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千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

『仮面ライダードライブ』序盤評(後編)

 『ドライブ』の年内(2014年分)放送が終わったので、序盤評をば。第01話「俺の時間はなぜ止まったのか」 から、第12話「白い仮面ライダーはどこから来たのか」 までの所感です。長くなりましたがいよいよ後編です。

※前編と中編はこちらからどうぞ。

『仮面ライダードライブ』序盤評(前編) - 千倍王鷹虎蝗合成獣

『仮面ライダードライブ』序盤評(中編) - 千倍王鷹虎蝗合成獣

■車(完全新生×史上最強?)

 自分が『仮面ライダー』を見る時に一番重視しているのが「コンセプト」。そういう観点で視た時、平成一期の『響鬼』と『カブト』は失敗作だったと言える。両者を好きなファンには申し訳ないけれど、明確な路線変更があった『響鬼』と中盤以降迷走した『カブト』は、企画時に掲げたコンセプトを最後まで全うできなかった失敗作だったと言わざるをえない。駄作ではなく失敗作ね!響鬼』も『カブト』も良い所いっぱいあるから。その「作品の売り」とする部分が、番組を破滅に向かわせたのだけれど。

 『響鬼』と『カブト』の長所と短所を挙げてみよう。

響鬼』の長所(1):音撃戦士と魔化魍の攻防は見応えあり!
響鬼』の短所(1):巨大魔化魍のCG作成合成は金がかかる…!
響鬼』の長所(2):大自然を探索する猛士(たけし)の描写はリアル!
響鬼』の短所(2):場所移動、機材運搬など、撮影準備に時間がかかる…!
『カブト』の長所(1):ライダーとワームの攻防は見応えあり!
『カブト』の短所(1):クロックアップのCG合成は金がかかる…!
『カブト』の長所(2):ライダーのキャストオフは見応えあり!
『カブト』の短所(2):マスクドフォーム形態が要らない子に…!

如何だろうか?ウルトラ怪獣ばりの巨大戦や、科学特捜隊地球防衛軍が如き組織を描いた『響鬼』と、『サイボーグ009』の加速装置を彷彿とさせるクロックアップや、『イナズマン』のサナギマンをリスペクトした二段変身を盛り込んだ『カブト』の、長所と短所は表裏一体裏返しになってしまっているのだ。そして、これらの要素は予算とスケジュールの都合で徐々に劇中から消えていくこととなる。

 そしてお気付きだろうか?そう、『ドライブ』も上記のような危険性を孕んでいるのだ。

『ドライブ』の長所(1):三段変形するトライドロンは見応えあり!
『ドライブ』の短所(1):ドロン変形のCG作成合成は金がかかる…!
『ドライブ』の長所(2):トライドロンのカーアクションは見応えあり!
『ドライブ』の短所(2):私有地を借りたり、車の運搬に時間がかかる…!
『ドライブ』の長所(3):巨大化したロイミュードの攻防は見応えあり!
『ドライブ』の短所(3):巨大化怪人のCG作成合成は金がかかる…!
『ドライブ』の長所(4):タイヤコウカン・フエールは見応えあり!
『ドライブ』の短所(4):差異化図れずほとんど要らない子に…!

なんと、『ドライブ』は『響鬼』と『カブト』両方の二重苦を背負い四重苦となってしまっている!これは「完全新生×史上最強」どころの話じゃあねぇぞ…?

 ちなみに、『ドライブ』に先駆けて「仮面ライダーの乗物はバイク」という既成概念をぶち壊した『電王』の「時の列車」は、
(1)一度CG素体を作っておけば、当て込むだけでよい(合成が簡単)。
(2)異空間を走るシーンはバンク(使い回し)で凌げる。
(3)実在の線路を走らせる必要がない。
↑レールは、時の列車が走る際、自動で敷設・撤去されるという設定のため。
(4)それ故に、陸・海・空、ありとあらゆる場所で走らせることが可能。
(5)しかも、タイムマシンのため、時間旅行もできる。
(6)それ故に、他作品とのクロスオーバーが容易となった。
(7)バイク要素が失われていない(マシンデンバードは操縦席にもなる)。
と、『響鬼』と『カブト』の問題点を悉く潰しているだけでなく、平成仮面ライダーシリーズの更なる飛躍、発展に繋げたのだ(まぁ、『超・電王』や『トリロジー』などの劇場版乱発や、『レッツゴー』や『スーパーヒーロー大戦』なんかは結構アレで、上記(6)に関しては功罪あるけどね…!)

