千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

『響鬼』『カブト』魔法の極光と億千万と日緋色金

f:id:sebaOOO:20150503205123p:plain

 あまり信じてもらえないんだけど、『響鬼』は前半派。あの、大自然の中を駆け回る鬼(音撃戦士)が、巨大な魔化魍に打・管・弦楽器で清めの音を流し込み、爆散させて土に還すという唯一無二っぷりが堪らなくイイネ!特に、玉虫色に煌めき輝く変身後の「皮膚」がよがった。というわけで今回は『響鬼』の話。『カブト』にも触れるよ。このブログにしては珍しく(笑)、本編のネタバレは無いので未視聴の方もご安心を。

■魔法の極光 ~MAGIA‐AURORA~

 『響鬼』の造型物について、高寺成紀はこう語っている。

高寺 (中略)毎年毎年、実験を繰り返してきたライダー枠としては、遂にきたかってかんじの、見たことのないスーツの質感に到達できないかっていう思いがあって。で、企画打ち合わせの段階から、レインボー造型企画の方にも入ってもらって提案を求めてたんですね。つまり造型物には見えない造型物は、この世にないものでしょうかっていう。
――それって、かぐや姫レベルの無理難題って気がしますけど(笑)。
高寺 いや、ホントにレインボーさんには申し訳なかったんですけど、それでも、これまでと同じような素材を使って、同じような技術の中で出てきたものに、そうは驚きがないんじゃないかと思って。やっぱりお兄ちゃんたちを振り向かせ、さらに見続けてもらうためには、よっぽどスゲェ!と思ってもらえるようなことを大人が見せつけないといけないなと思ったもんで。(中略)もちろん、そういうことをテレビ番組の予算の枠内で試みるってこと自体にムリがあるのは承知してるんです。でも、実際やってみようとする心持ちをまずは持たないと、何も前へ進んでいかないと思ってて。ハッパかけるって言い方は品がないんですけど、自分の役回りとしては、そこは旗をふっとかなきゃなぁと。
――なるほど、その高寺さんの声に応えて出てきた解決策っていうのが……。
高寺 そうなんです、ジョーラだったんです。照明の当て方によって、スーツがいろんな「表情」を見せてくれるっていうものでした。鬼の生命感を表現するひとつのチャレンジだったと思って、感謝してます。
(高寺成紀『語ろう!555・剣・響鬼【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

 うんうん、思ったよ!大きいお友達の俺も「スゲェ!」と思ったよ!ただ、高寺成紀がターゲットにしていた "お兄ちゃんたち"、ひいてはチビッ子達の心に響いていたのかは、甚だ疑問だけど(汗)かくして、日本ペイント株式会社の『マジョーラ(MAZIORA)』という塗料によって、鬼達は燦然とした姿形を手に入れた。音撃戦士達は、基本形態の時点で他の仮面ライダー達の最強・最終フォーム並みに装飾が多いから凄いよね(笑)下手すると、『ウィザード』のインフィニティスタイル以上に「キ・ラ・キ・ラ」してるかもしれない。

