千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

『ベイマックス』と『鎧武』と『ドライブ』

 ディズニー映画『ベイマックス』を観ました。面白かった!まぁ、「原題は『Big Hero 6』で、原作はアメコミなんだ!」とか、「日本と米国で予告の内容が全然違う!予告詐欺だ!(いい意味で)」とか、今更それらを声高に強調するつもりはありません。もう散々語り尽くされてることだから。ここは『仮面ライダー』のブログだしね!じゃあ何故『ベイマックス』について書くかというと、観ていて「『ドライブ』&『鎧武』に通じるところがあるなぁ。」と思ったから。つまりは非常に「今日的」だったんですね内容が。なので、本記事は「『ベイマックス』を鑑賞済で『鎧武』を視聴済で『ドライブ』を現在進行形で視ている」方向けです。全編ネタバレの嵐ですのでご注意ください(左記の条件に合致する人はどのくらいいるのだろうか…?)嗚呼、やっと書けたよこれ…!観たの一月上旬だったのに…!

■世界観の提示と登場人物紹介

 が素晴らしい。冒頭の10分20分で、これらの設定が「スーッ」っと頭に入ってくる!
・舞台は近未来の架空都市で、ロボットファイトが流行っている。
・主人公は飛び級で高校を卒業した天才少年で、科学工学に強い。
・ロボットファイトは違法のため、警察に見つかれば逮捕される。
・主人公の両親は他界しており、叔母と兄との三人暮らしである。
・自堕落な主人公を見かね、兄は自分の通う大学に弟を連行する。
・主人公は兄の同級生達と、兄が発明した介護ロボットと出会う。
・更にその大学には、ロボット工学の第一人者である教授もいた。
・主人公は兄とそれを取り巻く環境に感化され大学入学を目指す。

 更に、主人公の兄の同級生達は科学のエキスパートで、「電磁サスペンションによる反重力~」だの「電磁波によるレーザーが~」だの「タングステン鋼が化学反応で~」みたいに「カタカナ使えば頭良いと思ってんだろ!」と如月弦太朗の頭がパンクしそうな専門用語が飛び交うだけど、それらが「空飛ぶバイク!」「リンゴが薄~くスライスされる!」「金属球が粉々に!」と、ビジュアルとしても目に飛び込んでくるので、チビッ子達にも「何だか知らんが、とにかく凄そうだ!」と理解ってもらえるのだ。これで弦ちゃんも安心ね!また、彼ら彼女らが大学で研究開発しているモノが、後の「ビッグヒーローシックス」としての武装に活かされるから、無駄が無いんだよなァ~!

 『鎧武』はこれが出来てなかったね。『ベイマックス』が10分20分で明瞭簡潔に鑑賞者に伝達した「世界観の提示と登場人物紹介」が、『鎧武』では1クール(第01話「変身!空からオレンジ!?」~第12話「クリスマスゲームの真実」)かけても視聴者に理解してもらえなかったからね。『ドライブ』は、けっこう上手くいってたかな?「どんより」と「特状課」と「ロイミュード」の説明は。けど、天下のディズニー作品ですら「賭博」のシーンが出てくるのに、ニチアサキッズタイムではNGなんか~!『鎧武』の「ビートライダーズによるダンスステージパスの取り合い」は、当初は「カラーギャングによる縄張り争い」だったというのは有名な話だったけど、その設定を変えざるをえなかったのは『フォーゼ』があったからだそうで。以下、『語ろう!555・剣・響鬼』より虚淵玄の発言を引用。

虚淵 (中略)反体制的な子供たちっていうのは、絶対的にNGでした。ビートライダーズは大人の支配に抗ってる子供たちとして描きたかったんですけど、絶対ダメだと。
 だから「人と街に愛されてるダンサーたち」という不思議な立ち位置にせざるを得ず。縄張り争いっていうのをひとつのコンセプトにしたかったんですが、公認のステージで市役所のパスをもらって踊ってる趣味人たちという描写にせざるを得ず、と。
 まあ、でもそこがテーマなわけじゃないからいいか、と思って妥協はしてたんですけどね。所詮、通り道でしかない設定ですから。
―― なるほど……。やっぱり今は規制があっていろいろ難しいんですね。
虚淵 うん、難しかろうとは思ってましたし、案の定ってところですけど、とにかく抗議が怖いみたいで、そのへんでさんざん『フォーゼ』の話が出ましたよね。
―― 『フォーゼ』ですか?かなり明るく健康的な作品だったと思うんですが。
虚淵 主人公がリーゼントってだけで、相当抗議の嵐が来ちゃったらしくて、それが恐怖症になっちゃったみたいなんですよ。だから抗議されそうなことは先回りしてやめるっていうのは徹底してました。だからある意味、つくるほうとしては、若干、窮屈になっていたのかもしれないですけど……。
 制作しているうちにわかったんですけど、各関係者の考えてることが拮抗しているんですよね。そのような中で番組がつくられているんだなぁって。
虚淵玄『語ろう!555・剣・響鬼【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

