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『ジョジョ』と能力バトルと塚田英明

 「諸君、私は『ジョジョの奇妙な冒険』(以下、『ジョジョ』)が大好きだ(以下略)」

 ヒラコーの『HELLSING』の少佐のパロディをやりかけるくらい自分は『ジョジョ』が大好きだ。というわけで、今回の記事はジョジョ』と塚田英明について。『仮面ライダーW』(以下、『W』)と『仮面ライダーフォーゼ』(以下、『フォーゼ』)についても触れるけど、本編のネタバレは無いので未視聴の方もご安心を。あ、でも『ジョジョ』はほんのちょっぴりネタバレがあるかも。今回、超長いよ。

■『ジョジョ』とは?

 『ジョジョ』は荒木飛呂彦という漫画家の代表作であり、「ロマンホラー!~真紅の秘伝説~」である(違う)代表作と書いたのは、荒木飛呂彦は2回打ち切りに遭っているから。1つは「頭脳による戦い」を描いた魔少年ビーティー、もう1つは「肉体による戦い」を描いたバオー来訪者だ。後がない荒木飛呂彦が、「頭脳と肉体による戦い」を描いて起死回生の挽回を果たしたのが『ジョジョ』であった。1986年に連載が始まった『ジョジョ』は、2015年現在も絶賛連載中である(途中色々あったけど、その説明は割愛)

 『ジョジョ』は『スター・ウォーズ』シリーズのように章立てされており、各部によって時代と舞台と主人公が異なるのが特徴である。現在「Part1~8」まで物語が紡がれている。概要は以下の通り。

Part1「ファントムブラッド
・時代 :19世紀末
・舞台 :イギリス
・主人公:ジョナサン・ジョースター

Part2「戦闘潮流
・時代 :1930年代
・舞台 :アメリカ・メキシコ・イタリア・スイス
・主人公:ジョセフ・ジョースター

Part3「スターダストクルセイダース
・時代 :1987年
・舞台 :アジア(日本~エジプト)
・主人公:空条承太郎(くうじょうじょうたろう)

Part4「ダイヤモンドは砕けない
・時代 :1999年
・舞台 :日本(S市杜王町
・主人公:東方仗助(ひがしかたじょうすけ)

Part5「黄金の風
・時代 :2001年
・舞台 :イタリア
・主人公:汐華初流乃(ジョルノ・ジョバァーナ

Part6「ストーンオーシャン
・時代 :2011年
・舞台 :アメリカ
・主人公:空条徐倫(くうじょう・ジョリーン)

Part7「スティール・ボール・ラン
・時代 :パラレルワールドの1890年
・舞台 :パラレルワールドのアメリカ
・主人公:ジョニィ・ジョースター

Part8「ジョジョリオン
・時代 :不明
・舞台 :パラレルワールドの日本(S市杜王町
・主人公:東方定助

 『ジョジョ』のテーマの一つに「血統」があり、各パートの主人公は全員血縁者である。例えば、第6部の主人公、空条徐倫は第3部の主人公、空条承太郎の娘だ。本記事では、Part3「スターダストクルセイダースについて触れようと思う。

■なぜ「スターダストクルセイダース」は読者に認められたのか?

 「ジョジョ立ち」という言葉があるように、『ジョジョ』の特徴として「濃い絵柄」と「独特な擬音」が挙げられることが多く、それ故に「『ジョジョ』は作者のセンス(感性)で描かれている」と思っている人が多いけど、実際はその逆で、荒木飛呂彦はかなり理詰めで『ジョジョ』を描いている。で、最近荒木飛呂彦の漫画術』という本が出たので、実例を見てみよう。

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 例えば、週刊少年ジャンプでは「トーナメント制バトル」が流行ったが、荒木飛呂彦はそのスタイルに疑問を抱いていた、ということが書かれている。