f:id:sebaOOO:20151123203630j:plain

■一リットルの涙 ~思い出は億千万~

 ……と、『語ろう!555・剣・響鬼』の語りだけを聞くと「イイハナシダナー」となるけれど、マジョーラには弱点があった。それは、「一リットル数万円する」ということ。要するに滅茶苦茶高いのだ。『響鬼』は、装甲や仮面の「装着変身」ではなく、身体を鍛えた鬼による「肉体変化」という設定のため、変身後のスーツ全体にマジョーラを塗る必要がある。主演の細川茂樹曰く、響鬼のスーツは一千万円とのこと。しかも、「全身型取り」で造られるため、細川茂樹用のスーツは細川茂樹しか着れない。アクション用、伊藤慎が着るためのスーツは、伊藤慎用に新たに造らねばならないのだ。更に、鬼は複数人いるわけで、威吹鬼渋江譲二押川善文)、轟鬼川口真五&渡邉淳)、斬鬼松田賢二&矢部敬三)と、主役の仮面ライダーだけで最低八体は必要。他にも関東十一鬼、裁鬼とか弾鬼とか鋭鬼とかがいるわけで…!果てには、響鬼は火を吹いたり手から爪(棘)が飛び出たりする。それはつまり「口の開いたマスク」「鬼爪が飛び出すギミックが仕込まれた腕のパーツ」を別に用意する必要があるということで…!単純計算でも、『響鬼』は仮面ライダーのスーツだけで一億円以上かかってることになるね…!また、初期費用だけでも大金がぶっ飛んでるのに、マジョーラには「耐久性がない」という弱点もあったようで、「ひび割れたら補修の繰り返し」だったとか…!ただでさえ『響鬼』は野外ロケが多く、野山を谷川を駆け巡る画が多いというのに、塗装が剥げるたびに一リットル数万円のマジョーラで塗り直していたんじゃあ…!……うん、こりゃあ路線変更も已む無しだよ。お金が幾らあっても足りないもの(汗)

 あと、変身後の響鬼を演じた伊藤慎が、スーツが熱を通して火傷を負ってしまったこともあったとか。

伊藤 あれは何発かナパームが並んでるところを走って、ボンボンボンってだんだんナパームが近づいてくるシーンだったんですけど、最後の一つ前のナパームが鳴ったとき「うわっ、熱っ!」って感じて「熱いけどまだ大丈夫かな」って思ってたら、さらに近くでもう一つ鳴って「うわ、熱ぃー!」って。それで、飛び込み前転してそのままゴロゴロ転がってたら横に海があったんで入ったんですよ。「ああ気持ちいい。助かった」って思ったんですけど、起きたらまたすごく熱くなる。それでスーツを脱いでみたら肌が真っ赤になっていて、これはおかしいということで病院に行ったんですね。そしたら火傷だと。海パン一丁でバスに乗って、病院でも海パン一丁だったんで恥ずかしかったです(一同笑)。
伊藤慎仮面ライダーディケイド&平成仮面ライダーシリーズ10周年記念公式読本』より)

 マジョーラの塗料には金属粉が入っているようで、熱を吸収しやすかったが故の予期せぬ事態だったとか。ただ、完全な確証があるわけではないみたい。「太陽光に当てた時の熱の具合を考えると、そうなんじゃないのかな?」程度のことで。何にせよ、『響鬼』は「視たことも聴いたこともない造型」を生み出すことには成功したけれど、それが原因で失敗作に終わってしまったのは、悲しいことよね…。「志」自体は超高いんだけどなァ~!「コンセプト」も、悪くはない。ただ、それが完遂できなかったので…!自分があまり『響鬼』について語らないのは、こういった複雑な想いがあるからなのです…。前半『響鬼』いいじゃない!なんか、視てると優しい気持ちになれるよね。

f:id:sebaOOO:20150503205717j:plain

 余談だけど、自分が応援している仮面俳優、渡辺淳さんが初めて演じた仮面ライダーが「轟鬼」なのです。上の画像は『フォーゼ』のカプリコーンゾディアーツなんだけど(笑)音撃繋がりということで…!(ちなみに、カプリコーンを演じたのも渡辺淳さん。)

■戈武止の日緋色金 ~カブトのヒヒイロノカネ~

 『カブト』のマスクドライダー達はスペックだけでなく、ビジュアルも「史上最強」よね。あんなに恰好良い仮面ライダー、二度と生まれないんじゃない?最近は、いかに奇妙で奇抜で奇怪なデザインにするかに躍起になってる感じがするし(笑)さて、『カブト』も前作『響鬼』と同様にマジョーラが使われている。以下、レインボー造型企画の、前澤護の発言を引用。

響鬼の時も、マジョーラの品番でいうところの『アンドロメダ2』、あれも弊社の方で配合というか、薄吹き等で独特の色合いを出しているんです。カブトに関しては色変化はないんですが、とにかく色が決まらない(笑)。皆が響鬼を経験してしまったことによって、逆に『カブトはどうなるんだ』みたいな変な心配からスタートしちゃったんですね。響鬼の場合、色変化がそれでも大きくて、何色のヒーローだか判らないって指摘があったらしくて……。その辺りをPLEXさんは心配されたんじゃないかと思います。結果的に弊社のオリジナルチューンによる赤色を日本ペイントさんに作っていただきました。」(前澤)
(前澤護『仮面ライダーカブト 特写写真集「MASKED RIDER SYSTEM」』より)

