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千倍王鷹虎蝗合成獣

平成仮面ライダーの感想・考察サイト。衒学的で悪し様で居丈高な語り口のブログにようこそ。

『鎧武』戦国時代と当世具足と武将の生き様

15_鎧武

 『ドライブ』の前作品、平成仮面ライダー15作目、『鎧武』についても語っていこうかな。近々総評も書こうと思ってます。

 『鎧武』に登場する仮面ライダー(劇中の呼称はアーマードライダー)のビジュアルコンセプトは「フルーツ × 鎧」で、両者ともに和洋中バリエーション豊かな果物と甲冑が採用された。特に後者に関しては、鎧武・斬月・黒影の「和風鎧」、バロン・デュークの「洋風鎧」、龍玄の「中華鎧」だけでなく、グリドンなら「古代の鎧」、ブラーボとナックルは「剣闘士と拳闘士」、マリカは「アラビア風」、シグルドは「ヴァイキング」など、モチーフは多岐に渡った。フルーツが天から降って来て、頭に被さって展開して鎧になるというギミック!しかも、外観は果物の面影を残しつつもちゃんと鎧らしいディティールとなっていて、石森プロやPLEXのデザイナー陣には舌を巻くばかりである。

 だがしかし…!願わくば各種フォーム(アームズ)のデザイン元は、全て「日本の鎧」で統一してほしかった…!

■戦国時代

 そもそも"戦国時代"と言われたら、我々日本人なら「応仁の乱以後、戦国大名が天下統一をかけて群雄割拠した時代」を思い浮かべるでしょ?古代中国の春秋戦国時代とかあるけど(これが名称の由来だが)、そっちを想起する人の方が稀なわけで。「ライダー戦国時代」というキャッチコピーや、『鎧武』という漢字のタイトルから、「今度の仮面ライダーは『和』や『日本の歴史』を題材とした作品なんだろう」と予想するわけだよ普通の視聴者一般人なら。それが蓋を開けてみると、第一話のオンエアを見てみればユグドラシル・コーポレーションの城下町、沢芽市を舞台にビートライダーズと呼ばれるダンスチームが、ステージの占有権を決めるべくロックシードによるインベスゲームに興じていた。主人公とヒロインはひょんなことからヘルヘイムの森という異世界に迷い込み、ビャッコインベスに襲われるが、戦国ドライバーを手に入れアーマードライダー鎧武に変身した主人公が無双セイバーでその怪物を倒し、無事難を逃れた。」と、出てくる固有名詞は北欧神話由来のワードや和製英語、さらには中国の伝説も飛び出してきて、「日本の戦国時代」要素は一割にも満たないときた。そりゃあ視聴者離れるよ!おそらくほとんどの視聴者が想像してのたのは、『響鬼』のような純和風な世界観なのだから。例えるなら、「いかにも和食専門店!」な見世構えの料理店に入ってみたら、出された料理はフレンチ・イタリアン・中華だった、みたいなもんだよ。第01話から第02話で視聴率が下がるのも頷ける(6.4% → 5.6%)

 無理にスカンディナビア神話の世界樹やニヴルヘイムを使わなくとも、日本の神話や伝説にも「非時香木実(橘)」「相良飛び葛(優曇華)」「高天原」「葦原中国」「根の国(根之堅州國、底根國)」など果物や植物にちなんだ用語や地名があるのだから、それを使えばいがったのに(まぁ旧約聖書『創世記』のアダムとイヴ、蛇と禁断の果実(知恵の実)くらいはいいけどさ。これはこれで『BLACK』の世紀王(創世王)にちなんでるわけだし。)ユグドラシルタワーも、外観をいっそのこと「お城」にすればよかったのにね。いるじゃん、外国人でも「オーゥ!ジャパニーズキャッスルビューティフォー!」っつー日本かぶれなヤツwそんな連中がユグ社のビルを建設したらこうなる、みたいな体(てい)でいくと。