 「改良」とは。既存の問題を全て解消して初めて改良と言えるのであって、「『電王』でも電車のライダーやったし、車のライダーやってもええんちゃう?フフ~ン♪」と、安易な発想で始めた『ドライブ』は、現時点では「改悪」の域を脱していないのだ。

■大森敬仁のやりたいことは?

 『語ろう!クウガ・アギト・龍騎』にて、切通理作は『響鬼』のチーフPたる高寺成紀と、『カブト』のチーフPたる白倉伸一郎についてこう分析している。

――『クウガ』と『アギト』『龍騎』は、作風も方向性も全然違いますよね。それはおそらく高寺さんと白倉さんというふたりのプロデューサーの目指しているものの違いが大きかったんじゃないかと思うんですけど、切通さんは両プロデューサーの違いについてどう考えていますか?
切通 白倉さんは、仮面ライダーというのは、もともと改造人間であり、敵の怪人も改造人間であって、同じもの同士が敵と味方に分かれて戦っているものであると。それは『アギト』や『龍騎』のように作品ごとに設定は違っていても、必ず大事にしてることだと思うんです。
 一方、高寺さんは必ずしもそこにこだわっていない。『クウガ』は話が進んでいくうちに、クウガが進化してダグバと同じ恐ろしい存在になっていきましたけど、最初からそれがテーマだったのかっていうと、そうじゃなかった気がするんです。高寺さんはもともと怪獣が大好きで、大学で「怪獣同盟」というサークルをつくっていたぐらいですから、『クウガ』は怪獣映画の怪人版なのかなと。
切通理作『語ろう!クウガ・アギト・龍騎 【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】』より)

 はっきし言って、高寺成紀のやりたいことは『クウガ』で、白倉伸一郎のやりたいことは『アギト』『龍騎』『555』で完遂してしまって、それ以降の作品は惰性で作られている。これは、各種媒体での高寺・白倉両Pの発言から明らかに読み取れることで、そんな二人が『響鬼』や『カブト』を作る際のモチベーションというか、心の拠り所は、最早幼き頃の憧憬しかなかったのだ。それはすなわち高寺成紀なら円谷プロ作品、白倉伸一郎なら石ノ森章太郎作品に他ならず、そんな彼らの根っ子の部分が色濃く出ているのが『響鬼』や『カブト』と言える。だから、『響鬼』や『カブト』は失敗作だったかもしれないけど、高寺・白倉両Pの「完全新生」と「史上最強」という情熱自体は微かに存在するのだ。それが、前期『響鬼』ファンや『カブト』ファンの琴線に触れたのかもしれない。自分の周りにも、『響鬼』と『カブト』の熱心なファンは沢山いる。

 それがこと『ドライブ』となると、まぁ~~~~~~ったく、なぁ~~~~~~んにも見えてこないんよね、チーフプロデューサー大森敬仁のやりたい事が!熱意が!パッションが!ただ何となく、「『鎧武』は失敗しちゃったな…!フルーツ×戦国時代なんてわけのわからんことはやめて超案牌で行こっと!よし車だ!そして、何処の馬の骨ともわからんエロゲライターを招聘するのもやめて、『W』『フォーゼ』『キョウリュウ』で実績のある三条センセを呼ぼっと!これで今回は安泰だ!」という邪(よこしま)な思考が煤けて見えるぜ…!