 なんだか息苦しい話よね。まぁ、「『ドライブ』でトライドロンによる轢殺を入れるとは言語道断!」なんて言ってる自分も人のこと言えないんだけどね(苦笑)

■「他人の努力の上澄み」を何のために使うか?

 自分はいい歳こいて未だに週刊少年ジャンプを購読しているのだけれど、現在『食戟のソーマ』という作品が連載中で、端的にいうと「料理バトル漫画」なんだけど(食戟≒料理バトル)、その中で美作昴(みまさかすばる)という料理人が出てくるんですね。まぁバトルモノでよくある「コピー能力者」で、対戦相手をストーキングして生い立ち・性格・得意技を徹底的に調べ上げ、材料や調理技術をトレース&アレンジすることで勝つ!っていうキャラなんだけど、主人公たる幸平創真(ゆきひらそうま)がこう言い放つわけですよ。「お前は他人の努力の上澄みをすくい取っただけだ」と。これはなかなか深いなぁと思って。というのも、我々は知らず知らずのうちに「他人の努力の上澄み」を使って日々生活を営んでいるからだ。例えばテニスにおいて、戦績は錦織圭の方が松岡修造より遥かに上だけど、松岡修造ら先輩達が築き上げた「ノウハウ(練習法やワザなど)」の蓄積があったからこそ、錦織圭が世界で活躍できている、とも言える。これは、スポーツに限らず学問や芸術の世界でもそうだね。後人が先人より偉業を成し遂げやすいのはある意味当たり前で、先人の功績なくして後世の発展はありえないのだ。もっと話を広げれば、全人類が「誰かの発明・発見」を利用していると言えるだろう。問題は、その「他人の努力の上澄み」を、どう使うかだ。『ベイマックス』では冒頭で、主人公「ヒロ・ハマダ」が卓越した知識でロボットファイトで圧勝するのだけれど、習得したロボット工学の基礎・根幹は、兄「タダシ・ハマダ」が通っている大学の教授、「ロバート・キャラハン教授」が構築したものだったと再認識する。この時点では、主人公ヒロは「他人の努力の上澄み」を非合法の遊びに使っているにすぎなかったわけね。

 で、『ベイマックス』ではこのあと、主人公ヒロが
【起】キャラハン教授に認められれば、大学に飛び入り入学できるようだ!
【承】マイクロボットを発明し、大学研究発表会のプレゼンも成功したぞ!
【鋪】けど、会場は火事に遭って、兄さんも発明品も失われてしまった…!
【叙】おや?残存したマイクロボットが、何処かに行きたがっているぞ…?
【結】隈取の仮面を被った男が、マイクロボットを大量に製造していたッ!
という運命に見舞われ(ここまでが導入部ね)、物語は「あの仮面の男は何者なんだ!?正体を暴いて兄さんの死の真相を突き止めてやる!」というステージにシフトするんだけど、ここでベイマックスは仮面の男と渡り合えるよう、以下の戦闘強化を施されるのね。
(1)空手の達人のモーションをプログラムされる。
(2)剣道の防具を模したパワードスーツを装着。
(3)ロケットパンチを撃てる。
(4)空も飛べる。
(5)広範囲レーダーでサンフランソウキョウ中の人間をスキャンできる。

 ここからの流れが凄くて、「仮面の男はロバート・キャラハン教授だったんだよ!」(ΩΩΩ{な、なんだってーッ!))という展開になるんだけど、教授は教授でマイクロボットの技術を盗んで良からぬことを企んでそうだし(火事は自作自演だったのだ)、主人公のヒロはヒロでベイマックスを使ってガチで教授を殺そうとするしで、教授なら主人公ヒロの、主人公ヒロなら兄タダシの、「他人の努力の上澄みを使って何やってんだよ!」というのが、中盤の盛り上がりの部分なのね。