 どんどんプラスが積み上がっていく状態を作り出すために、一九八〇年代の少年漫画家たちが考えたのが、トーナメント制でした。トーナメント方式のように、一回戦、二回戦、三回戦……と順々に勝ち上がってきた敵と戦っていくわけですが、最後、頂点に立つまで必ず「上がって」いくことを読者も予想できます。『キン肉マン』や『ドラゴンボール』が代表的な作品ですが、トーナメント制にすれば、ヒット間違いなし、という手堅いストーリーになるわけです。
 ただバブル経済と同じで、「頂点に行ったらどうするか」という問題が予想されるのが、トーナメント制の欠点でした。一度、優勝という頂点を極めてしまうと、次の戦いはまた一から始めることになります。作者は「ええっ、描ききったことをもう一回最初からやるのか」としらけてしまい、また同じようなことを描いていくのが非常に辛いのです。それを無理にやろうとすれば、非常にわざとらしい感じになってしまいます。どんどん上り詰めていって、それが崩れ去った後、また最初から始めようとしても、バブルの高揚感を知ってしまった身からすれば、もう一度苦労してコツコツ積み上げていくことはまず無理でしょう。
荒木飛呂彦荒木飛呂彦の漫画術』より)

 要するに、「宇宙最強の敵(フリーザ)→ 科学最強の敵(セル)→ 魔法最強の敵(魔人ブウ)……」と、敵をどんどん強くしていくと、作者のモチベーションも下がっていくし、読者も段々飽きてくるというわけだ。この問題は21世紀の今でも解消されておらず、例えば島袋光年の『トリコ』はインフレ猛々しいし、久保帯人の『BLEACH』はデフレに悩まされている。それでも、今もなお連載が続いているから、凄いけどねこの2作も。

 『ジョジョ』も、アンケートで苦戦していた頃は「人気を得るためにトーナメント制を取り入れたらどうか?」と編集者に言われたこともあったとか。しかし、「人の思いは代々、次の世代に『受け継がれていく』」という「血統」をテーマにしている以上、例えば「Part1のジョナサンが頂点に達したら、次の世代はどうするのか?」という疑念は尽きず、そもそも「他の作品でやっていることをやっても、それはただの真似でしかない」と思いとどまり、トーナメント制には踏み切らなかったという。そこで荒木飛呂彦が考案したのが、ロードムービー調にする」というものであった。

 そこで、トーナメント制でない「常にプラス」の方法は何かないだろうか、ということで考えたのが、水戸黄門』のような道中もの、つまり双六のように、進んでいった先で敵と戦う、というやり方です。その方法で描いたのが、第三部「スターダストクルセイダース」でした。
 この場合、その場その場で違う敵と対決するわけですが、必ずしも前より強い相手とは限らないので、トーナメント制と違い、個々の戦いにおいてはプラス、プラスというインフレ状態にはなりません。では、何がプラスになっているかと言えば、主人公たちが、常に地図上のゴールに向かって近づいている、前に進んでいくというところです。(中略)ここはけっして後戻りしない、マイナスにはならないというわけです。このように人真似ではない「常にプラス」の王道を歩むことができたおかげで、「スターダストクルセイダース」は、それまでの不振を脱することができたのだと思います。
荒木飛呂彦荒木飛呂彦の漫画術』より)

 だから、このロジックの部分ではなく、表層的な面ばかり『ジョジョ』を真似てしまうと、田中靖規の『瞳のカトブレパス』や『鍵人 -カギジン-』、中山敦支の『トラウマイスタ』や『ねじまきカギュー』のように、絵が奇抜なだけの漫画になってしまうのだ。…いや、中山敦支は好きだけどさ俺。

■スタンド ~そばに立つもの/立ち向かうもの

 『ジョジョ』最大の発明は何と言っても「スタンド」であろう。

 Part1「ファントムブラッド」とPart2「戦闘潮流」の主人公は「波紋」という能力を武器に戦っていたが、Part3「スターダストクルセイダース」からは幽波紋(スタンド)」という概念が登場した。簡単に説明すると、「超能力を守護霊として具現化したもの」だ。これは、「大友克洋の『AKIRA』のような超能力を自分だったらどう描くか?」という挑戦と、「つのだじろうの『うしろの百太郎』の主護霊、百太郎は戦ってくれない!」という不満から編み出したものだと以前荒木飛呂彦は述べていた。『荒木飛呂彦の漫画術』でも、以下のように記している。

