怯者…そういう悪い子供こそ、本当に悪い大人の格好の餌食になるからさ!
(第43話「バロン究極の変身!」より)

 呉島光実は、子供達(メイン視聴者)の反面教師だ。反省材料故に、呉島兄弟は争奪戦の途中で敗退してしまう。最終決戦に進めるのは、もう一組の世紀王、葛葉紘汰と駆紋戒斗だ。

■対決!「ヘルヘイムの森」VS「弱者の許される世界」

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【葛葉】侵略的外来種
【紘】誰もいない世界の果て
【汰】淘汰(=駆逐)、大洪水

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【駆】駆逐(=淘汰)、大破壊
【紋】誇り、矜恃、プライド
【戒斗】戦いを諌める

 アメリカでは日本の葛(クズ)が大繁殖して問題になっているという。葛の葉は米国にとって侵略的外来種だ。主人公の氏名は、正に「ヘルヘイムの森」そのもの。一方、ライバルの最終目標は「弱者の許される世界」であり、全編通して両者の主義思想が激突することになる。

■紘汰は「犠牲を拒む主人公」

 第21話「ユグドラシルの秘密」より。

シド  「ユグドラシルタワーの周りにあるリング。あれはスカラー電磁波兵器って言ってな。いざとなれば沢芽市を丸ごと焼き払う仕組みになってんだ。ボタン一つで一瞬でな。
葛葉紘汰何だよそれ…?あんた達、人類を救うんじゃなかったのかよ!?
シド  「もちろん救うさ!人類を。こんなチンケな街1つ潰してでもな。だが、事がバレなきゃこの街は平和なままだ。お互い頑張ろうぜ。なあ?」
葛葉紘汰目的が正しくたって、やり方を間違えてたら意味がない!やっと分かった。ヘルヘイムの秘密も、世界のピンチも、ユグドラシルには任せておけない!

 第22話「7分の1の真実」より。

戦極凌馬「戦極ドライバーの量産化だよ。あれこそが人類救済計画、プロジェクト・アークの根幹だ。(作れるのは)最大で10億台が限界、って所かな?(今の世界の総人口は)ざっと70億人。生き残れるのは7人に1人ってことだね。
葛葉紘汰何だよそれ…?何も知らない60億人を、あんた達は見殺しに…?
戦極凌馬「見殺し?そんな甘いことはしない。だって先行きインベスになるって分かり切ってる連中だよ?放っておいたら生き残った人類の脅威になるじゃないか。ヘルヘイムが地球を覆い尽くす10年間のうちに、人類の総人口を7分の1にまで削減する。ユグドラシルは全世界でもバイオテクノロジーをリードする医薬品メーカーだからね。一工夫すれば、手の打ちようはいくらでもあるんだよ。」
葛葉紘汰お前等…平気な顔してそんなことを…!

 第23話「いざ出陣!カチドキアームズ!」より。

呉島貴虎「どの面下げて戻ってきた?戦う意味さえ見失っていた奴が!」
葛葉紘汰「いや、あんた達のお陰で分かったんだ!本当に戦わなきゃならない相手が!」
呉島貴虎「まだ意地を張ると言うのか?友を犠牲にして命を拾っておきながら!
葛葉紘汰「確かに俺は過ちを犯した!だからこそ、同じ過ちが繰り返されるのを見過ごせない!俺は諦めない!犠牲が必要だって言うなら、それを求めた世界と戦う!
呉島貴虎「奴の狙いはスカラー兵器だ!対空防御!」
葛葉紘汰「(※スカラー兵器破壊後)これでもう、証拠隠滅なんてできないぞ!全部秘密にしておきたいなら、本気で街をインベスから守れ!

 第31話「禁断の果実のゆくえ」より。

デェムシュ敗北した弱者を潰す!それこそが勝利者の権利!それが強さの証!この俺が求める全てだ!
葛葉紘汰 「そうか…ああ、わかったよ。お前を頼ろうとした俺が馬鹿だった。今なら分かる。どうしてお前等の文明が滅びちまったのか!きっと向こう側の世界にも未来があった。なのにあの森に負けちまったのは、お前のような奴がいたからだ!
デェムシュ貴様等とて、力のみを頼りに知恵の実を求めているのは同じ!
葛葉紘汰 俺は違う!この力は、戦えない人達を守るために!」