 フルーツも、"向日葵(ヒマワリ)"、"松毬(マツボックリ)"、"団栗(ドングリ)"、"舐瓜(メロン)"、"鳳梨(パイン)"、"苺(イチゴ)"、"蜜柑(オレンジ)"、"甘蕉(バナナ)"、"葡萄(ブドウ)"、"大玉(スイカ)"、"芒果(マンゴー)"、"麝香榴蓮(ドリアン)"、"彌猴桃(キウイ)"、"檸檬(レモン)"、"桃(ピーチ)"、"桜ん坊(チェリー)"などと漢字表記にすれば一気に"和"、っぽさが増したと思う。"漢字は子供が読めないのでは?"、という突っ込みが入りそうだが、『響鬼』とかどうなんだよって感じだし(響鬼…!威吹鬼…!轟鬼…!斬鬼…!)多少小難しい方が子供は喰いつくと思うんだよね。自分もガキの頃は漢字大好きだったし(読み書きできるのがカッコいいみたいなところがあった)ロックシードのナンバリングも "LS-01" とか "ELS-01" とアルファベット+アラビア数字で表現されてたけど、漢数字でいいじゃないか漢数字で!(一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一、十二、十三、壱、弐、参、肆、伍…。)特殊なロックシードも、"KLS-01"・"LS-∞"・"LS-GOLD"・"LS-SILVER"・"LS-YOMI" じゃあなくて、"勝鬨(カチドキ)"、"極(キワミ)"、"黄金(ゴールド)"、"白銀(シルバー)"、"黄泉戸契(ヨモツヘグリ)"と漢字でデーン!と書いてあった方がデザイン的にも映えると思うんだがなぁ。折角『響鬼』で康唯子(こうゆうし。本名は飯塚康行。)との繋がりが出来たわけだし、筆文字によるカットを挿入して和のテイストを強調しても良かったと思う(例えば、オレンジアームズに変身したら "蜜柑" 、専用アームズウェポンを召喚したら "大橙丸" と画面にデカデカと映す、など。)

 まぁ上記のネーミングに関してはただの提案にすぎないんだけど、要するに「統一感の無さ」「実際の作品と、視聴者が抱いたイメージとの乖離」が、『鎧武』が視聴率を落とした原因の一つだったと思う。

■当世具足

 『鎧武』のチーフプロデューサー、武部直美は「鎧」を和式限定にしなかった理由について以下のように述べている。

「劇中、当然のようにヒーローはフォームチェンジをするわけですが、今回は鎧の取り合いみたいなことでそれが実現できたら面白いかな、と考えていたんです。常々フォームチェンジの見せ方を変えたい、と思っていたものですから。最初は"戦国武将ライダー"というコンセプトでスタートした企画だったんですね。全て和風の鎧で統一しようと。ところが、和風の鎧にそれほどバリエーションがあるわけではないので、複数のライダーを差別化してデザインするのは難しくて。さらには鎧を交換してもあまり変化がないんですよ。誰が誰やら区別かつかない。そこで、(キャラクターの差別化を図るため)何か動物のモチーフを足しましょう、と提案したわけです。」(武部)
( 中 略 )
「鳥の意匠を入れ込んでデザインを続けていたんですが、1ヶ月くらい経ってもまとまらなくて。要は、鎧を着せ替えてみるとやっぱりキャラクターの区別がつきにくいんですよね。そこで、鳥の意匠はやめ!決めた!という感じで決断して。さらに、和風の鎧にこだわるのもやめて、西洋風の鎧と中華風の鎧も入れましょうとなったわけです。この長い作業の間に思ったのは、鎧を着せ替えるのは主役ライダーだけにしよう、ということでした。それを今回の主役ライダーのアイデンティティにしようと」(武部)
( 中 略 )
「鎧の換装は(映画等のイベントをのぞいて)主役だけにするつもりだったのですが、西洋鎧と中華鎧が面白くデザイン出来たので、こちらもアームズチェンジさせちゃおうかなと。出来るだけシルエットが変わるものを、ということで決まったものです」(武部)
(武部直美『HYPER HOBBY (ハイパーホビー) 2014年 11月号』より)