 自分自身はどうやって見えないものを可視化した絵を描くか、ということを追求し続けて、考えたのが「波紋」です。カエルを殴ったらカエルはなんともなくて、下の岩が割れていたというように表現すれば、使い手の超能力の強さがわかります。僕自身は、この波紋を思いついて「やった!」という達成感があったのですが、しばらくして、ある時、担当編集者が「もう波紋は飽きた」と言い出しました。
 そこで波紋が飽きられたのは、たぶん一種類だけだったからで、それならたくさん種類があれば飽きることはないだろう、ということで生まれたのが、「スタンド」です。心のエネルギーであるスタンドは、いわば超能力を可視化した「波紋」をさらにキャラクター化したものです。
 スタンドでは、様々なものを可視化してきました。「速く動く」「遠くまで行く」「自動的に遠くまで行く」「遅く動く」「呪う」「時を止める」「時の中を動く」「心の中を読む」「未来を予知する」「電気になる」「磁石になる」「重力に逆らう」「老化する」「魂を手に入れる」「直す」……それでも、まだ可視化していない未知の分野は様々ありますから、それをどう描いていくか、これからも挑戦し続けていくつもりです。
荒木飛呂彦荒木飛呂彦の漫画術』より)

 それでは、「魂を手に入れる」「心の中を読む」スタンドを例に、『ジョジョ』の魅力に迫っていこう。

■テレンス・T・ダービーのアトゥム神

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 今回紹介するのは、「テレンス・T・ダービー」という男のスタンド、「アトゥム神」。スタンドには「破壊力/スピード/射程距離/持続力/精密動作性/成長性」という6つのバロメータがあって、Aが「超スゴイ」でEが「超ニガテ」。つまり、アトゥム神はスタンド自体の性能はかなり低いことが上図から窺える。

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 こいつがテレンス・T・ダービー(以下、ダービー弟)。無類のギャンブル狂で、ダニエル・J・ダービーという兄がいる。さて、アトゥム神には「賭けに負けた相手の魂を人形に封じ込める」能力があり、主人公の仲間である花京院典明(かきょういんのりあき)は、『F-MEGA』というカーレースのTVゲームでダービー弟に敗北し、魂を奪われてしまった。

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 この、学帽に学ランという出で立ちの巨漢が、Part3「スターダストクルセイダース」の主人公、空条承太郎だ。信じられるか?17才なんだぜこれで…!承太郎のスタンドは「星の白金(スタープラチナ)」で、バロメータ射程距離以外がオールAという脅威のハイパースペックを誇る。とにかく破壊力が強く、スピードが速く、精密動作性も高いという、ほぼ無敵なスタープラチナを持つ承太郎だが、花京院を人質に取られているため肉弾戦に持ち込めないのがこの戦いのミソ。もし、ダービー弟がバナナの皮で滑って頭を打ったりチューインガムを喉に詰まらせたり、ポップコーンの空き袋のパン!と割れる音で心臓麻痺で死んだとしたら、花京院の魂はあの世へ飛んでいってしまう。つまり、承太郎はダービー弟を殴り倒すことができないのだ。そこで承太郎は、已む無く『OH That's BASEBALL』という野球のTVゲームでダービー弟と対戦することに。

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 しかし、アトゥム神にはもう一つの能力があった。それは「心の中を読める」こと。相手の魂の状態を光子暗視装置のように見ることで、YESかNOか?右か左か?質問をすることでいずれを選択しているかがわかる。つまり、野球ゲームならピッチャーが投げるボールが、外角か内角か?高めか低めか?変化球か直球か?100%の的中率で判別できるのだ。

