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千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

対決!『鎧武』VS『クウガ』

対決シリーズ 15_鎧武 01_クウガ

 「対決!」シリーズは、『仮面ライダー鎧武/ガイム』(以下、『鎧武』)と旧作を比較して徹底的に叩きのめすというコーナーです。今回はVS『仮面ライダークウガ』(以下、『クウガ』)。ネタバレありまくりなのでご注意を。

【大元】対決!『鎧武』VS『仮面ライダー』 - 千倍王鷹虎蝗合成獣

■訴求!非暴力

 高寺成紀(以下、高寺P)は暴力を嫌う男である。非暴力を訴求すべく『クウガ』を制作したのだ。平成仮面ライダーシリーズが十周年を迎えた頃、高寺Pはこのように述懐している。

 ホラー的表現、血を見せる残酷描写も「大人向けでは?」と批判の対象になりました。「子供番組で、なぜそこまでやるのか」と。でも、それもやはり子供に対して直球で勝負してみようという思いからでした。
 当時は子供がリアルを体感しない時代になっていたと思うんです。(中略)総じて子供がケガをしたり、ケンカしたりすることは、120% "悪" だから未然に防ぐべし、みたいなムードがあって。そんなことから、切れば血が出る、だから人が死ぬということや、殴られたら痛い、だから暴力はよくないということがよくわかっていない子供に「絵空事ではないこと」の存在を突き付けたかった。(中略)『仮面ライダー』という番組に怪人という非日常的な存在が出てくることは、死の恐怖を味わわせることだと思っていたので、残酷描写や暴力描写は必要に応じて「ありき」で置いていました。生きていることの意味を逆説的に問う手法がオリジナルの『仮面ライダー』にもあったと思っていますので。
(高寺成紀『仮面ライダーディケイド&平成仮面ライダーシリーズ10周年記念公式読本』より)

 最近でも、『語ろう!クウガ・アギト・龍騎』にてこのような発言をしていたね。

――この本のインタビューで虚淵玄さんも「グロンギは、あの時代の子供にとって最高に恐ろしい最悪の化け物だったのが素晴らしい」と絶賛されていました。(中略)グロンギに対する警察の描き方も、大人が大人としてちゃんと子供を守ろうとしていて感銘を受けたと仰ってましたね。
高寺 そう仰っていただけるとありがたいです。(中略)グロンギの設定をつくり出したのは、文芸チームの村山桂さんなんですけど、村山さんがよく繰り出してたのが「手ぬるい」っていうフレーズなんです。人間の悪意っていうのは、一旦タガが外れると、どこまでも行ってしまうものだ、力を持った者が手加減するなんてことは実際にはあり得ない。物理的、あるいは社会的に命を断つところまで追い込んでくるのが人の悪意だと。(中略)ある日突然、昨日まで友達だと思ってた奴が、いじめる側に回って、面白がって平気で人を痛めつけたりする。暴力の前では、人の善意に訴えたところで、状況が変わるなんてことはないし、「正義」も現実世界では弱くて力を持たず、力を振るう悪の方が絶対的に強いんだと。
 グロンギを徹底的に強い存在にして、殺人描写も容赦なく描いたのは、そういう理念を元にして、なるべく嘘をつかずに、我々が生きてる世界の現実を突きつけていこう、っていう思いがあったからなんじゃないかと思います。
(高寺成紀『語ろう!クウガ・アギト・龍騎【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

■激筆!現代の恐怖(企業と天災)

 インタビュアー谷田俊太郎が引き合いに出したように、『鎧武』のメインライター虚淵玄が絶賛し、感銘を受けた特撮番組が『クウガ』である。

虚淵 その時代に即した恐怖とそれらへの立ち向かい方を提示するのが仮面ライダーの姿だと思っていて、その意味で『クウガ』は意思疎通のできない隣人への怖さを描いていました。97年に神戸連続児童殺傷事件が起こり、日常に潜む殺人鬼への恐怖があった当時、地球征服を狙う秘密結社ではなく、ある日突然、得体の知れない存在、グロンギを登場させた……。一見、人間と変わらないのに言葉が通じず倫理観もかけ離れていて、まるで理解できないルールで人を殺していく。あの時代の子どもたちが感じるリアルであり、その恐怖に臆せず戦い守ってくれる大人のヒーローという構図が大好きでした。今振り返っても、ものすごく時代感をつかんでいたと思うし、怪奇ものとしての仮面ライダーの志を受け継ぎ、きれいに平成へと翻訳していた。だとしたら、僕もできうる限りそこに手を差し伸べるような物語にしたかった。
虚淵玄仮面ライダー鎧武ザ・ガイド』より)

