千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

『鎧武』擬音と社長と禁断の果実の美酒

■禁断の果実の美酒

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 12月03日は『仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本』の発売日やで~!ん?『キバ』から『フォーゼ』まで出てた"公式読本"はグライドメディア出版で、今回の『鎧武』の"公式完全読本"はホビージャパン発行だから別物なのか…?自分は持ってないんだけど、『電王』の公式読本は大洋図書から出てるのか…。なんにせよ、『ウィザード』からは"公式(完全)読本"は出なかったね…!画像は下記サイトより拝借。

仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本 - 株式会社ホビージャパン

 『公式(完全)読本』には各作品にちなんだ「副題」が付いているんだけど、
・『電王』… PERSPECTIVE
・『キバ』… LUNATIC ARCHIVES
・『ディケイド』… MASKED RIDER 2000-2009
・『W』… W
・『OOO』… INFINITY
・『フォーゼ』… GRADUATION
・『鎧武』… WARNING FRUIT COCKTAIL
「ワーニングフルーツカクテル」って!(笑)たしかに悪酔いしそうな危険な作品だったけどさ『鎧武』はw

 『鎧武』の制作発表で、メインライターが虚淵玄だと知った時、自分が気になっていたのは「どんな作品になるのか?」よりも「制作陣はどう思っているのか?」だった。だって、『鎧武』が『クウガ』+『アギト』+『龍騎』+『555』+『BLACK』な作風になるのは番組放送前の武部直美や虚淵玄のインタビューで知ってたし、「どうせ二番煎じな感じになるんだろうな」と思ってたら案の定だったし(正直、展開は全て予測できた)そもそも、虚淵玄脚本作品によくある「○○は人間でしたァ!」オチは初期の平成仮面ライダー作品で散々やり尽くされてるネタだしね。まァ実は自分は虚淵玄作品に触れるのは『鎧武』が初めてなんだけどさ。『魔法少女まどかマギカ』も『Fate/Zero』も『PSYCHO-PASS サイコパス』も『翠星のガルガンティア』も『楽園追放 -Expelled from Paradise』も未視聴。ただ、友人に虚淵玄ファンがいるので、さわりは大体知ってる(初瀬るはマミるのセルフパロとか、そういうの)良くも悪くも「エログロで注目集めてる感じっしょ?」という印象。当該作品を観てないのにこんなことを言うのもよくないんだけどね。心配だったのは、虚淵玄は「深夜アニメでヒットを飛ばしている(らしい)」という実績はあれど、「実写作品は初」「一年モノ(4クール)は初」「言うまでもなく特撮は初」という三重苦を背負っていたということ。つまりは制作陣からすれば「素人同然」「門外漢」なわけだ。そんなリスキーなホン屋の脚本を遵守して撮影しなければならない監督陣の心境やいかに?ストレス感じてたんじゃあないの?というのがずっと心の片隅にあったのだ(性格悪いな俺w)

 実際、『宇宙船 vol.146』での、武部直美と望月卓のインタビューでこんな話題が出てるしね。

武部「虚淵さんの脚本は物語が続いているので、最初は『自分の世界観が出せないのが物足りない』と言っていた監督もいたんですよ。でも最後には『虚淵さんの書いた台詞と濃いキャラクターがいないと物足りない』と言っていましたからね(笑)。」
望月「打ち上げの席ですね(笑)。」
(武部直美・望月卓『宇宙船 vol.146』より)

 これ、「巨匠か諸田さんなんだろうな~w」と思っていたら、ビンゴだった。以下、『鎧武』公式完全読本での、各監督へのアンケートより抜粋。

■諸田敏
( 中 略 )
Q04 脚本(脚本家)に対する印象・感想、ホン打ちでのエピソードなど。
A04 初めのうちは、若く経験のないキャストに対して「台詞が長過ぎたり、重い芝居が多すぎる」から切ってくれ、と言い続けたが虚淵さんは言うこと聞いてくれなかったですね(笑)。
 でも僕より仮面ライダーが好きだってことは分かってたので、あきらめました(笑)。
( 中 略 )
Q10 『鎧武/ガイム』に携わった日々を振り返って最後に一言。
A10 初めの頃は長いシーンと長いセリフに仮面ライダーを当てはめるのに頭を悩ませましたが、途中から虚淵中毒にかかったのか、大変楽しい日々でした。ありがとうございました。