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 ところが、承太郎が学帽を脱いでから、彼のイカサマがスタートする。ちなみに、承太郎の後ろにいる爺さんは、彼の祖父かつPart2「戦闘潮流」の主人公、ジョセフ・ジョースターだ。承太郎はダービー弟に投球予告をする。「外角高めへストレート」と。

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 すると、奇妙なことが起こり始めた。承太郎の心の中は「外角高めへストレート」のはずが、ある時はシュートに変化、またある時はフォークボールになるのだ。ブッダのような聖人だろうと天才サギ師だろうと魂までコントロールすることは絶対できない。ダービー弟はアトゥム神の能力で「承太郎がイカサマをしている」所までは見抜けるが、どんなイカサマをしているのかまではわからない。アトゥム神の質問は、YES/NOで答えられるものでなくてはならないからだ。

ダービー弟「その学帽がイカサマの正体だッ!そうだろぉーッ?うわはははははははーッ」
承太郎の心(NO!NO!NO!NO!)
ダービー弟「イカサマをしているのはこの辺だなッ!このあたりかッ!」
承太郎の心(NO!NO!NO!NO!NO!)
ダービー弟「スタープラチナをイカサマに使っているなーッ素早いからなーッ」
承太郎の心(NO!NO!NO!NO!NO!)
ダービー弟「イカサマをしているのはわかっているんだッ!しこんだろォーッ承太郎ーッ」
承太郎の心(YES!YES!YES!YES!YES!YES!)
ダービー弟(あっちくしょお~っうううううああオレは!オレは相手の心が読めるんだ!オレは承太郎の心が読めるんだぞ~しかしなんで読みと違うボールがくるんだァ~)

 どんどん精神的ダメージを受けるダービー弟。プライドもズタズタに引き裂かれていく。

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 とうとう、花京院の魂をはなしてしまうダービー弟。魂が解放されたということは、ダービー弟の心が「負けを認めた」ということに他ならない。アトゥム神の能力をもってしても、ダービー弟は承太郎のイカサマを見抜けなかった。彼は精神的に敗北したのだ。

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 で、オチはこれ。空条承太郎の祖父、ジョセフ・ジョースター「隠者の紫(ハーミット・パープル)」という茨状のスタンド能力を持っており、コントローラーを操作していたのは承太郎ではなくジョセフだったというわけだ。このように、気合いや友情パワーで勝つのではなく、敵を負かすのに必ず「理由付け」があるのが『ジョジョ』の人気の秘訣であり、凄みなのだ。

 「…ん?こんな話、何処かで視たことあるような…?」

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 「嗚呼ッ!これ、『W』のマネー・ドーパント戦じゃあねぇか!」『W』ファンならお気付きだろう…。そう、塚田英明は、大の『ジョジョ』ファンだ。ソースは、『特撮ニュータイプ 2014 Summer』の、中島かずき三条陸の対談(うぅ…こんなことなら買っとけばよかった…!)

■『ジョジョ』と能力バトルと塚田英明

 以下、『W』の公式読本より引用。

――そのフォーマット……つまり犯罪者=怪人が起こす事件を探偵=仮面ライダーが解決するという基本構造のおかげで、今回は物語に対して怪人の占める割合が非常に大きかったかなと。これって戦隊ではわりと基本事項ですけど、平成ライダーでは必ずしも優先されてないというか、ここまで徹底された例ってあまりなかったと思います。
三条 そこは、やっぱりショッカー怪人とかのカッコよさの原点に返ろうというのがありました。怪人はライダーと同じテクノロジーを持ってるというか、両者は生みの親が同じだということが一つありますよね。それと、昔の怪人は作戦の主体性……こういう怪人だからこういう攻撃をする、こういう性格の怪人だから仮面ライダーをこうやって襲ってくる、みたいな。そこが毎回違ってたよねという話がありました。で、今回はやっぱり犯罪ものだから、そういうところは一番やりたいよね、という話は最初に出てましたよね。
(中略)
――怪人の特性・能力=メモリの存在が物語の軸になり得ていたのが大きいかなと。
塚田 結局、怪人の能力は何なのか?というところですよね。それは『W』に限らず、僕がやってた戦隊とかも含めて、どんな能力があるのかというところが怪人の個性であり、やっぱり怪人こそがこういう作品の面白いところですからね。
(塚田英明・三条陸仮面ライダーW公式読本W』より)