 そこで虚淵玄は、現代(2013~2014年)の恐怖は<企業><天災>であると導出した。

(壱)<企業>(≒ユグドラシル・コーポレーション)

虚淵 インベスゲームという、異世界から召喚したクリーチャー同士を戦わせる遊びが劇中で流行るんですけど、あのゲームそのものはどうでもよくて、そのゲームを誰が仕切っているのかがわかんないっていう恐怖感が子供に伝わればなと思ったんですよ。大人が全部お膳立てした箱庭のなかで、ここは安全だから好きにしなさいって遊ばされてることに対して、子供たちが少しでも不安になってくれればなって。(中略)劇中でもそうなんですけど、俺、このきらきらしたオモチャを大人に渡されたけど、騙されてないか?っていう気分は、今どきの子ならあるかなって気がしてるんですよ。『鎧武』では、その裏側で誰かが何かを企んでいる不協和音みたいなものを、最初の段階の恐怖にできればなあと思ってたんですよ。
虚淵玄『ヒーロー、ヒロインはこうして生まれる アニメ・特撮脚本術』より)

(弐)<天災>(≒ヘルヘイムの森)

虚淵 今、子どもたちはいったい何が怖いだろうかと考えて、天災ではないかという答えに辿り着きました。津波地震といった自然災害。誰が悪いわけではなく、ただ形のない悪意が浸食してくる。意思もなく人間の存在を脅かしてくる存在。それが外来種としてのヘルヘイムの森であり、インベスです。
虚淵玄仮面ライダー鎧武ザ・ガイド』より)

 こうして考えると、『鎧武』は「初期平成仮面ライダーの"作風"に立ち戻っている」ように、見えるのだが…?

■廃絶!お約束(ご都合主義)

 『仮面ライダー』には幾つかの「お約束」がある。「様式美」と言い換えれば聞こえは良いが、悪い言い方をすれば「ご都合主義」である。そして、それらはしばしば嘲笑の対象とされてきた。何点か例を挙げてみよう。

(一)改造人間とかリアリティが無さすぎw
(二)変身ベルトはどこから出してんだよw
(三)武器や防具はどこから出してんだよw
(四)なんで必殺奥義が飛び蹴りなんだよw
(五)なんで武装や技の名前を叫ぶんだよw
(六)さっさと強化フォームに変身しろよw
(七)とっとと最強フォームに変身しろよw

 その、ご都合主義を排除し、徹底的にリアリティを追及したのが『クウガ』の凄みである。上記の突っ込みは、下記の設定にて解消されている。

(一)五代雄介はアークルの霊石、アマダムの力で変身する。
(二)アークルは五代雄介の体内に在り、変身時に出現する。
(三)アマダムの力で、周囲の物から棒・弓・剣を創造する。
(四)マイティフォームの右足で封印エネルギーを流し込む。
(五)ドラゴンロッドやブラストペガサス等の呼称は出ない。
(六)活動限界が在り必殺技発動時しか強化形態にならない。
(七)「聖なる泉枯れ果てし時凄まじき戦士雷の如く出で太陽は闇に葬られん」ためン・ダグバ・ゼバとの最終決戦時しか最強形態にならない。

  また、前述のそれは主に「仮面ライダーのお約束」だが、「怪人のお約束」も挙げてみる。

(一)悪の組織とかリアリティが無さすぎw
(二)秘密裏に悪事を働くって無理じゃねw
(三)古代・魔界・宇宙人の日本語が流暢w
(四)なんでキックで怪人が爆発すんだよw
(五)なんで怪人は一体ずつ登場すんだよw
(六)なんで強敵は後半から登場すんだよw
(七)幼稚園バスを襲撃とかチャチすぎるw

 これら一つ一つに対しても、『クウガ』は明確なアンサーを用意している。

(一)グロンギはゲゲルでリント(の子孫人間)を殺戮する。
(二)グロンギは世間に認知され警察も臨戦・応戦している。
(三)グロンギは古代種族で独自の分化・言語を持っている。
(四)グロンギのベルトと封印エネルギーが反応し爆発する。
(五)ゲゲルで、そうルール化されている。
(六)ゲゲルで、そうルール化されている。
(七)ゲゲルでは、殺人の方法は問わない。