■主人公勢が少年・若者で、敵が大人である意味

 でもね、ここでポイント高いのがね、主人公ヒロの暴走を、兄タダシの同級生達(ゴー・ゴー、ワサビ、ハニー・レモン、フレッド)が止めてくれるのよね。そして、仲間の一人が、キャラハン教授が今回の狂行に至った「動機」となる証拠映像を入手。キャラハン教授と技術会社クレイテック社長、「アリステア・クレイ」はテレポーテーションの研究開発をしており、その空間転移用ポッドのテストパイロットが教授の娘「アビゲイル・キャラハン」だった。クレイ社長は安全面より利益を追及し、実験を強行した結果事故が発生、アビゲイルは時空に飲み込まれ、行方不明になってしまったのだ。つまり、キャラハン教授の目的は「クレイ社長への復讐」で、「私怨」だったということが明らかになる(ここで、「世界征服」とかじゃあないのが、リアルでいいね)教授も教授で、わざわざテレポート用の装置を改修して「クレイテック社のビルを、製品を、全て異次元に追放してやるぜ~ッ!」と双子座(ジェミニ)のサガのアナザーディメンションもびっくりな報復に出るのが凄い。「教授を止めないと!」というのが、終盤以降のメインストリームだ。

 この、「主人公勢が少年・若者で、敵が大人」っていうのが、意義があるし、いいんよなァ~!大人になると、利益優先で人命を軽んじたり(どっかの居酒屋の社長みたいにな!)、たとえ名誉や地位があったとしても感情の昂ぶりによって犯罪に走ってしまったりする。「こういう醜い大人になっちゃダメだぜ、少年よ!」というメッセージが、『ベイマックス』にはあるように思われる。これ、『鎧武』では再三再四作中で流れていた通念だね。

 あとは「コミュニケーションの重要性」かな。主人公ヒロの暴走を、仲間達が身を挺して止めてくれたように、キャラハン教授にも「親しい仲」の人間が一人でもいれば、過ちを犯さなかったかもしれないね。

■「キミはこの力、どう使う?」

 で、ビッグヒーローシックスと仮面の男(キャラハン教授)のガチバトルが行われ(これがまた見応えアリアリなんだわ!)、決着がついた後に一つの奇跡が起こる。ベイマックスが、キャラハン教授が用意した空間転移装置の「別次元」の向こう側に、生命反応をキャッチしたのだ。事故で行方不明になっていた、教授の娘アビゲイルだ。ここが『ベイマックス』の臍なんだけど、主人公ヒロは当初「犯人探し」のためにベイマックスを強化していったわけですよ。戦闘用のパーツは、本来なら介護ロボットには不要なもの。けど、「スキャン用のレーダーを強化した」ことで、「空を飛べるようになった」ことで、果てには「ロケットパンチを撃てるようになった」ことで、最後にはアビゲイルを救助することができた。キャラハン教授も、人殺しにならずに済んだ。たとえ「復讐」のために造られたモノだったとしても、使い方次第で親子二人を「救う(≒ケアする)」ことができる。「介護ロボットに空手を覚えさせるなんてちょっと悲しい」と言う人もいるかもしれないけれど、でも病弱な子やいじめられっ子が、空手家の試合を見て元気づけられる、なんてこともあるかもしれないし、「『何』だって誰かをケアすることにつながるんだよ使い方次第で」というのが、『ベイマックス』のテーマなんじゃないかなと、自分は感じ取りました。『鎧武』本編で「悪い子供」の見本として描かれていた呉島光実が、映画『進撃のラストステージ』でちゃんと「仮面ライダー」になれたようにね。

■ヒーローモノの未来(その先)

 『ダークナイト』って映画があったじゃないですか。『バットマン』原作の。あれ観た時ね、自分が感じたのは「クリストファー・ノーラン監督凄ェ!」じゃあなくて、「ヒーローモノのアンチテーゼは既に『555 パラダイスロスト』でやってんだよなァ…!」だったんですよ。同様に、『ベイマックス』を観た時、「『鎧武』&『ドライブ』も似たようなことやってんのになァ…!」と思ったんですね。「キミはこの力、どう使う?」というのは『鎧武』が一年間ず~っとやってきたことだし、「善(平和)のために造られたものが悪に利用され混沌を招く」というのは今現在『ドライブ』がやっていることだしね。なんか、このサイトでは『鎧武』批判ばっかやってるもんで、「セバオーズは虚淵アンチ!」と思われてるかもしれないけど、僕ぁ割と『鎧武』は好きな方なんですよ。少なくとも、現時点では『ドライブ』より評価してるかな。けど、『鎧武』は枝葉末節に拘りすぎて幹が見えにくいのと、所々枯れてたり実が腐ってたり毒があったりするので、「やりたいことはわかるけど、上手く視聴者に伝わってないな~」と、単純に「勿体無いな」と思いながらずっと視てました。『ドライブ』は保守的になりすぎて、尻すぼみになっちゃってるなぁと思います。

 まぁ、ディズニーは予算も時間も人材も潤沢で、キャラデザも脚本も絵コンテもCGも練りに練りに練りに練りまくって制作できるのに対し、東映は、ことに仮面ライダーはファジーに作らざるをえないから、難しいんだろうけどね…!