 『W』はけっこう、仮面ライダーと怪人の能力バトルがきちんと描かれてるよね。

左翔太郎 「あいつ、素早いぞ!」
フィリップ「翔太郎、こんな時にはルナトリガーだ!」

左翔太郎 「あいつ、空を飛べるのか!」
フィリップ「翔太郎、こんな時にはルナトリガーだ!」

 まぁ、「困った時にはルナトリガー」みたいな所があるけど(笑)『フォーゼ』も割と能力バトルしてるかな。塚田英明チーフP作品には、彼が敬愛してやまない『ジョジョ』イズムが根底にあるのだ。

■『ジョジョ』のフォロワー群

 『ジョジョ』ファンのクリエーターは、塚田英明だけではない。

 例えば漫画家の高橋和希。代表作『遊☆戯☆王』の、闇遊戯(もう一人のボク)や、『マジック&ウィザーズ(デュエルモンスターズ)』の「カードからモンスターを召喚して戦う」というのは正にスタンド的発想よね。エジプトが物語の鍵となっているのも『ジョジョ』リスペクト(Part3「スターダストクルセイダース」の、最終決戦地はエジプトなのだ。)

 例えば漫画家の武井宏之。代表作シャーマンキングの、オーバーソウル(持霊を媒介に憑依させて戦う)は、「守護霊を物質に具現化したら?」という、スタンドの発展型と言える。まぁ、マンキンもインフレとデフレに悩まされて、蜜柑になっちゃったけどね…!(完全版で柑橘したけど。)

 小説家にもファンは多い。乙一上遠野浩平西尾維新舞城王太郎らは、『ジョジョ』好きが相俟って、ノベライズ(『“The Book”』『恥知らずのパープルヘイズ』『OVER HEAVEN』『JORGE JOESTAR』)を手掛けている。…どれも面白かったけど、舞城王太郎、手前ぇは好き勝手やり過ぎだ(笑)

 驚愕すべきは、スタンドが誕生したPart3「スターダストクルセイダース」は1989年、すなわち四半世紀以上前にスタートしたということ。昨今の「能力バトル」モノのほとんどは、『ジョジョ』の影響下にあると言っても過言ではない。だから、若い世代に『W』や『フォーゼ』の支持者が多いのはある意味当然。何故なら、彼らは『ジョジョ』のフォロワー群を見て育ってきたからだ。

■オマケ:平成二期で玩具売上が倍増した要因について

 『W』の公式読本で、三条陸はこんな発言をしていた。

三条 平成ライダーの場合は、わりと怪人が1種族だったり一つのコンセプトだったりするので、確かに1年間同じことをするケースが多いですよね。たとえばオルフェノクだったら人間の心臓を突き刺して灰にしちゃうとか、ファンガイアだったら人間の生命エネルギーを吸うとか。でも、ドーパントは毎回違うことをする(笑)。たとえば今回は灰にする、今回は生命エネルギーを吸うみたいな。そういうバラエティ感も今回は意識しました。
三条陸仮面ライダーW公式読本W』より)

 ん…?オルフェノクにファンガイア…『555』と『キバ』…井上敏樹…?ウッ…頭痛が…!(オイ)

 まぁ、井上敏樹が「仮面ライダーと怪人の能力バトル」に無関心なのは周知の事実よね。この、敏鬼の怪人や戦闘シーンへの無頓着さは、他のスタッフもネタにするくらいだからな…!何点か事例をピックアップしますか。一つ目は、『カブト』の怪人「ワーム」のデザインを担当した、韮沢靖(にらさわやすし)のスコルピオワームのコメントより。