■石田秀範
( 中 略 )
Q06 『鎧武/ガイム』ならではの作品的な魅力とは?
A06 深夜アニメ風の難解さ……
( 中 略 )
Q08 スタッフへ何か一言。
A08 複雑で、面倒で、難しい問題をスピーディーに解決してくれた事に感謝!
(諸田敏・石田秀範『仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本』より)

 流石、ベテラン組は皮肉たっぷりだw田崎竜太も、特撮情報誌や書籍にて、言葉を選んであたかも『鎧武』や虚淵玄を褒めているように見せかけて苦言を漏らしていることが多々あるからな…!ただ、若い監督達(中澤祥次郎・柴崎貴行・山口恭平)は虚淵脚本を比較的やり甲斐を感じていたようだ。

 そんな中、自分が一番「この人は、虚淵玄と反りが合わないんじゃあないの~?」と気にしていた監督が、JAE(ジャパンアクションエンタープライズ)社長こと金田治だ。

■擬音の人

 金田治の特徴として、撮影中に「擬音で指示を出す」というものがある。例えば、いっちゃん最初の『スーパーヒーロー大戦』の時、役者が走るシーンで、金田監督が「違う!そこは『シュンッ!』じゃあなくて、『グウウウウンッ!』って走るんだッ!」と説明したというエピソードがある(当時の東映ヒーローMAXの、門矢司役の井上正大とマーベラス役の小澤亮太の対談で出てたんだけど、何号でどっちが言ったのかは忘れてしまった…!)監督曰く「擬音を使った方が直感的に分かり易いだろ!」とのことで、『鎧武』の完全公式読本でも、その「擬音の人」っぷりは健在だった。

――まず空中で変身するのが良かったですね!新フォームがああいった登場をするのは新しいと思いました。
金田 今までになかったかもしれないね。あそこは降りて変身するよりも、空中でバッチバチやられてるわけだから、落ちながら変身しようよって。普通だったら死んじゃうような高さから、新しい錠前でバチーン!ってね。そこにまた敵がグワーーッと来るんだけど、僕はあそこ「200機くらい入れてくれ」って言ってたの(笑)。( 中 略 )それでもって、バババババッ、ビシュンビシュンっって、どこ撃たれても平気なんだ。あの後の話はどうなっても知らんけどさって勢いで(一同笑)。あとは新しい武器ね。( 中 略 )「オ~オ~、オ~オ~」って法螺貝みたいな、なんだこれは!?こんな音が鳴るのか!ってびっくりしちゃったけど「よしわかった!」って、短いながらもいろんなバージョンを見せながらドッカーンドッカーン!やりました。
(金田治『仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本』より)

 子供か!でも、この擬音の羅列を眺めるだけで、ちゃんと『鎧武』第23話「いざ出陣!カチドキアームズ!」の戦闘シーンが頭の中に浮かんでくるんだよなァ…。なんか悔しいけど(笑)

【起】普通だったら死んじゃうような高さから、新しい錠前でバチーン!ってね。

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【承】それでもって、バババババッ、ビシュンビシュンっって、どこ撃たれても平気なんだ。

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【転】「オ~オ~、オ~オ~」って法螺貝みたいな、なんだこれは!?

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【結】短いながらもいろんなバージョンを見せながらドッカーンドッカーン!やりました。

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 4コマにしてみたけど確かに分かり易い!