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 葛葉紘汰のコンセプトは「気が付いたら英雄になっていた一般人」であり、普通の青年故に主義主張がブレることがある。しかし「犠牲を拒む」という一点に関しては終始一貫しており、彼を戦場に駆り立てるのは「誰かが犠牲になりうる」瞬間だ。

■戒斗は「力を欲すライバル」

葛葉紘汰泣いちゃったら負けのゲーム。泣かない方法を見つけたら勝ちだ。
(第01話「変身!空からオレンジ!?」より)
駆紋戒斗泣いていたってどうにもならないぞ。それでいい、お前は強いな。
(第02話「必殺!パインキック!」より)

駆紋戒斗「力は、手に入れただけでは意味が無い!使いこなせなければそれまでだ!だが、貴様等はそのベルトを持て余している!力を示し、弱者を支配する、強さを求める意思が無い!
葛葉紘汰「違う、強さは力の証明なんかじゃない!強い奴の背中を見つめていれば、心砕けた奴だってもう一度立ち上がることができる!誰かを励まし、勇気を与える力、それが本当の強さだ!
(第05話「復活!友情のイチゴアームズ!」より)

駆紋戒斗黙れ!俺が屈しない限り、貴様が勝ったわけではない!
(第14話「ヘルヘイムの果実の秘密」より)
葛葉紘汰犠牲なんかじゃない!俺は俺のために戦う!俺が信じた希望のために!俺が望んだ結末のために!
(第40話「オーバーロードへの目覚め」より)

駆紋戒斗俺の未来で待っていろ。そう、長くはかからない。
葛葉紘汰迎えに行くよ舞。そう、長くは待たせない。
(第45話「運命の二人 最終バトル!」より)

駆紋戒斗誰もが強くなるほど、優しさを忘れていった。
葛葉紘汰「強くて優しい奴だって大勢いた。みんなこの世界を守ろうとして必死だった!」
駆紋戒斗「そんな奴から先に死んでいった!優しさが仇になって、本当の強さに至れなかった!貴様もそうだ、葛葉紘汰。」
葛葉紘汰「いいや、俺はお前だけには負けない!お前を倒し、証明してみせる。ただの力だけじゃない、本当の強さを!
(第45話「運命の二人 最終バトル!」より)

葛葉紘汰泣いていいんだ。それが俺の弱さだとしても、拒まない。俺は、泣きながら進む!
駆紋戒斗お前は、本当に強い!
(第46話「運命の勝者」より)

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 駆紋戒斗は主人公の対立観念として立ち塞がる。惜しむらくは、十分なバックボーンが描かれなかったことだが、『鎧武外伝』にて補完されているので、以下の記事を参照されたし。

【関連】Vシネマ『鎧武外伝 仮面ライダー斬月/バロン』感想 - 千倍王鷹虎蝗合成獣

■『鎧武』とは何だったのか?

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 以下、シド役の波岡一喜の感想。

――で、波岡家での『鎧武/ガイム』に対する反応を知りたいんですけど。
波岡 それが、「パパが出てる」ってことで初めは楽しく観てたんですけど、途中から怖がっちゃって。展開もなんだけど、何よりもインベスが。特にオーバーロードが出てきてからは、本当に怖がっちゃって。(中略)ショーを観に行くのも「嫌だ、嫌だ」って言ってました。
――ある意味、そこまで怖がられるのは、それだけ良くできてたってことかも。
波岡 そうですね。『鎧武/ガイム』はすごく大人向きでしたね。特に虚淵(玄)さんのホンが。たとえば、オーバーロードに「今は自分たちが人間の敵だけど、次の世界に行けば人間がその立場になる」とか言われても、こんなの絶対子供が理解できるわけないよな!って思ったし(笑)でも、子供には難しかったかもしれないけど、俺自身は虚淵さんの書く話がすごく好きなんですよ。他の虚淵さんの作品も観ましたけど、誰もやらない唯一無二の世界を描こうとする人だから。鎧武/ガイム』が終わって打ち上げのときに虚淵さんにお会いしたんで、直接「面白かったです!」って言いましたよ。
波岡一喜仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本』より)