 果物や木の実から連想される動物、ということで"鳥"が候補に挙げられたというが、フルーツというインパクト抜群の画題があるのに、さらに鳥の衣装を取り込んだらチグハグになる、ということに気付かなかったのかよ!と呆れるばかりだし、「鎧を着せ替えるのは主役ライダーだけにしよう」と言った矢先に「西洋鎧と中華鎧が面白くデザイン出来たので、こちらもアームズチェンジさせちゃおうかな」と180°異なる発言を繰り出す辺りアホ丸出しである。そして、「和風の鎧にそれほどバリエーションがあるわけではないので、誰が誰やら区別かつかない」とも言ってるけど、そ ん な こ と は な い だ ろ う !確かに胴や袖は似たり寄ったりになるかもしれないが、兜で充分差異化は図れるはずだし、フルーツの特徴を強調したり同じ色を使うのを避ければ、十分見分けはつくと思うのだ。以下、例を示す。

 織田信長の南蛮鎧は、紘汰の最強フォームに使うのではなく、駆紋戒斗の鎧に使うべきだったと思う。ツルッとした曲線美がバナナに似てるし(笑)

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 「西洋騎士の甲冑=バロン」ではなく、「南蛮鎧=バロン」、というコンセプトにすればよかったのに。欧米から渡来したフルーツのロックシードは、全てバロンが使うようにすればより個性を強めることができたと思う(つまり、パインアームズは鎧武ではなくバロン専用フォームにする、というわけだ。)

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 序盤から中盤の強敵、呉島貴虎の鎧は、最強クラスの武将、武田信玄のそれで。

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 兄たる貴虎と対になる存在、弟の呉島光実の鎧は、信玄のライバル上杉謙信のそれとか。

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 呉島光実の鎧は、徳川家康のそれでもいいかもしれないね。

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 徳川家康はこんな金ぴかな鎧も纏っていた。これなんかは城乃内秀保のグリドンに使えそう。

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 凰蓮・ピエール・アルフォンゾについては別記事で触れます。兎に角何が言いたいかというと、「ライダー戦国時代」というキャッチフレーズを謳うのなら、このくらいの拘りは見(魅)せてくれ、ということである。同じチーフプロデューサーでも、例えば高寺成紀や塚田英明なら、この辺の拘りは完遂したと思う。

■武将の生き様

 戦国武将要素をオミットした理由について、今回『鎧武』にてメインライターを務めた虚淵玄はこう発言している。

――『鎧武/ガイム』にはフルーツと錠前、戦国武将をはじめ、様々な要素がありますが、どのように作品に落とし込んでいったのですか?
虚淵 結局、どうやってそれらに物語性を付加できるか、ということになるわけですが、ハナから三つは無理だと思いました。二つまでは物語でフォローして、残る一つはデザイン画のコンセプトとして留めてもらおうと。そうなるとデザインとして見栄えがいい、表現し易いもの、逆に言えば、その中で物語云々ではなくデザインモチーフとして相応しい要素は戦国武将だろうなって。
( 中 略 )
虚淵 錠前とフルーツは一気に観念的な要素になるので物語に組み込むことにしました。何かを封印するための錠前と、繁殖・増殖していくフルーツ、という形で、イメージを上手く組み合わせれば一つストーリーが作れるかなって。
虚淵玄東映ヒーローMAX Vol.47』より)