 サソリのワームです。デザイン納品時にはまだ“サソード”のデザインも坊ちゃまの本体だと言う事も何も知らずに描いていました…。これも生態ヨロイ的発想ですが…。事の経緯はあまり怪人に興味を示さないハズの脚本家の井上さんが気に入ってくれて、デザイン画を持ち帰ってくれたそうで(中略)ペンディングしているうちに、あの様なストーリーテリングになったと言う…光栄な事です。
(韮沢靖『仮面ライダーカブト韮沢靖ワームワークスGITAI』より)

 もう一つは、平成仮面ライダーシリーズで特撮監督を担当している佛田洋(ぶつだひろし)の『555』についての述懐。

 あと、3代目のマシンで主にデルタが乗るジェットスライガーが出てきたけど、あれは脚本の井上(敏樹)さんから珍しく(笑)『何か使い方のアイデアを出してほしい』と頼まれたので、ジェットスライガーが何台かある設定に変え、デルタだけじゃなくファイズも乗らせて、2台で戦いを繰り広げるというアイデアをコンテに書いて渡したんですけど、それを上手くドラマに絡めて書いてあったから、さすがだなと思いました。
佛田洋『特撮仕事人』より)

 どんだけ普段興味が無いんだよ(笑)ただ、怪人や戦闘シーン、玩具やガジェット類などに「面白味」を見出さなかったのは、敏鬼に限ったことではなかったようだ。

――橘さんが睦月にカードの使い方を説明する画面もありましたよね。実は僕、敵の能力をカードに封印して自分の力にするって基本設定を、あのときに初めて知ったような気がするんです(笑)。
會川 一応、1話からそのことは何度か触れてるんだけどね(笑)。ただ、お客さんには伝わってないというか、そういう見せ方になってなかったんだろうね。
 それは、つくり手がそういうところを面白いと思ってなかったってことだと思うんですよ。僕はわりと玩具とか子供っぽいところが好きだから、そういう設定があるんだったら、その要素を脚本に取り込むべきって考えなんだけど、そのへんは武部さんや白倉さんのはっきりした考え方があって、いちいち玩具のギミックをテレビの中で説明するのは格好悪い、映像ではサラッと見せるだけでいいんだと。井上さんもそういう考え方だね。だから、逆にそういうことをシナリオに書くのは、脚本家としては子供っぽいって思われてたと思いますけどね。
會川昇『語ろう!555・剣・響鬼【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

 そう、白倉伸一郎や武部直美、というか、映像作品に関わる大半の人間は、そういった「子供っぽいもの」に興味関心を抱かないのが常なのだ。ごく一部を除いては。日本映像クリエイティブの長部恭平は、『フォーゼ』の公式読本にてこんな持論を述べている。

――使うモジュールを敵の特徴と上手く噛み合わせたり、随所で使い方にも工夫が見られましたしね。
長部 そうですね。本来「仮面ライダー」は戦いのドラマであるがゆえに、そういう戦略のシチュエーションというのが描かれるべきだと思っていて、今回わりとそこをいろいろ描けたことはよかったんじゃないですかね。プロデューサーから監督、アクション監督、脚本家がスクラムを組んで密に組み立てることで、ドラマとアクションシーンが有機的に繋がって、その結果ドラマが面白くなるという作り方が、『フォーゼ』では結構なレベルでできていたかもしれないです。それは『W(ダブル)』でも感じたことですけど、ぶっちゃけて言うと映像作品に携わる人間って基本的にはガジェット類……いわゆる玩具に関する部分に執着がないのが大方の感覚なんです。だけど、主要スタッフがそこに対して非常に興味と関心をもって臨んでいたのが大きいというか。やはりライダーは……というか戦うヒーローのドラマってそうあるべきだと思いますよ。
(長部恭平『仮面ライダーフォーゼ公式読本 FOURZE GRADUATION』より)

 平成二期から、玩具売上が爆発的に上昇したけれど、それはある意味必然だ。平成一期でやらなかったことを、「やるようにした」わけだからね。

[了]

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