 高寺Pは、『クウガ』のスタンスを、

(壱)嘘をつかない作り方にする。
(弐)あれ(子供騙し)にしない。

と表現している。これが、『クウガ』の“筋”(コンセプト+志)だね。緻密な設定作りが功を奏し、平成仮面ライダーシリーズの今日の繁栄・発展に繋がったのは言うまでもない事実である。

■実例!『クウガ』EPISODE29「岐路」

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 ここで実例を一つ。クウガ「状況に応じて適切なフォームチェンジをする」という設定がある。これが上手く描けていたのが、EPISODE29「岐路」、未確認生命体第39号ゴ・ガメゴ・レとの戦いだ。高層ビルから鉄球を雨霰のように降り注がせ、数多の人間の笑顔を奪っていくカメ種グロンギに対し、五代雄介/クウガはどう立ち向かうのか。

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 まず、俊敏さと跳躍力に長けるドラゴンフォームに変身し、一気に屋上までジャンプ。

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 すかさず、肉弾戦が得意なマイティフォームに超変身。ドラゴンフォームは身軽になるものの、攻撃力は下がるため、拳撃まで軽くなってしまうためである。

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 格闘戦では分が悪いと見るや、重厚で防御力の高いタイタンフォームに超変身。画像は、トライチェイサー2000の右グリップ、トライアクセラ(※警棒と始動キーも兼ねる)をタイタンソードに変化させようとしているところ。

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 まぁ実は、EPISODE30「運命」に入っちゃってるんだけどその辺はご愛嬌。必殺技を繰り出すべく、ライジングタイタンフォームに超変身。

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 タイタン&ライジングタイタンフォームでは、
(三)アマダムの力で、周囲の物から棒・弓・剣を創造する。
(六)活動限界が在り必殺技発動時しか強化形態にならない。
という先に述べた設定もが体現出来ていることにお気付きだろうか?

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 ゴ・ガメゴ・レは強く、必殺技のライジングカラミティタイタンは不発に終わる。制限時間を過ぎ、グローイングフォームになってしまう五代雄介/クウガ。EPISODE30「運命」はまだまだ見所が沢山あるのだが、それはまた別の機会にでも。「嘘をつかない作り方にする」「あれ(子供騙し)にしない」という“筋”が通っていたことが、はっきりと実感できるエピソードだ。

■実例!『鎧武』第29話「オーバーロードの王」

 はい、それでは『鎧武』の番ね。葛葉紘汰/鎧武は戦極ドライバーにゲネシスコアを取り付け、オレンジロックシードと各種エナジーロックシードを切り開くことでミックス!ジンバーアームズに変身することができる。

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 ジンバーチェリーは加速能力が付加、

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 ジンバーピーチは聴覚力が向上するが、これらは虚淵玄による『クウガ』のドラゴンペガサスフォームのオマージュである。

 さて、『鎧武』第29話「オーバーロードの王」に切り込んでいきますか。第28話「裏切りの斬月」にて新世代ライダー達の裏切りに遭った呉島貴虎からゲネシスドライバー&メロンエナジーロックシードを奪った呉島光実は、同じく第28話にてユグドラシルを裏切ったシドと共に、葛葉紘汰と駆紋戒斗を斃そうと企む。そこで呉島光実のとった作戦とは…?

(※ヘルヘイムの森の中で。)
紘汰「また、こいつ(※ジンバーピーチ)を使おう。なるべく開けた場所に出ると聞こえやすくなる。」
光実「効率も考えたら、やっぱり手分けした方がいいんじゃ…。」
紘汰「う~ん…なんか戒斗の言いなりみたいで癪だけど…。」
光実「何かあったら、すぐ紘汰さんを呼びますから。」
紘汰「ああ、気を付けろよミッチ!本当に何かあったら呼べよ?」
光実「ええ…。」
( 中 略 )
紘汰「ロック・オン!ソイヤ!ミックス!ジンバーピーチ!ハハーッ!」
(※戒斗とシドが戦闘開始。)
紘汰「戒斗、いきなり当たりかよ!」
(※加勢しようとする紘汰。)
光実「紘汰さん!白いアーマードライダーです!助けてください!」
紘汰「ミッチ!貴虎…どうして?」
(※光実のもとへ急ぐ紘汰。)
光実「紘汰さん!早く来てください!早く!」
(※応戦の偽装をする龍玄。)
光実「…まあ、こんな所かな。」
(※龍玄の変身を解く光実。)

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 まさかの自作自演である。この後、葛葉紘汰は呉島光実の変身した斬月・真と対峙することになるのだが、さっきまでジンバーピーチ形態だったにもかかわらず、オレンジアームズの姿で現れるのだ。