 これって作り手の怠惰じゃないのか!?オトコなら寧ろ、「戦国武将」要素に対して熱く燃えるとこなんじゃねーのかなァ…!例えば、「織田信長はうつけ者のふりをして領内を駆け回り、地形や河川を調査していた」という説があるんだから、「駆紋戒斗はダンスステージを渡り歩くことで、沢芽市の地理を把握しようとしていた」とか「駆紋戒斗はダンスチームを隠れ蓑に、街の不良を集めて大連合を築こうとしていた」とか戦国武将にちなんだキャラ付けだって出来たはずなのよね。信長は「人間五十年、下天の内をくらぶれば~♪」と舞を踊ったわけだし、子孫もスケートリンクで舞躍ってるわけで、ダンスにもちなむし。「当世具足」の項で、呉島光実の鎧を「上杉謙信」or「徳川家康」のそれにしようと思ったのは、「武田信玄は自分の死後葬儀を行わせないことで、上杉謙信を疑心暗鬼にした」「武田信玄軍の襲撃を受けた徳川家康は、逃走中に糞尿を漏らした」という逸話があるから。本編でも、兄の幻影に悩まされたり、醜態を晒したりしてるから。「武将の生き様」と登場人物をリンクさせることは、決して難しい事ではなかったと思う。

■極アームズのデザインはどうするべきか?

 「バロンのアームズを織田信長の南蛮鎧にするなら、鎧武の極アームズはどうすんだよ?」と思ったそこのアナタ!コレですよコレ。

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 豊臣秀吉の当世具足。百姓から天下人まで出世した豊臣秀吉は、フリーターから天下無双の勝者まで成り上がった葛葉紘汰にぴったしの戦国武将だと思いません?あと、秀吉の鎧の兜の飾り(※後光を表現している)は「花」に見えなくもないじゃないですか。例えば、カチドキロックシードを「ヒマワリの種」にして(実際はメタルオレンジなんだけど)、極ロックシードで開錠すると「フルーツてんこ盛り」+「ヒマワリの花が咲く」という変身にすれば、「最弱から最強」となって、下剋上を体現できたと思うのよね。本編の極アームズの袖(肩パット)は「ヒマワリの種」をイメージしてるだろうし、悪くないでしょ?まぁ今更こんな所でアイデア出してもしょーがないんだけど、「そのくらい考えてもいいのよ?」と思ったりするわけです。何度も言うけど、高寺成紀や塚田英明なら絶対このくらい凝ったと思うよ。

■黒影トルーパー

 「黒影トルーパー」は何から何まで素晴らしい。「21世紀のショッカー隊員」と言うに相応しい存在だと思う。仮面、鎧、アンダーウェア、武装(槍)、見た目のいっさいがっさいがシンプルで、「いかにも量産型」という雰囲気を醸し出してるし(単眼(モノアイ)だからなのか…?)、何より本当に大量生産し易い造形となっている。「戦国時代における足軽ポジション」というのが一目でわかるし、かつ「松毬(まつ"かさ")」が「陣笠(じん"かさ")」とかかっているのが洒落ている。更に名前も秀逸で、"黒影"って『BLACK』の「"ブラック"サン」と「"シャドー"ムーン」から来てるのよねおそらく。「『BLACK』における、創世王を決める戦いを、多人数ライダーでやる」というのが、『鎧武』の裏テーマかつ虚淵玄の本願(悲願)なので、それを象徴とした名称となっているのが美事。余談だけど、ゲネシスドライバーの"Genesis"とは「創世」という意味だし、ゲネシスライダー共通武器のソニックアローの漢字表記は『創世弓』だから、色んなものが『BLACK』にちなんでるんだよなぁ。これ、何処まで脚本家が玩具やデザインに関与してるかわからないけど、「『BLACK』みたいなのやりたいよね」という意思疎通みたいなのは少なからずあったのではなかろうか。実際、PLEXの小林大祐なんかはモロに『BLACK』世代らしいし。偶然かもしれないし、魔法かもしれない(笑)

[了]

※鎧の画像は、下記サイトから拝借しました。

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