■全てが下位互換

 以前も引用したけど、もう一度『ドライブ』放送前の、パイロット監督田崎竜太の発言を見てみよう。

――『鎧武/ガイム』からの続投となりましたが、今回の『ドライブ』で意識されたことは何でしょう?
 自分たちが作った作品のコピーにはしないことです。初期の平成ライダーは昭和から続く『仮面ライダー』の持つ根強いイメージ=既成概念を壊しながらも、その時々の視聴者が求めるヒーロー作品として成立させてきたんですよ。ですが、今度は視聴者の中にも作り手の中にも「平成ライダーはこういうものだ」という「平成ライダーの伝統」のようなイメージが出来上がってしまう。特に作り手側は自分のお気に入りや自信作の焼き直しのような作品を作ってしまうという罠が口を開けます。それでは過去の作品の「縮小再生産」に過ぎません。『仮面ライダードライブ』は『ディケイド』までを1期として平成ライダー2期の6作目です。先ほどお話しした「縮小再生産」にならないよう「平成ライダーの伝統」という既成概念の壁を壊すことを目指しました。
田崎竜太『宇宙船 vol.146』より)

 これは、虚淵玄のお気に入りや、武部直美の自信作である、『BLACK』『クウガ』『アギト』『龍騎』『555』の焼き直しのような作品となってしまった『鎧武』の痛烈な批判だと思うのだが、『ドライブ』は
・トライドロンのカーアクションや巨大ロイミュード戦は『響鬼』の音撃戦士と巨大魔化魍戦に劣り、
・どんより(重加速現象)の戦闘シーンは『カブト』のクロックアップ戦に劣り、
・車のライダーというコンセプトは『電王』の電車のライダーという企画に劣り、
・刑事ドラマというフォーマットは『W』の探偵ドラマの体裁に劣り、
・シフトカーとタイヤコウカンは『フォーゼ』のモジュール・ステイツチェンジに劣り、
・「喋るベルト」というアイデアでさえ『キバ』で既にやっている
というね。全てが下位互換。こりゃあ『鎧武』を笑えんよ…!

■車(高速で衝突する鋼鉄の塊)

 …………と、散々批判めいたことを書いてきたけれど、『ドライブ』を視ていて、自分が一番「これは…やってはアカンやろ…!」と思ったことがある。それは、第02話「仮面ライダーとはなにか」での、トライドロンが体当たりでロイミュード二体を倒したシーン。いわゆる轢殺だ。

 実は、自分は子どもの頃交通事故に遭ったことがある。「自転車に乗っていた+徐行中の左折車にぶつかった」ので大事には至らなかったけど(というか、無事じゃなかったらブログやってないか…w)、車に乗ってた爺さんが「大丈夫かぁっ!」って降りてきて、俺に怪我がないことを確認するやいなや、「よかった、傷はないな、それじゃあな!」と言ってそのまま去ってしまったのだ!轢き逃げに近いものがあるよ今から思えば!当時は携帯電話も、ポケベルすらなかった時代なんで、幼心に歯痒い思いをした記憶がある(結局犯人捕まらんかったしね…!)

 車とは「高速で衝突する鋼鉄の塊」であり、時に人を傷つける「凶器」となる。だから、「トライドロンで敵を轢き殺す」という必殺技を、『ドライブ』ではやってほしくなかった。こんなことを書くと、「じゃあ剣や銃で怪人倒すのはどうなんだよ!?」「キックやパンチで怪人を倒すのもダメなのか~!?」という突っ込みが入るかもしれないけど、「飛行機に乗っている時よりその辺を歩いている時の方が死ぬ確率が高い」と言われるほど、交通事故は身近にある不幸なのだから、車という題材を扱う以上、その辺はもう少し配慮してほしかった。あの『ウィザード』でさえ、「指輪を付けているからパンチはNG!」という考慮があったのだから。

 というわけで、自分でもびっくりしてるんだけど、序盤の時点では『ドライブ』の評価はかなり低い。あの、『響鬼』や『カブト』を再評価することになるとは思いもしなかった。まぁ、平成仮面ライダーは四クールもの。序盤面白くても終盤失速したり、前半は糞でも後半から神憑り的な展開を見せた作品もあるので、年間通して視ないと評価できんのだけどね本来は。

 というわけで、『仮面ライダードライブ』序盤評でした。それでは皆様よいお年を。来年もよろしくお願いいたします。

[了]