 以下、JAE社長の金田治の感想。

金田 (中略)率直に言わしてもらうと、申し訳ないけど子供にはわからない話だったかもしれないというのはあるんだ。でも、それでも好感を持って見てくれたんだから大成功だよ。キャラクターも良かったし、そこに役者もハマってたのが良かったのかな。子供にわかるようにするなら、もちろんそういう台詞だとか見せ方というのがあるんだけど、そうじゃない世界観を貫き通したのが大きな冒険だったしクオリティの高さというものはすごく感じてたから、そういう作品を作れた喜びは大きかったです。
――人間関係や世界観は、むしろ一般的な大人が観るドラマよりも複雑だったかもしれないですね。
金田 僕は『鎧武/ガイム』の登場人物というのは、現実の世の中にいるいろんな立場の人間の生き様が網羅されてると思ってるのね。そこに含まれてるメッセージというものをいつも感じてました。だから「この人物が言ってることが、観てる子供たちに伝わりさえすれば」なんてことも考えながら撮ってましたよ。もちろん、どの作品にも友情だとか愛だとか普遍的なメッセージは含まれてるんだけど、『鎧武/ガイム』は特にメッセージ性を色濃く感じる作品だったね。やっぱり、子供が観るものにはメッセージがないとね……と、僕は思ってますから。

(金田治『仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本』より)

 この、お二方の感想が全てなんじゃあないかな。石田秀範が「深夜アニメ風の難解さ」と揶揄するほど複雑で、時にメインターゲットたる子供が目を覆うほど恐(怖)ろしい。同時に、諸田敏が魅力として挙げた、虚淵玄のこだわりを受けて(監督・俳優が)こだわり、こだわりきれない若者がこだわらざるを得ないという世界観が広がり、それが「現代日本の縮図」になっている、と。主題歌『JUST LIVE MORE』にもあるように、「今を生きろよ日本人!」というのが『鎧武』のメッセージだ。

■そこそこ面白いが、しょーもない!

 まだ「鎧武」という名前も、ライダーデザインも確定していなかった頃……。
 脚本の虚淵さんにお会いして、一番最初に、「果物錠前」と「戦国武将」がモチーフとして決まっております……。というお話をしました。
 後からのインタビューでは、「正直、頭を抱えました!」とのこと。(スミマセン…)でも本郷猛もバッタになりたくてなったんじゃない。フルーツモチーフ、やりましょうという決意で、ライダーの脚本を引き受けて下さいました。
 そして物語に組み込まれたのが、「理由のない悪意」である、植物による侵略。
 数々の神話に存在する「禁断の果実」。
 オープニングにも「禁断の果実!」という歌詞が入っていますね。
(中略)
 戦う相手、戦うステージが変化していく「鎧武」の物語。(中略)紘汰も変わっていきます。スケールアップしていく、この後の展開もお楽しみに!

仮面ライダー鎧武/ガイム 第31話『禁断の果実のゆくえ』|東映[テレビ]

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 『鎧武』という企画は虚淵玄にとって千載一遇の機会だった。「この機を逃したら、二度とチャンスは無い!」というくらいの。それは、鋼屋ジンにとっても同じだったはず。だからこそ、『鎧武』からは圧倒的な“意気込み”が感じられたし、“熱意”が伝わってきたからこそ、自分は最後まで視聴することができた。フルーツとは<食料>かつ<植物>であり、本来人間にとってポジティブなものである<食事><緑化>を敵(恐怖)に据えた。このワンアイデアを閃いた、というだけでも評価すべきことだと思うのよ、俺は。

 『鎧武』は内容が悪いんじゃないのよ。
 構造(書き方)が悪かっただけなのよ。
 俺はそれを声を大にして言いたかった。

 『鎧武』、俺は「そこそこ好き」よ?「しょーもない作品」とも思ってるけどな!

■蛇足 ~鎧で戈を止める者~

 葛葉紘汰は先ず「対話」から入る。ビートライダーズ編でもユグドラシル編でもヘルヘイム編でもオーバーロード編でもね。話し合いから始めて、交渉が決裂した時、「このままでは誰かが犠牲になる!」という状況になって初めて甲冑を身に纏い、武器を手に取る。自分は第42話「光実!最後の変身!」(諸田敏監督回)と第46話「運命の勝者」(石田秀範監督回)の戦闘シーンが好きでね。龍玄ヨモツヘグリアームズの戟(ダウ)や、ロードバロンの剣(グロンバリャム)を、極アームズは一旦「受け止める」のよね。

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 “武”という漢字は“戈を止める”と書くそうで。鎧で戈を止める姿は正に“鎧武”。
 制作陣が何処まで意識していたのかは知らん。武部直美の“武”かもしれないしな!

■追記(2015/11/01)

 『鎧武』販促論を執筆しました。

『鎧武』陣羽織檸檬柄と大玉西瓜宇宙開闢と空我精神 - 千倍王鷹虎蝗合成獣

[了]