 そうか、マジョーラは「色変化が強いと何色か判らなくなる」という弱点もあるのか…!所謂「玉虫色」というヤツね。確かに、『響鬼』だとチビッ子がお絵描きしたり塗り絵をする際に轟鬼さんって何色で塗ればいいんだよ!?」と戸惑っちゃうかもしれないね(汗)あれは一体何色なんだろう…?おそらく、日本の伝統色なら一言で表現できるんだろうけど、鈍色とか縹色とか朽葉色なんて言われても困っちゃうしね(笑)「グレーとかブルーとかオレンジと、はっきりさせろや!」みたいなw『カブト』なら、「カブトは赤!」「ドレイクは青!」「ザビーは黄!」「サソードは紫!」と一目で判るわけか。この、「配色によってキャラクターの差異化を図る」というのは、翌年の『電王』にも活かされているね(ソード/ロッド/アックス/ガンフォーム、モモ/ウラ/キン/リュウタロスなど)

 ただ、色変化は「無くす」という手段が取れるけど、「一リットル数万円する」「耐久性がない」という問題は依然として解決しない。マジョーラの価格自体は『響鬼』の頃と変わらないからだ。そこに光明の兆しが見え始めたのは、「キャストオフ」というアイデアが登場してからだった。

 カブトムシ、軍団対軍団――そして昆虫モチーフにはもう一つコンセプトがある。脱皮=キャストオフだ。いわば『イナズマン』に於けるサナギマンのイメージにも繋がるアイデアは、白倉からの提案だった。
野中「脱皮だけど装着変身というバンダイのカテゴリーがあったからよかったのですが、それはどちらかというと大人向けの商品なんです。子どもは買っていないというデータが出ていた。そこでバンダイにはキーボッツという商品があって、そのシステムを発展させてはどうか、と提案して生まれたのがキャストオフライダーです。子供はフィギュアを持って遊びたいから、(握っている部位の)下半身パーツは外れない。スイッチを押すと上半身だけパーツが弾け飛びます、と(中略)上半身がはじけ飛ぶ、というコンセプトが決まれば、逆に制作側とすれば下半身は共通でいけるんだなっていう勝算が出てくる。」
(野中剛『仮面ライダーカブト 特写写真集「MASKED RIDER SYSTEM」』より)

 つまりこれ、「上半身だけパーツが弾け飛ぶ」=「下半身は共通でいける」=「下半身はマジョーラを使う必要がない」ということなのよね。だから、ライダーフォームを覆うヒヒイロカネは上半身にしか存在しない。『響鬼』では全身に塗りたくっていたマジョーラを、『カブト』ではその範囲をごく一部に限定したのだ。こうして、史上最強の仮面ライダー『カブト』は産声を上げた。だが、その恰好良さの裏には、『響鬼』の「挑戦」があるのだ。

f:id:sebaOOO:20150503210110j:plain

■オマケ:キャストオフとクロックアップについて

 順番的には、キャストオフの次にクロックアップが考案されたようね。玩具のカブトゼクターに「クロックアップ!」の音声入ってないしね。以下、石森プロの早瀬マサトの発言を引用。

――『カブト』におけるライダーのポイントは、やはりキャストオフですよね。
早瀬 あれは『イナズマン』の2段変身の発想ですよね。玩具的にも非常に面白かったと思うし、映像的にも非常に効果的だったと思います。ただ、イナズマン』だと、サナギマンはひたすら耐える防御一辺倒のキャラクターなんですが、そのようにマスクドフォームを埋没させるわけにはいかなかったので、マスクドフォームのときにも強いという表現をしました。さらに、それがキャストオフしてライダーフォームになるわけですから、今度はそこに新たな要素を付加しないと差別化が図れない。それがクロックアップです。ファイズのアクセルフォームでもやった、009の加速装置の発想ですよね。これも、映像的には非常に効果的で、ああいったことを実写でやるというのは非常に面白かったです。
(早瀬マサト『仮面ライダーディケイド&平成仮面ライダーシリーズ10周年記念公式読本』より)