 笑ってしまったのが以下の箇所。

金田 ( 中 略 )今にして思えば、たとえば台本で3ページあるうち、1.5ページぐらいは彼の動きで見せちゃうようなシーンを作ってもよかったのかなぁ。こう、バシャーンと来てガッと……(※以下、身振り手振りと擬音でシーンの構想を説明していただきましたが、なかなか文字に起こすのが難しく、残念ながら割愛。とにかく派手で凝った素面アクションが繰り広げられる場面を思い浮かべていただけると幸いです)
(金田治『仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本』より)

 なんじゃそりゃ!?見てみたいわwww

■社長はかく語りきに

 と、そんなお茶目な一面もある金田治監督だけど、真の姿は「JAC(ジャパン・アクション・クラブ)」時代から殺陣を行い、『ロボット刑事』ではスーツアクターを務め、アクション監督だけでなく本編監督としても活動する、バリバリの体育会系だ。しかもJAEの社長!子供の頃から病気がちで虚弱体質な、小説やノベルゲーム、アニメの脚本を生業としている超・文科系の虚淵玄とは全くの真逆!実に対極的である。だから、諸田敏が「長いシーンと長いセリフ」と辟易し、石田秀範が「深夜アニメ風の難解さ」と揶揄する虚淵脚本に、金田治は理解を示さないのでは?と、一番懸念してたのね。ところが、それは杞憂だった。

金田 最初はね「難しいこと書くなぁ~」って思った!(笑)でも、虚淵さんは自分の思い入れがあって、台詞の背景にそれぞれの人物像だとか関係性を描いてるんだなぁってのがだんだんわかってきた気がするんだよね。その場で言っていることが、他の話のときのあいつに向かって言ってるんだとか、そういうのが見えてくるとすごく整理されて書かれてるんだなって、それが僕の感想。だから、部分的にしか見てないとわからなかったのが、全編を通すと台詞に込められた感情がすごく納得できた。これまで撮ってきた子供番組の枠で、そういう書き方をする人は初めてだったね。それだけ濃厚だってことだから、そこはきちんと撮らないとなって思ったよ。そういった意味では考えさせられることも多くて、僕もね、虚淵さんにはいろいろと勉強させてもらいました!(笑)
(金田治『仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本』より)

金田 ( 中 略 )率直に言わしてもらうと、申し訳ないけど子供にはわからない話だったかもしれないというのはあるんだ。でも、それでも好感を持って見てくれたんだから大成功だよ。キャラクターも良かったし、そこに役者もハマってたのが良かったのかな。子供にわかるようにするなら、もちろんそういう台詞だとか見せ方というのがあるんだけど、そうじゃない世界観を貫き通したのが大きな冒険だったしクオリティの高さというものはすごく感じてたから、そういう作品を作れた喜びは大きかったです。
(金田治『仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本』より)

金田 僕は『鎧武/ガイム』の登場人物というのは、現実の世の中にいるいろんな立場の人間の生き様が網羅されてると思ってるのね。そこに含まれてるメッセージというものをいつも感じてました。だから「この人物が言ってることが、観てる子供たちに伝わりさえすれば」なんてことも考えながら撮ってましたよ。もちろん、どの作品にも友情だとか愛だとか普遍的なメッセージは含まれてるんだけど、『鎧武/ガイム』は特にメッセージ性を色濃く感じる作品だったね。やっぱり、子供が観るものにはメッセージがないとね……と、僕は思ってますから。
(金田治『仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本』より)

 諸田敏のように自棄になるわけでなく、石田秀範のように白けているわけでなく、田崎竜太のように遠まわしにディスるわけでなく、金田治が監督の中で一番『鎧武』の本質を理解していたことが驚きだった。なんか、中二病を拗らせているとある学生のキモチを一番よくわかっていたのが体育教師だったみたいな感じw(実際、金田治は1949年生まれ、虚淵玄は1972年生まれだから、二回りも年が離れてるのか…!)これが、個人的な『鎧武』公式完全読本からの一番の収穫だった。こんな感想抱くのも俺くらいだろうな…!

 『鎧武』は総評を書こうと思ってるのに全然時間が取れないよ~!今日も、『ムービー大戦フルスロットル』観に行こうと思ってたのに仕事だったし…!年末年始を利用して、書き上げようと思います。

[了]