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 これは、ジンバーピーチのままだと「…まあ、こんな所かな。」という呉島光実の台詞を聞き取ってしまうからという作劇の都合だろうが、いきなり基本形態に戻るのも不自然な話である。「現場に急行するために敢えて解いたんだ!」とフォローする方もいるかもしれないが、それならそれでジンバーチェリーに変身し直したり、サクラハリケーンやローズアタッカーに乗るべきなのだ。この回は、アンチスレも盛り上がってたね~。

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 ただ、虚淵玄一人を責めるのも酷な話なんだけどね。『クウガ』には文芸チーム(大石真司&村山桂)が存在し、高寺Pと共に荒川稔久井上敏樹の脚本を添削し、整合性を保っていたからだ。『鎧武』のチーフPたる武部直美は、あんましこういうことしないからね。

 『鎧武』は、「現代の恐怖の反映」という点では『クウガ』を真似れているが、「ご都合主義の排除・リアリティの追求」という点では『クウガ』に完全敗北しているのだ。

■副題!サブタイトル

 『語ろう!クウガ・アギト・龍騎』にて、虚淵玄はこんな回想をしていた。

――ちょうど同じ時期に虚淵さんがシナリオを執筆されたゲーム『吸血殲鬼ヴェドゴニア』では、『クウガ』のオマージュをされていたんですよね。
虚淵 そうですね、時期的にもほぼ直撃でしたからね(笑)やっぱり『クウガ』は面白いと思いましたし、あのゲームでは仮面ライダーもののフォーマットでのパロディをつくろうとしていたので、その当時がっつりあったのは、もろ『クウガ』でしたから。『変容』『悪夢』『浸食』とか、感じ2文字のサブタイトルの出し方も、まんま『クウガ』でした(笑)。
虚淵玄『語ろう!クウガ・アギト・龍騎【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

 高寺Pの手掛けた平成仮面ライダーは各話に副題が冠されていたが、白倉伸一郎のそれには無かった。『仮面ライダー電王』以降は付けられるようになったが、『仮面ライダーW』以降は、サブタイトルに法則性が見られるようになる。

◆『W』:一文目/二文目(※一文目にはアルファベットが入り、前後編共通。)
・第01話「Wの検索/探偵は二人で一人」
・第02話「Wの検索/街を泣かせるもの」
・第49話「Eにさよなら/この街に正義の花束を」
◆『OOO』:一つ目と二つ目と三つ目
・第01話「メダルとパンツと謎の腕」
・第48話「明日のメダルとパンツと掴む腕」
◆『フォーゼ』:四字熟語
・第01話「青・春・変・身」
・第48話「青・春・銀・河」
◆『ウィザード』:なし(シンプルイズベスト)
・第01話「指輪の魔法使い」
・第53話「終わらない物語」
◆『ドライブ』:疑問形
・第01話「俺の時間はなぜ止まったのか」

 『鎧武』も、最初のうちは「二字熟語と一文」という規則性が見られたのだが、

・第01話「変身!空からオレンジ!?」
・第02話「必殺!パインキック!」
・第03話「衝撃!ライバルがバナナ変身!?」
・第04話「誕生!3人目のぶどうライダー!」
・第05話「復活!友情のイチゴアームズ!」

第06話「ドリアンライダー、参戦!」辺りから苦しくなっていき、途中から命名規約の遵守は放棄されてしまう。この辺に、自分は「甘さ」を感じてしまうんよなぁ…!誰が決めてるのかはわからないけどね(サブプロデューサー?)

■求募!反対・賛同意見

 「対決!」シリーズでは、賛同より反対意見が欲しいと思っています。何故かと言うと、『鎧武』はアンチも多いけど、信者やファンも沢山いるから。じゃあないと、『鎧武外伝』なんて出ないよ。自分は、「何故『鎧武』に心を掴まれる人がいるのか?」も、ゆくゆくは記事にしたいと思っているのです。本記事に思う所のある方は、「『クウガ』より『鎧武』の方が優れているぜ!」という想いがあれば、その丈(たけ)をコメント欄に書きこんでください。あと、「セバオーズもまだ甘い!『鎧武』はまだ、こんなにも『クウガ』に劣っているぜ!」という提言もお待ちしております。だけど、悪口・罵詈雑言は駄目よ。他人を不当に貶める発言はNG。あまりに暴言が過ぎる場合は、非承認とさせて頂きますのでご了承ください。

[了]