 でも、『555 パラダイスロスト』は『ダークナイト』になり得たし、『鎧武』&『ドライブ』も『ベイマックス』になれるポテンシャルを秘めていた(もう片方は秘めている)と思うんだけどなァ…!『語ろう!555・剣・響鬼』でも、井上伸一郎會川昇が似たようなことを語っていたね。

―― 『大魔神カノン』や『キカイダーREBOOT』など、井上さんご自身も特撮作品の制作にすごく情熱を燃やされてますよね。そこには、どういう思いがあるのでしょうか。
井上 やっぱり、自分がそれで育ってるからでしょうね。それは同世代の庵野秀明さんとか樋口真嗣さんなんかもみんなそうだと思うんですよ。
 私もなんとか特撮というジャンルを残したり、ファンの裾野を拡げていきたいと思ってて、それで高寺さんに来てもらって『カノン』をつくったり、白倉さんと『キカイダー』をつくったりしてるんです。
 (中略)
―― どちらの作品も、特撮作品の新しい可能性が感じられてうれしかったです。ただ、悔しいのは、特撮ファン以外の人、たとえば女の子をデートに誘うときに「キカイダースパイダーマン、どっちが見たい?」と聞いたら、やっぱりまだスパイダーマンなんだろうなぁ……と。
井上 それはそうでしょうね。だから、その壁をもうちょっと突破したいですよね。それはまだ突破しきれてないかんじがするけど、少しは近づいたかなと思います。
 また自分の笑い話をするとね、中学を卒業するくらいのときに、当時好きだった女の子に映画を見に行こうと誘って「いいわよ」と言われたんですよ。でも、次に電話したときに『ゴジラ対メカゴジラ』って言ったら「それはちょっと…」って断られたのが、いまだにトラウマになってるんだよね(笑)。
 何年も経って、大学生ぐらいになったときに「ひょっとして、映画の選択を間違ったのでは……?」と。
―― それはずいぶん気づくのが遅かったですね(笑)。
井上 そのへんがダメなんでしょうね(笑)。なんだけど、そういうときに「それだったら行きたい!」という特撮作品を、つくりたいなぁと。
 エヴァとかジブリならOKなわけで、アニメはわりと突破できてるんですよ。でも昔はそうじゃなかったわけで、アニメが突破できたことは絶対できますから。特撮でも何かしらやりたいですね。
井上伸一郎『語ろう!555・剣・響鬼【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

會川 (中略)僕がちょっとだけもったいないと思ってるのは、平成ライダーっていうのは、平成ライダーが頂点であって、その先には何もないと思ってるんだとしたら、それはもったいない気がする。具体的にいうと、僕は『555』の劇場版を見たときに、すごい感動して、それは井上さんにも田崎さんにも言ったことがあるんだけど、この先には絶対に何かあるよって。
 つまり、ここまでできるんだったら、もうライダーとか子供向けとかそういう枠は全部取っ払っても、いわゆるハリウッドに対抗できるものがあるはずだと。
 (中略)
 たとえば『海猿』や『SP』はテレビシリーズのスタッフがそのまま映画を作って観客層を広げている。ああいうところに平成ライダーの延長戦が絶対あるはずなのに、そこにはいかない、いけないっていうのは、ちょっと残念だなって。そっちも見てみたい気がすごくしますね。
 そのへんで何か新しいものがあればいいのになって思ってますし、自分も手伝えることがあれば、そういう方向で手伝いたいなっていう思いはありますね。
會川昇『語ろう!555・剣・響鬼【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

 『ベイマックス』は「ヒーローモノの『先』」を見せてくれた作品でした。これね、多分ね、今後の日本の特撮界に影響を与えると思うんよね『ベイマックス』は。なので日本のクリエーターの皆さんも顔晴ってください。……「今度、一緒に『ガメラ』の映画を観にいきませんか!」と女の子を誘ってもおかしくない世界か……!

[了]