 ただ、マスクドフォームはあんまし活躍しなかったね…!後半は「変身!そして即座にキャストオフ!」って感じになっちゃったしね。キックホッパーやパンチホッパーはキャストオフ自体が無いし。まぁ、奴等は不完全変態昆虫だからいいのか…!もっと、「プットオン!」「キャストオフしたくても出来ないぜ!」アクシデントなんかをやってほしかった…!キャストオフについては、特撮研究所佛田洋も思う所があったようだ。

 キャストオフ……カブトが最初の変身で身につけてる装甲をバンッと弾き飛ばして外すところも僕がコンテをやったんだけども、これは使い方に関してもう少し詰めたほうがよかったんじゃないかと、個人的には思いました。最初は普通のスピードでしか動けないのが、キャストオフするとものすごく俊敏になるということだったけど、要は『イナズマン』(1973年)のサナギマンみたいなことになるだけじゃないかなって。キャストオフしたあと普通に戦って、キメのところでやっとクロックアップするから、装甲をつけたキャストオン状態が出てくる意味があまりない。だから、理想的なイメージとしてはキャストオフと同時にクロップアップ。これならキャストオフの必然性が出るしインパクトも生まれるから。ただ、それだとメイン形態のキャストオフ後があまり見せられなくて、サナギマン状態が長くなっちゃうから難しかったんでしょう。宮崎アクション監督もずいぶん苦労したんじゃないでしょうか。
佛田洋『特撮仕事人』より)

 「そうそう、それそれ!」(by 風間大介)まぁでも、難しかったんだろうね…。『カブト』もね~、クロックアップも段々フェードアウトしていっちゃって、まぁこれもお金には勝てなかったんだろうけど、色々勿体無いんよなぁ…!

 この、2段変身(『イナズマン』方式)は古くは『アギト』の「グランド→バーニング→シャイニングフォーム」まで遡れるんだけど、一番上手く違いを見(魅)せてくれたのは『鎧武』の「カチドキ→極アームズ」なんじゃあないかと思ってます。

f:id:sebaOOO:20150503210503j:plain

f:id:sebaOOO:20150503210517j:plain

f:id:sebaOOO:20150503210530j:plain

 重厚なカチドキアームズでは、火縄大橙DJ銃の銃モードや旗で戦い、身軽な極アームズでは火縄大橙DJ銃の大剣モードやアームズ召喚で戦うと。だから、「キ・ラ・キ・ラさせると金がかかるぜ…!」とか「2段変身の差別化が図れないぜ…!」といった、響鬼』や『カブト』で出来ていなかったこと志半ばで頓挫してしまったことが、後の作品『ウィザード』や『鎧武』では実現できてたりするので、そういった所に平成仮面ライダーシリーズの長い歴史を感じるのでした。

 ……嗚呼ッ!「ネタバレ無し」を意識して書いたはずなのに、『ウィザード』や『鎧武』のフォームを話題に出すって、これも一種のネタバレなんじゃあないのか未視聴者への!?……どうもすみませんでした(オイ)

[了]

※よろしければこちらもどうぞ。

『クウガ』ヒーローと怪人と警察の「暴力」 - 千倍王鷹虎蝗合成獣

『剣』前半の軌跡と手役の錬金術師と後半の奇跡 - 千倍王鷹虎蝗合成獣

『キバ』喋る愛玩動物と持つ者持たざる者と可愛いは作れる - 千倍王鷹虎蝗合成獣

『フォーゼ』「第31・32話」と「第43・44話」と「みんキタ」 - 千倍王鷹虎蝗合成獣

『フォーゼ』スイッチとモジュールと子供の欲望 - 千倍王鷹虎蝗合成獣

『鎧武』擬音と社長と禁断の果実の美酒 - 千倍王鷹虎蝗合成獣